地球からの流れ星
宇宙からの流星群が教室から眩いばかりに見えていた。
メイーダはその流星群を見ながら心をときめかせていた。先生はあいかわらず、歴史の話をしていた。
「地球での戦争は地球人口のたったの1000分の1だったが、戦争に嫌気をさして我々火星びとはこの火星衛星上のコロニーに流れ着いた。その年号は、メイーダ。」
「はい!?」
メイーダは元気良く返事をした。
「はいじゃない!年号を!」
「知りませんよ!」
「じゃあ、なんで授業に出ているんですか!」
「星を見るためです!」
「どあほ!」
「なんでです!歴史なんて意味がないじゃないですか!星の向こうにある好奇心をさぐるほうがよっぽどいいです!」
「わかっていないのはあなただよ。メイーダ!間違いを繰り返さないために学んでいるんですよ!地球じゃあ今は核戦争なんてやってるかもしれないんですから。私たちはいう愚かなことをしないよう勉強に励んでいるのです。」
「外に出ないひきこもりたちなのに。」
「何か言いました?」
「家からでない引きこもりだって言ってるんです!」
「あ、あなたという人間は!」
先生は激怒をしたがメイーダは一歩も引かなかった。そうすると後ろの席の人が立った。
「いい加減にしないか、メイーダ。」
「だってさ、ユウも違うと思うよね?」
「もしそうだったとしてもだ。引きこもりなんていうのはおかしいだろ。」
「だって。」
メイーダが駄々をこねているとユウは先生に
「すみません、先生。続きを。」
とメイーダの代わりに謝った。メイーダは深く嫌そうな顔をした。
授業が終わるとメイーダはユウに問い詰めた。
「ユウったらひどいやつ!」
「なにがだよ。だいたいコロニーに住んでいるやつらを全員引きこもりなんてさ。」
「だって、100年も同じようなところにすみ続けて。退屈になるなんてことないの!」
「あったとしても、生活をしてるんだか、住むしかないの。」
「お父さんはそんな生活が嫌だから旅に出たのに」
「は〜。でもさ、みんながみんなお前みたいに外に出たいははしゃぎしょうの奴らばかりじゃないんだよ。」
「元気で何が悪いのさ。いろいろなこと見てみたいって思うのが普通っていうのじゃないのかな。」
「そうだとしても。みんなに合わせないといけないっていう時が必ず来るんだから。」
「大人ぶっちゃって。」
「お前が子供みたいなんだよ。」
「ふん。歴史学なんて嫌いよ。なんであんなのに振り回されないといけないの。」
「昔のことを反省するためなんじゃないのかな。おまえがやっている天体観測とか宇宙外活動なんて意味がないのかもしれないしさ。」
そういうとメイーダは勢いよく教室の外に出た。
教室の外を全力疾走しているとメイーダにはいろいろな人が見えた。どうでもいいような顔をした人。今の状況に満足をしている人。そして、無表情で歩いている人。
メイーダには彼らの時計が止まっているように見えていた。
全力疾走した先にあったのはメイーダの所属している天文部だった。メイーダはポケットにある鍵で開けて、暗い部屋の明かりをつけた。
部屋に入るといろいろな天体観測機材と、膨大な本があった。そこには宇宙の歴史から、技術書まで多種様々な本がぎっしりと並んでいた。
メイーダは窓のそばにある望遠鏡を覗いた。
覗き込むと眩い星空があった。地球とは真反対だった。でも、その先には何億光年もさきにある光の粒が見えていた。メイーダはそれを見ては心を躍らせた。点いたり消えたりする星の向こうに何があるのかを想像していた。
夢中になっていると、後ろのドアが開く音がした。メイーダが振り返るとユウが立っていた。
「いきなり出ていかなくてもいいだろ。」
「星が良く見えるために来たの。」
「どうせ、宇宙船を動かすための口実だろ。」
「いいじゃない。そういうのがないとチョウさん許してくれないんだもの。」
「部長をそんな呼び方しなくてもいいだろ。直しなさい。」
「向こうが文句言ってこないんだからいいでしょ。」
「そこまでしてなんて外に出たがるんだ。」
「内緒。」
照れ臭そうにそういうとまた、望遠鏡を覗き込んだ。ユウは中にあった技術書を手に取り、そこにあったパイプ椅子に座り込んだ。
そうしているとチョウとクゲーラが入ってきた。ユウは
「ああ。遅かってですね。」
「ちょっとね。宇宙船の鍵手に入れるのに手間取っちゃって。」
チョウは少し面倒くさそうにいうと、メイーダが食いついてきた。
「ようやくきたきた。」
メイーダがチョウに詰めよるとクラーケが
「ダメですよ。何にも用がないのに。」
と手を突き出して静止した。。そうするとすこしメイーダは不機嫌そうに
「なんでよ」といった。クラーケは突き出した手を下ろして言った。
「隕石群がいつここの近くに接近してくるのかわからないのにばかすこばかすこ宇宙船をだしちゃあ、宇宙のごみになっちゃうでしょ。」
「星屑になったら流れ星になれるよ。」
「茶化しちゃって!」
「じゃあ、クラーケ。お宝が目の前にあってあなたは手を引っ込めることできる?」
「毒蛇とかいなければ。」
「私は毒蛇があろうと落とし穴があろうと手に入れる!ねえ、チョウさん。宇宙船の鍵ちょうだい!」
メイーダがそうねだると、チョウさんは笑顔で
「だめです。」といった。そういうとますますメイーダは不機嫌になった。
「ヤダヤダ!目の前星の宝物がいっぱいあるっていうのに!」
「あるように見えるだけで、ないものだよ。」
「なんでそう屁理屈を言うんです。」
「じゃあ、直接いうと、ダメなんだろ。」
そういうと、ユウも追い打ちをかける。
「おまえは、部長と俺に負担をかけすぎなんだよ。」
「なんでユウがいうの!?」
「ここの宇宙船の整備、誰がやっている思ってるんだよ!宇宙ごみと穴空けごみを見分けるソフトをつくったの、だれだと思ってるんだ!」
クラーケも追い打ちをかける。
「そうよ。それまでの経路の設計だれがやってる思ってるの!」
そういうとメイーダは肩身がせまい思いがした。そこの視線を避けるために外を見ると、太陽が光がこちらを向いていた。
「ねえ、聞いてるの?」
「聴いてます。でも、なんだかいって協力してくれるじゃないの。」
「言わせておけば!」
クラーケはかなりきびいし目でメイーダを見る。メイーダはその視線を外して、外にまた視線を向けた。
すると、ぴかぴかと人工の点滅が見えた。
メイーダは失明覚悟でその方向を見た。
ユウは望遠鏡のガラスを塞いで止める。
「危ないだろ!」
「あそこに人工物が!」
「それは大人の宇宙船だろ!」
「そうじゃない。遭難信号でもない。べつの信号だった。」
そういうと静止した手を振りほどいてもう一度その方角に向けて望遠鏡を向けた。
「えっと、E、E、E。なにこれ!」
「やめなさい!」
「チョウさん。ごめん!」
そういうとチョウさんの持っていた鍵を奪った。メイーダは走って部屋を出る。
「あいつ!」
チョウさんがそういうとユウも走り出す。
「俺が行きます。宇宙服はいつものところに?!」
「ああ!でもエンジンとかの調節は!」
「昨日整備しときました。ソフトの実用テストもします。それで先生に説明を!」
「了解。」
ユウはメイーダの後を追った。メイーダはまっすぐと宇宙船があるドックに向かった。ユウはドックの近くのロッカーに向かって宇宙服を取りに行った。
メイーダは鍵で宇宙船を開けた。中に入るとエンジンをひねり、動力を稼働させる。
その後に続いてユウが入って
「おまえ、船外活動するなら宇宙服いるだろ。」という。そういうとメイーダも
「ごめん!」と言って慌てて宇宙服を着る。その間、ユウは起動準備に取り掛かった。
メイーダが着替え終わるころ、ユウはメモリースティックを専用の端末につないで作業をしていた。メイーダは
「早く!」と囃し立てる。
「落ち着け!いま、ソフトをアップデートしてるんだ!」
「わたしが運転する!」
「終わった!いってよし!」
「よーし!」
そういうと、アクセルを入れて進んだ。
「第一関門、次を右!次左!」
「わかってる!」
右に突き当たると、船体がすこしだけ当たる。
「もう少し、気をつけろ!」
「見えないのよ。このまま、突っ切るから、ヘルメットつけて。」
そう言って左に曲がると宇宙空間が見えた。
無事に出ると、メイーダは通信をした。
「クラーケ、位置の情報は!」
「そのまままっすぐ。いま見えているところから10度右へ!そのまままっすぐ。」
「わかった!」
そういうと、数値を入れて曲がった。メイーダは終始、目の前に広がる宇宙を見ていた。
数分すると、その姿がよく見えた。まるで昔の弾道ミサイルのようだった。ユウはすこし怯えて
「どこから、ミサイル!」
「でも、来ないわね。警察。」
「あの穀潰しがやるっているのか!犯罪なんてほとんどないのに!」
「だったら、安全っていうことでしょ!」
もう少し、近くで見てみると、ミサイルというより宇宙船だった。一昔前の宇宙船だった。メイーダは目を輝かせた。
メイーダは船体を近づけた。
ある程度、近づけるとユウに言った。
「ユウ、操縦お願い。わたしミサイルまで行けるようにワイヤーはちゃうから!」
そういうと、メイーダは操縦席の後ろの扉から出て行った。
出て行ってすこししたら、べつの出入り口があった。その近くに機銃座のようなものが備え付けていた。
メイーダはそこからミサイルへ標準を合わせた。
メイーダは撃った。
撃ったのはタマではなく、ワイヤーだった。ワイヤーが一本当たるとその周りに何本もワイヤーが絡まって道になっていく。
道が出てていくと、メイーダは工具をとって、ヘルメットを被って出入り口を開けた。そこから風が外に出て行って、その速度を利用して、外に出た。すぐにドアを閉めてミサイルのほうまで行った。
メイーダが工具箱からバーナーを出すと、一人が入れるくらいの穴を開けて入った。
入ると、真っ暗だった。メイーダは工具入れから懐中電灯をだすと、中には人はいなかった。奥に進むと、いろいろな箱があった。開けてみると見たことのないような道具やおもちゃが詰め込めるだけ詰め込んだのか、はみ出そうなくらいあった。
メイーダは興奮した。このまま、ヘルメットを脱いでやりたいくらいに!