第2話
ある日仕事で隣町へ出ていた父親が流行り病にかかり寝込んでしまいました。
熱にうなされ食事も喉を通らず、ただ苦しそうに息を吐いています。
男は医者を呼び父親の具合を見てもらいましたが医者にも治す事は出来ませんでした。
段々痩せていく父親を男はなんとか治してやりたいと思い町の変わり者の家を訪ねることにしました。
変わり者の家まで来た男は扉の隙間から漂ってくる不思議な匂いに扉を叩くのを躊躇していると中から声が聞こえてきました。
「お入り。」
恐る恐る扉を開けるとそこに立っていた変わり者はだいぶ年をとっており顔中皺だらけで一見すると男だか女なのかわかりません。
それに金色の刺繍が入った薄汚れた羽織とボロボロの穴の開いたズボンを穿いていてとても変わった臭いがしています。
みんなが変わり者と呼ぶ女は占いやまじないを好みほとんど家から出て来る事もなく人付き合いをあまりしない人でした。
しかし、医者でも治せない病気を治したり失くし物を探し当てたりと不思議な力で町の人達を救ってくれるのでみんなは魔女とは呼ばず"変わり者"と呼んでいました。
「随分と若い男が来たもんだ。」
変わり者は男の足先から頭までジロジロ見ると殆ど抜けてしまい僅かしかない歯を見せてニヤリと笑いました。
男はここへ来た事を少し後悔しましたが父親の病気の話をし、どうにか助けてもらえないかと頼みました。
「そうかい、その病は少し厄介だね。治せない事もないが…薬の元になる花がない。」
変わり者はあからさまな溜息をつくと大袈裟に首を横へ振ってみせました。