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シュガーブレイク


【ピエロ】

 僕の頭の中で ずっと鳴っていたように

 さりげなくその音は流れていた

 愉快さが追いかけてくるような

 そのくせ僕を放っていってしまいそうな

 祭りの笛とおもちゃのピアノを合わせた

 サーカスの歌が絶え間なく

 僕はそれを追いかけて

 どこにも見つからないとわかっていて

 途方に暮れながら穴に落ちた

 どこまで行っても水は水で

 濃すぎる青が僕の視界を奪って

 押しつけがましい光がぼんやり射した

 明瞭すぎる拍手の音が

 弾けるように聞こえた刹那


 僕はやっと、サーカスを見つける


 舞台にピエロはひとり

 乱反射する光の中で

 赤を手玉にとって遊んでいた

 観客に女の子がひとり

 楽しそうに手を叩いて笑っていた

 それでよかった

 それでよかったはずなのに

 ここにいたんだねと僕はつぶやく

 手を伸ばすけれど届かない

 落ちていく僕には届かない

 沈んでいく僕には、届かない






【夢と現実の所以】

 あなたの夢を見ました。

 あなたがこちらを向いた瞬間に、

 夢だとわかってしまいました。






【何も起こらない】

 朝目が覚めたら夢の中で

 時計を持った兎に誘われた

 わたしはそれを断って

 朝ごはんをかきこんだら

 いつもと同じ通学路を駆ける

 楽しいこと以外は嫌なことの箱に入れちゃって

 眠る時にその箱をちょっと開けてみて

 げんなりしてはまた夢を見る

 ああアリス、今日も明日も

 きっと何も起こらないんだね






【ある白雪の肖像】

 それは、食べちゃいけない林檎でした。

 だから食べました。

 どれだけ食べちゃいけないと言われても、

 もう私に優しさはいらなかったから。

 美味しくなかったと思う。

 誰も私を救わないで。

 王子様なんて必要ない。

 おかあさん、

 りんごをちゃんとたべました。

 あなたがそれを、望んだから。






【あれから誰と笑いあっても】

 君と笑いあったあの日を

 いつまでもいつまでも覚えている

 君を泣かせたあの日が

 僕の忘却を許さない






【シュガーブレイク】

 煙草の香りがする。

 薄いカーテンの向こう側から、強い陽の光が透けた。

 あの人が来ていると思う、

 だって煙草の香りがする。

 舌に残る生々しさを、いつか忘れる時が来る。

 母の寝室で見たあの人の目と一緒に、忘れる時が来る。

「ねえ妹がほしい?」

 近頃料理をするようになった母の、甘すぎる玉子焼きも。

「弟がほしい?」

 これ以上続いたら頭がおかしくなりそう。

『あたし、あなたのダーリンがほしいわ。ママ』

 とけきらなかった砂糖が、口の中で音を立てて砕けた。


 前向きなものを一つくらい書かなければと思ったらシュガーブレイクができました(?)

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