表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/68

セクション12:ストーム暴走!?

『早く機首を上げてストーム!』

 ラームが呼びかけても状況は変わらず、どんどんその可能性が濃厚になっていく。

「返事をしてくれストーム――くそおっ! どうして、どうしてこんな――!」

 力任せに計器盤を叩く。

 こんな時にも、自分はストームを助ける事ができない。

 その無力さに、ツルギは下半身不随となった自分の体を呪うしかなかった。

 ふと思い出すのは、先日の父の言葉。


 ――それがお前の限界だ。これ以上続けたら、間違いなく死ぬぞ。


 ああ、父さんの言う通りだった。

 僕はこのまま、何もできずに――

「え? うわっ落ちてる!?」

 そんな時、そんな声がしたと思うと、急に体をGが襲った。

 機体の横転(ロール)が止まり、引き起こされたのだ。

 おかげで、ウィ・ハブ・コントロール号は雲の海に少し腹をかすっただけで済み、再び上昇を始めた。

 それは、ストームが息を吹き返した何よりの証拠だった。

「ストーム……!」

「ツルギ、あたしどうしちゃってたの? なんでいつの間に落ちてたの?」

 すぐさま振り返り問うストーム。

 どうやら気を失った事に自覚はないらしい。

『ツルギ! 大丈夫ですか!』

 そんな時、ミミの声がした。

 見ると、ミミ機がこちらに近づいてくるのが見える。心配して後を追ってきたようだ。

 大丈夫だ、と答えようとした矢先。

「……話は後だね。今は姫様を落とさないと!」

 ストームはそんな事を言って、唐突に急旋回を行った。

 急なGのせいで、ミミに対し答える事ができない。

 ウィ・ハブ・コントロール号の機首が、ミミ機に向けられる。

ミサイル発射(フォックス・ツー)! ばーん!」

 そしてあろう事か、ミサイルをロックオンして攻撃した。

『っ!?』

 予想外の攻撃にミミは驚いたものの、反射的に急旋回しフレアを散布。

『な、何をするのです!? 私はツルギを心配して来たので――』

「まだまだっ!」

 ミミの呼びかけを無視し、ストームはさらにミミ機の背後を取ろうとする。

「お、おいストーム!? 何やってる!?」

「決まってるじゃない! 決着をつけるの!」

 驚くツルギをよそに、さも当たり前のように言い放つストーム。

「待てストーム! 実習はもう――うわっ!」

 止めようとするツルギだが、ウィ・ハブ・コントロール号が急加速したため口を塞がれてしまう。

『ストーム、何してるの!? やめて!』

『ブラスト1、もう実習は中止されています! 攻撃をただちに中止してください!』

「そんな話聞いてないよっ!」

 ツルギの言葉をラームやピース・アイが代弁するものの、ストームは全く聞かない。

 ストームは完全に、実習はまだ続いていると思い込んでいる。それも、ピース・アイの呼びかけも無視するほどに。

 いつものストームなら、いくらなんでもこんな事はしない。明らかに様子がおかしい。

 まるで、病で思考能力が麻痺しているかのような――

『くっ、あんなアクロバットやって頭のネジが緩んだのですかね……ならこちらも応戦するまで!』

 すると、今まで追われてばかりいたミミ機が一気に急上昇。

 そのままバレル・ロールを行い、ウィ・ハブ・コントロール号の背後に回った。

 ロックオン警報が鳴る。

「ま、待て! ミミまで悪乗りしなくていい!」

『すみません、ツルギ。ですがこういう輩はこうでもしないと目覚めません! 機関砲発射ガンズ・ガンズ・ガンズ!』

 ミミ機が見えない弾丸を放つが、ウィ・ハブ・コントロール号はくるりと一回転した後旋回し回避。加速して振り切ろうとする。

『姫様もやめてください! 事態がこじれるだけです!』

『止めるためにやっているのです!』

 ピース・アイも止めようとするが、ミミも話を聞き入れない。

 かくして、あるはずのない第2ラウンドが始まってしまった。

 2機は互いに背後を取り合おうと、巴戦に突入する。

 ツルギはかかるGをこらえるしかなく、ストームを止めようと声を上げる事もできない。

『おい、誰かあの2人を止めろ! このままだとらち開かねえぞ!』

『ならば私が!』

 そんな時、ウィ・ハブ・コントロール号の正面にフィンガー機が現れた。

『この卑怯者っ! 姫様に不意打ちをかけるなんて、このフィンガーが許さないっ!』

「邪魔しないでっ! ミサイル発射(フォックス・ツー)!」

 だが、そんなフィンガー機にも容赦なくミサイルを放つストーム。

『えっ、うわあっ!』

 フィンガー機は慌てて回避しようとしたが、僅かに反応が遅かった。

 見えないミサイルはフィンガーに直撃し、フィンガー機は力なく雲の下へと消えていった。

『ああ……』

『こうなったらもう止められねえわ……』

 ラームとバズがあきらめの言葉をつぶやく。

 そうしている間に、ウィ・ハブ・コントロール号とミミ機は、正面から向かい合うヘッドオンの体勢になった。

「ストーム! いい加減にしろ!」

「はあ、はあ――もう少し待ってて! これで片を付けるから!」

『それはこちらの台詞です!』

 空中戦はさらにヒートアップし、2人は完全に我を忘れている。

 2機の距離は、瞬く間に縮まっていく。相対速度は音速を超えているだろう。

『ブラスト1にアイス1! いい加減に戦闘を――ん?』

 その時、ピース・アイが何かに気付いたようだが、ツルギには気にかける余裕がなかった。

『このおおおおっ!』

「うりゃああああっ!」

 互いに声を上げ、照準器(ピパー)に互いの姿を重ねる。

 そして、お互いにトリガーを引こうとした、その瞬間――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ