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7 向坂健太

『フルートの流れる日常』綾野祐介



7 向坂健太



「修太郎さぁ、加奈子とはどこまで行ったの

?」


 向坂健太だった。この者は一体七野修太郎

にとっての何なのだろう。


「どこって?」


「またまたぁ。キスはしたんでしょ?まさか、

デートしといて手つないだたけで終りってこ

とはないよね?」


 加奈子という異性と一緒にどこから出かけ

たイベントが最近あったのか。そんな記憶も

情報もないものを、どう対処しろと言うのだ。


「いや、そんなこと言うべきことじゃないで

しょ。」


「隠す、ってことは、やった、ってことだよ

ねぇ、いいなぁ。あんな可愛い子と。」


 一体その加奈子とは、どの人間なのだ!何

かの対処が必要な相手ではあるのだろう。と

りあえず、個体の特定だ。


「加奈子は、今どこに?」


「えっ?、あそこに居るじゃない。見えてな

いのかなぁ、恋は盲目って?」


 同じクラスなのか。ここ数日話しかけもし

ていないのは、マズいのかも知れない。さて

どうしたものか。帰って杉江に聞かないと全

く何も判らない。面倒なことが多い。一興な

どと言ってはいられない状況になりつつある

な。


「加奈子さん、また明日ね。」


 なんとか声を掛けて教室を出た。後ろから、

なんだか甲高い複数の声が聞こえる。何かを

間違ってしまったのか。ああ、もう面倒だ、

全てを壊してしまおうか。


「ダメです。」


 帰るといきなり杉江から言われた。


「その子とはちゃんと話をしてくだいね。そ

して今は勉強に集中しているから、とか何と

か誤魔化して二人っきりで会う機会は少し先

に延ばしてください。」


「そもそも何故我がそんなことに気を配る必

要があるのだ。我が入っているこの七野修太

郎という人間の生活を守る必要があるのか?」


「それは、まあ、そうなのですが、原因がは

っきりしていない現状で彼の生活を壊すこと

がどう影響を及ぼすのか、そこが判らないの

で、ここは我慢していただかないと。」


「そういうものか。ナイアルラトホテップを

呼べ。この人間の口では上手く発音できん。

元に戻す方法が見つかったのか、問いただす

のだ。」


「ちょっと待ってください。彼は今セラエノ

に行っている筈です。そこにある文献の中に

何か打開策があるのではないかと考えている

ようです。もう少し時間を与えてやってくだ

さい。」


「セラエノだと?あんな石板倉庫に本当に答

えがあるのか。」


「それは判りません。今の所、そこしか頼る

とこがない、という事ではないでしょうか。」


「うむ。それにしても不自由さ極まりない。

もう少し元の力を発揮できればいいのだが。」


「それは無理というものです。貴方は他のど

の存在より念入りに封印されているのですか

ら。知性すら奪われて。」


 確かに物理的に身体を動かしたり、ほとん

どの知性を奪われた状態での思考しかできな

かった。まだ小さい身体ながら動けるだけマ

シというものだ。少なくとも移動ができる。


「いずれにしても、早々に解決策を見つけて

戻るよう、ナイアルラトホテップに伝えてお

くのだ。」



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