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セクション11:津波襲来!

「え!?」

「上空退避だって!?」

 バズとラームが驚いて声を上げた。

『津波の到達時刻は30分後と予想されている! 30分以内に戦闘機を離陸させよ! これは実習ではない! 繰り返す、これは実習ではない!』

「30分で離陸できなきゃ戦闘機が津波にさらわれちまうって事か!? こりゃ大変だ! すぐ行くぞラーム!」

「は、はい!」

 バズとラームは、慌てて部屋を駆け出して行く。

 その前に。

「そうだツルギ、お前はどうするんだ?」

 立ち止まったバズが、そうツルギに問いかけてきた。

「え――」

 どうするって、と考えた所で、ツルギは事態の深刻さに気付いた。

 ストームは今、風邪で寝ている。

 つまり、自分達の機体ウィ・ハブ・コントロール号にはパイロットが不在――

「――た、大変だ!」

 ツルギは思わず、車いすを玄関に向けて動かしていた。


   * * *


 サイレンが鳴り響く中、学園はいつにない慌ただしさを見せていた。

 迫りくる津波を前に、騒ぎ立てて建物の上へ避難する者。

 そして、基地にある戦闘機を上空退避させるために駐機場(エプロン)へと向かう者。

 ツルギはその後者に混じって、必死に車いすを進め格納庫へと向かっていた。同じ格納庫に機体がある、バズとラームと共に。

 しかし、どうしてもスピードが出ない。

 ストームはあれだけ速度を出して押せていたというのに、自分ではどうしてもその速度が出せない。

 格納庫に入った時には、既に10分近く経っていた。

「ツルギ! ストームちゃんは?」

 格納庫に入るや否や、ゼノビアは真っ先に問いかけてきた。

 彼女ら整備士達は、突然の発進命令にてんてこ舞いになっていた。

「何言ってるんですか! ストームは今風邪で寝ているんですよ! 代わりのパイロットはいないんですか?」

「来てないわ! ママはてっきりストームちゃんが来るものと――」

「くっ、なんでこんな時に――!」

 ツルギは歯噛みするしかなかった。

 既に代わりのパイロットが来ている事を期待してツルギはフライトスーツなど装備一式も準備してきたのだが、期待は見事に裏切られた。

 機体に描かれたマークを見上げる。

 ツルギとストームが2人で塗った、ドリームキャッチャーのマーク。

 そんなマークが描かれたこのウィ・ハブ・コントロール号は、まさに『2人の翼』と言えるものだ。

 それを津波で飛ぶ事もなく失ってしまう事が、あっていいのか。

『津波到達まで、あと20分!』

 津波到達の時刻が迫っている事がアナウンスされる。

「ツルギ、悪いが俺達ゃ先に行くぞ!」

「ツルギ君、ウィ・ハブ・コントロール号をお願い!」

 既にコックピットに入っていたバズとラームが告げると、バズ・ラーム機のエンジンスターターが回り始めた。

 甲高い駆動音から耳を塞ぐべく、ツルギはヘルメットを被る。

 このままでいい訳がない。

 ゼノビアは言っていた、世の中は助け合いだと。

「ゼノビアさん、代わりのパイロットを探してきます!」

 エンジンが回り始めて格納庫がうるさくなる中、ツルギはゼノビアに向けて叫んだ。

「ええ?」

「その間、機体をお願いします!」

 それだけ告げ、ツルギは格納庫を飛び出した。

 もちろん、誰か手が空いているパイロットがいないか探すためだ。

 駐機場(エプロン)でも、駐機していた機体が既にエンジンを回し始めている。やっと戦闘機に乗り込み始めた生徒もいる。

「誰かー! 手の空いているパイロットはいないかー!」

 ツルギは反応してくれることを願い、声を上げて通り過ぎる人達に向けて叫んだ。

 だが、通り過ぎる生徒達は誰もツルギの声に耳を傾けない。いや、傾ける余裕がないのかもしれない。

 何度声を上げても、ツルギの声に反応する生徒はいない。

「手が空いているパイロットは――」

「君君! そこにいると滑走路に行く戦闘機の邪魔だ! 下がってろ!」

 あろう事か、近くにいた整備士に注意される始末だった。

「すみません、誰か手の空いているパイロットはいないかご存知ですか!」

「悪いがそこまで気が回らん! いいから君は早く避難しろ!」

 試しに問いかけてみたが、あっさりと退けられてしまった。

 仕方なく場所を変えようとすると、突如として背後から熱い風が吹きつけてきた。

「うわっ!」

 思わず身を伏せた。

 何かと思って振り返ると、そこにはエンジンノズルを向けて滑走路へ向かうイーグルの姿があった。

 早い機体は既に滑走路へ移動を開始している。それが、自分だけ置いてけぼりにされるのではないかとツルギを焦らせる。

『津波到達まで、あと15分!』

 時間がどんどん迫ってくる。何か他の手を打たなければ。

 そう思っていると、ふとツルギの視界にトランシーバーを持っている整備士の姿があった。

 迷っている時間はなかった。ツルギはすぐさまその整備士に駆け寄る。

「それ、貸してください!」

「あっ! ちょっと!」

 ツルギは強引にトランシーバーを奪い取ると、すぐさま周波数を自分の知るものに合わせ、マイクに向かって叫んだ。

「こちらブラストチームリーダー、ツルギです! パイロットが病欠のため自分の機体を飛ばせるパイロットがいません! 誰でもいいですからイーグルに乗れるパイロットを第308格納庫に手配してください!」

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