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40 事の真相

『フルートの流れる日常』綾野祐介



40 事の真相



 4人が七野家を訪ねると七野修太郎(中身

はアザトース)、杉江統一の外に向坂健太、

君塚理恵、斉藤加奈子も揃っていた。そして

ナイアルラトホテップ。


「何かわかったのなら、なぜ我に直接報告に

来ないのだ。」


 マークが責められた。


「いや、それはこっちの自由ですよ。元々あ

なたの依頼を受けたつもりはありません。人

類の危機だと思って行動していただけです。」


「ふん、まあいい。それで?」


「話が全然見えないぞ。我にもちゃんと説明

しろ。」


 アザトースは地球の暮らしに慣れ始めてい

たが、それがずっと続くとも思っていなかっ

た。


「私から説明しましょう。」


 綾野が纏めてその場の全員に向けて説明を

することにした。


「ます、今回の件のきっかけは私の所属する

アーカム財団極東支部長マリア=ディレーシ

アだったのです。彼女は独自に桂田君の居場

所を見つけ出し財団とは関係のない一個人と

して彼を訪ねました。それは私や岡本浩太が

経験したように一旦ツァトゥグアと融合しそ

の力を分け与えてもらうことが目的でした。


「そして彼女はある情報を桂田に提供し、そ

の目的を果たしたのです。その情報が旧神の

力を利用する方法でした。それを聞いた桂田

というツァトゥグアの分身は単なる暇つぶし

のために今回の騒動を巻き起こしたのです。」


「お前の仕業だったのか。我を盟主と仰いで

おったお前がやったことなのか。」


「アザトースよ。我が主とでも呼ばせてもら

おうか。我が主よ。あなたも百何十億年とい

う長い間幽閉されたままで退屈で退屈で仕方

なかったのではないか?我も退屈で退屈で仕

方なかったのだ。それがひょんなことから分

身とはいえこの人間の身体を得て暇つぶしを

するくらいの余興はあってもよかろうて。」


「何をいうのか。この所為で宇宙の物質の均

衡が崩れたりしたら、全宇宙が崩壊してしま

うかもしれないのだ。我が主には封印から出

てもらう訳にはいかないというのに。」


「聞きづてならんな、ナイアルラトホテップ

よ。お前は我の封印を解くことが使命ではな

いのか?」


「我が主よ。それは間違いございません。た

だ私が探しているのは宇宙を崩壊させずに我

が主の封印を解く方法なのです。」


「ナイアルラトホテップよ、別によいではな

いか。この宇宙が滅びようとも、また作り直

せばよい。何を迷うことがあろう。」


「それはそうだが。」


「そんな物騒な話は止めてもらえませんか。

私たちにとっては、この宇宙がすべてなので

すから。」


 旧支配者同士の諍いに入る、などという状

況はあり得ない。本来人間が入り込めるよう

なものではないはずだった。今回アザトース

が七野修一郎という一介の高校生の中に入り

ツァトゥグアはその欠片が桂田利明と融合し

た状態であり、元のままなのはナイアルラト

ホテップただ一人だったから起こった状況だ

った。


「それで、どうする気なのだ、ツァトゥグア

の欠片を名乗る者よ。」


「ナイアルラトホテップよ、ただの桂田利明

と呼んでもらおうか。ツァトゥグア本体とは

思考も能力も全く別物だからな。」


「そんな話はどうでもよいわ。我のこの状況

をどうする気なのだ。」


「我が主よ。そこは相談ですが、このままの

状況をしばらく続けることはいかがでしょう

か。玉座において身じろぎもできない状況よ

り力を制限されるが自由に動ける今の方がよ

いとは思われませんか?」


「待ってください、それは修太郎がしばらく

元に戻らない、ってことですよね。それはダ

メです。すぐに戻してください。」


 斎藤加奈子は今まで七野修太郎と接触もせ

ず、ずっと黙っていたが、旧支配者たちへの

畏れもなく訴えた。


「そうですよ、修太郎は元に戻して貰わない

と。いつも気を使って付き合うのは疲れるん

ですから。ナンパにも行けやしない。」


「バカ、ナンパなんて修太郎が戻っても行っ

ちゃダメでしょ、加奈子が居るのに。」


 なんだか、3人の友人たちが話に入ってく

ると途端に世俗的になってしまう。


「確かに今の状況は、このままって言うのも

問題でしょう。特に旧神の力を使った、とい

うのも問題ですし。でも、彼らはこの状況も

予想していて、そのまま放置なんですね、ほ

んとやる気がないというのか、なんというの

か。」


「それはお前が指導し調整しないといけない

立場だろうに。」


「アザトースさん、そういいますけど、あの

人たちは、まあ、陰口は止めておきましょう

か。で、桂田君、結局は僕が動かないといけ

ない状況ってことですか?」


「そうだな。お察しの通りでは修正する方法

は判らない。まあ、判ったとしてもやる気が

ないかな。」


「本当にあなたは。仕方ありません。原因が

判れば僕がなんとかします。少し時間をいた

だけるなら。」


「杉江、お前やっぱり何者なんだ?」


「僕は調整者。この宇宙が破滅に向かわない

ように調整しなければいけない時のみ力が発

揮できるようになっているんだよ。だから本

来旧神側でも旧支配者側でもない。ただ、そ

の使う力が旧神寄りってだけでね。何もなけ

ればただの杉江統一だよ。それ以上でもそれ

以外でもない。」


「お前はよほどのことがない限り動かないが

な。我も実際に会うのは今回が初めてだわ。

忌々しい奴らとの戦いのときは出てこないか

らな。」


「僕は戦闘向きではないですから。」


「では、任せて良いのだな。我が主はこのま

まにしておく訳には行かない。早々に元に戻

してもらおう。」


「ナイアルラトホテップよ。どうもお前は我

が玉座に戻って封印されることを望んでいる

かのように見えるが?」


「我が主。それは違います。私は我が主の封

印が解かれてもこの宇宙が崩壊しない方法を

模索しているのです。」


「まどろっこしいものだ。よい。ツァトゥグ

アの暇つぶしに利用されたままでは我の矜持

に関わる。元に戻すがよいわ。」


「ありがとうございます。では、できるだけ

早い段階でベテルギウスに飛ぶことにしまし

ょう。」


 全員の話がひと段落付いた後。綾野祐介と

岡本浩太、マーク=シュリュズベリィの3人

は近くのファミリーレストランに移動した。

まだ話は終わっていないのだ。

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