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第1話


「う~ん……」



声を出しながら闘牙は考えこんでいる。

左手にみそ汁の茶碗と右手に箸を持ちながら。



「あの……美味しくなかったですか?」



長い黒髪をポニーテールに結んだ可愛らしい少女が不安そうに闘牙に語りかける。



「あ、いや。アスハさんの料理は美味しいよ。少し考えごとしてただけだから」



闘牙はばつが悪そうにはにかみながら言った。



「よかった…美味しくなかったらどうしようかと思いました」



少女は安心したように笑顔になった。



「アスハさん、敬語は使わなくていいよ。同い年なんだから」



「じゃあ、大神君も私に気をつかわなくていいですよ。アスハって、呼び捨てで構いませんから」



「……ああ」



少年―大神闘牙はこの少女にたいして少し戸惑ってしまう。

なぜなら、神崎アスハは親友であり戦友の神崎大和とミューズ・アハートの愛娘だからだ。

彼らが付き合っていたときを知っている闘牙からしたらいきなり親友の娘がしかも自分と同い年なのである。軽いカルチャーショックである。

それにうっかり自分の正体をもらすわけにはいかないのである。



「あ、そうだ。食事が済んだら父さんが来て欲しいそうです」



「了解。じゃ、片付けはやるから学校に急いだほうがいいよ?」



時刻は8時10分。学校までは徒歩で20分かかるのでそろそろ出ないとまずい。



「そうですね。じゃあ、お願いします」



アスハは軽く頭を下げ、リビングを出ていく。



「何も聴かれないのは大和がうまくごまかしてくれたからだよな」



闘牙は食事を続けながらこれまでのことを振り返った。



~回想~



闘牙がこの時代に来たのは1週間ほど前のこと。全身傷だらけで倒れていた闘牙を帰宅途中だったアスハとその友達が発見したのだ。それから目を覚ましたのは三日後のこと。病院のベットの上であった。



「あ…れ……?ここは……」



ベットから上半身を起こし、周りを見回す。



「どういうことだ?俺はあの時ルシファーと相打ちになったはずだが……助かったのか?」



そんなことを考えていると「コン、コン」とドアを叩く音が聞こえてきた。



「あっ、はい。どうぞ」



闘牙が応えるとドアが開き、黒髪をポニーテールにまとめた可愛らしい少女と30代後半くらいの黒髪と紅い瞳の男性が入ってくる。

闘牙は二人を見ながら「あれ?初めて会うはずなのに見覚えがあるな」と心の中で思った。



「目が覚めたんですね?」


少女が話しかけてきた。



「ああ、助かったよ」



闘牙が少女に応えていると男性が



「ところで君の名前は大神闘牙であっているかな?」


と問いかけてきた。



「はい。俺の名前は大神闘牙です」



「そうか……」


男性は少し笑みをこぼしながら頷いた。



「あ、自己紹介がまだでしたね。私は神崎アスハって言います」



「神崎さん、か。よろしく」



「アスハでいいですよ。神崎さんだとややこしいですから」



「わかった。よろしくアスハさん」



「呼び捨てでいいですよ」


「いやいや。さすがにそれはちょっと…」



アスハさんと会話をしているのを男性は楽しそうにみていた。



「助けていただきありがとうございます」



男性の視線に気づいた闘牙は深く頭を下げ、感謝の言葉を言った。



「いやいや。親友として当然だろう」



男性は確かに「親友」と言った。失礼ではあるがこんな年上に友達はいなかったと思うのだが……



「親友?どういうこと父さん?」



アスハさんも頭に?マークが複数出ている。



「自己紹介が遅れた。私は神崎大和だ。よろしく大神闘牙君」



男性…神崎大和の名前を聞いた瞬間、闘牙に衝撃が走る。神崎大和、闘牙の親友であり戦友の名を男性が名乗ったからだ。



「や…ま…と……なのか?」

            

「ああ、そうだ。私は神崎大和だ」



「そうか……」



闘牙は噛み締める頷いた。まだ完全には信じられないが。


「そういえば父さんって、大神君のことなんで知っているの?」



「ああ、それは……」



大和はアスハさんに説明しながら目で語りかけてくる。目は「話を合わせろ」と語っていた。



「へぇ~大神君のお父さんと父さんって仲がよかったんだ」



「ああ、そうなんだよ。闘牙君のお父さんとはよく会っていたんだが闘牙君と直接会うのは初めてだよね?」



大和が説明しているのでフォローを入れる。



「あなたが父さんの友人の大和さんでしたか。初めてまして。噂は父さんから伺っています」



「いやいや。ところで闘牙君は魔法学園へ編入するために来たんだよね」



魔法学園?なんのことだ?しかし、話を合わせなければ。



「ええ、そうなんですよ。でも途中で襲われてしまって……」



「そうだったんだ」



アスハさんが頷いている。


「ところで闘牙君は住むところは決まっているのかな?」



「あ、いや……」



そんなもの決まっているわけがない。



「だったら家に来ないかい?」



「それはうれしい誘いなのですが……」



そういいながらアスハさんのほうをみる。



「私は大丈夫だよ。大神君なら」



アスハさんが微笑みながら言う。



「ならお言葉に甘えて」



こうして闘牙は神崎家へ居候することになった。

だがこのとき闘牙は一つ大きな誤算をしてしまった。



~現在~



「はぁ…」



闘牙はため息をつく。闘牙がした誤算というのはこの家にはアスハと闘牙しか住んでいないということであった。

大和もミューズも仕事が忙しいらしく家にはあまり帰ってこないらしい。

年頃の男女が一つ屋根の下という状況である。

アスハは話相手が出来て喜んでいたが。



「ま、考えても仕方ないか」



ここ以外に行くところがないので仕方ないのである。闘牙は食べ終わった食器を洗い、片付けた。



「さて、大和のところへ行こう」



そういって闘牙は家を後にした……









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