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森の悪魔  作者: 川島 蛍
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第18話

不規則に大小の石が敷かれた道を向い風に吹かれ時折砂埃を巻き上げながら一歩一歩、歩いていくと間もなく男の家が見えてきました。

見慣れた家は以前と何も変わりなく、小さいながらも住む者に安らぎを与える存在感は戻った男を優しく出迎えてくれているようでした。

男は扉の前で立ち止まりそこだけまだ新しく綺麗にノミで模様が付けられた取っ手を握ろうとすると中から微かに物音が聞こえました。


(誰か居るのか?)


居ても立っても居られず勢いよく扉を開けるとそこには、うなされながら苦しそうにベッドで寝ている父親の姿がありました。

男は父親の側に駆け寄ると涙を流し手を握ります。


「父さん、長い間苦しませてしまったね。すぐ薬を作るよ、もう大丈夫だからね。」


父親も苦しそうに咳込みながらも男の顔をしっかり見ると手を握り返し頷きます。


「どなたかしら?」


話し声に気付き台所の方からアンナが顔を覗かせるとベッドの近くに見覚えのある飴色の髪をした男を見つけあまりの出来事にアンナは言葉を失いただただ涙を流し男の帰りを喜びました。


「待たせたね。」


男は少しアンナに気後れしながらも持ち帰った花を見せると大きな鍋に水を張り火にかけます。

そして葉と茎を取り除き花の部分だけをグラグラ沸く湯の中へ入れました。

花は次第に濃い紫へと色を変え形さえ留めて居られぬ程湯の中で踊るとすっかり湯は薄紫に色付きました。

男は出来上がった薬を早速父親に飲ませてみるとそれまで父親の苦しく険しかった顔が穏やかになるのがわかりました。

そしてスーッ、スーッと落ち着いた寝息が聞こえてくると男はホッとひと安心するのでした。

男はようやくアンナと再会出来た喜びが込み上げてくるとアンナを抱き締め随分と待たせてしまった事を謝り今まで父親の看病をずっとしてくれていた事に感謝しました。


「アンナ、すまなかった。こんなに時が過ぎてしまったのに僕の事を信じて待っていてくれていたなんて。父さんをずっと看ていてくれて本当に有難う、父さんを救えたのは君のお陰だ。」


今まで悪魔の森から帰って来た人は誰もおらず、もう二度と会えないかも知れないと思っていた男が戻って来たのでアンナも心から喜んでいました。

しかし戻った男の様子が少し違うように思え森の中で何かあったのではないかと戸惑い心配になるのでした。



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