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夏の日

作者: 玖波 悠里

とんぼが、横たわっている。

まだかろうじて生きてはいるが、その躰は飛ぶために出来ているので、もう動くこともできなかった。羽がぼろぼろになってしまってしまっているから。その足は、躰を支えるだけの力を持たなかった。

そこに、ありがやってくる。

強烈な日差しの下、日陰との濃いコントラストを作り出す。動かなかったとんぼが少し身じろぎをした。ありはとんぼの躰を調べる。エメラルドグリーンの目の上を歩き回る。とんぼは足を震わせるが、どうにもならない。

そうしていつしかありが増えてゆき、とんぼは少しずつ引きずられてゆく。上を向いた足が時折何かを求めるように動く。暑い夏の日の事だった。

その一部始終を見守っていた私は、そっと立ち上がり、とんぼとありに近づく。そして、しゃがみこむ。私の影の中に真っ黒なありとほとんど動かないとんぼが入り込む。強烈な日差しから彼らを守るように影の中に入れた私はゆっくりと胸ポケットに手を伸ばす。


私は立ち上がり、その場を後にした。そろそろ行かねば昼休みが終ってしまう。

後に残っているのは真っ黒なありと、消し炭になって本当に動かなくなったとんぼと、立ち上る細い煙。それから、安い百円ライターだった。


ありは黒真珠の様でとてもきれいだったし、とんぼの目は透き通った宝石みたいだった。

―それが今ではただの燃えかすだとは!

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