第7話 まだまだ続く熱い夏
私はユーチューブの動画で、
ボクシングのプロテストの結果を、
「合格しましたーッ!」
笑顔で報告する。そのコメント欄には、
「桃山さん、合格おめでとう」
「頑張ったね。アズミちゃん」
「これからも、応援しますよ」
などと、祝福のメッセージが、
多数、書き込まれていた。
「いつも応援、ありがとうございます」
私は深々と頭を下げて、
「合格できたのも皆さんの応援の、お陰です」
これは本心からの感謝の言葉だ。
こうして私の夏休みは終わり、二学期が始まる。
学校へ行くと、
私の顔を見るなり、蓮太郎が、
「ユーチューブ見たよ。合格、おめでとう」
満面の笑みで、そう言ってくれた。
「ありがとう蓮太郎。いつも応援してくれて」
だが、クラスの女子は二学期に入ると、
増々、私との距離をとって、
陰では悪口を言っているらしい。それでも、
「そんなこと気にすんなって、嫉妬だよ、嫉妬」
と、蓮太郎だけは私の味方になってくれた。
そんな蓮太郎に、私は、ポツリと本音を漏らす。
「あの時、私も夏休みに海へ行きたかったな」
「まあ仕方がないよ。今、桃山は頑張り時だ」
そんな学校生活を送っていた私だが、
マネージャーの徳井さんから電話があり、
「今度、ボクシングのデビュー戦が決まったから」
と、言う。これには私も驚いた。
「えっ、私、プロとして試合もするんですか?」
「ユーチューブの人気もあるし、一試合くらい」
徳井さんは何が何でも、私を説得する気らしい。
それならば、
「私も空手の全国大会に出た経験がありますから」
プロボクシングの試合も、
やってやろうじゃないか。
「それで試合の相手は決まっているのですか?」
「うん、プロテストで戦った、須賀愛香里だよ」
須賀愛香里。あのスパーリングのリベンジだ。
否が応でも、私の闘志は燃え上がった。
そんな時に愛香里が、
「ボクシングをナメんなよ、アイドル」
と、SNSで挑発的な言葉を発信する。
芸能人の私が相手なので、
その発言は話題となり、その流れで、
愛香里はスポーツ新聞の取材を受けた。
「桃山アズミは、正直に言って弱かったですよ」
そのインタビューでも愛香里は敵意を隠さない。
私の熱すぎる夏は、まだまだ続きそうだ。