第3話 『きらめき♡美天使』
今日はイベントのため、地方に来ているが、
「もちろん観光なんて出来ない」
食べ物も用意された、お弁当だった。
その、お弁当を食べていると、
「まだ、ボクシングで鼻は潰れてないの?」
嫌味な態度で声をかけてきたのは、
グループのリーダーの菜七子である。
「すいませんね。綺麗な顔で」
と、私も言い返す、強かさを、
少しは、身につけた。
まあ、取っ組み合いのケンカになれば、
100%、私が勝つのだが。その時、
「そろそろ、始まるぞ」
マネージャーの徳井さんが、
メンバーに声をかける。
『きらめき♡美天使』は、
八人組のアイドルユニットだ。
リーダーの菜七子は、
「嫌味で陰湿な、最低の女」
だったが、一度、ステージに出ると、
その輝きはハンパではなく、
ファンを惹きつける魅力にあるれていた。
「みんなーッ、今日も盛り上がるゾ!」
菜七子のマイクパフォーマンスで、
会場は沸き一気に上がる。
「くやしいけど、菜七子には勝てない」
私は、菜七子の、
圧倒的なスター性を見せつけられた。
このイベントは音源を流しての、
口パクだったので、
「歌の苦手な私には、ありがたい」
後は覚えたてのダンスを、
間違えないように踊るだけだ。
「今頃、蓮太郎たちは海で遊んでいるのかな」
ふと、そんなことが脳裏を過った時、
目の前のファンたちの熱気が、
なぜか、遠くに感じる。それでも、
パフォーマンスは、無難に終わった。しかし、
「あんた、やる気あるの!」
舞台裏で菜七子に怒鳴られた。
「目の前のことに集中して、必死になりなよ!」
菜七子は、私が上の空だったことを、
鋭く見抜いていたのだ。
「いつでも、全力を尽くさないと」
「す、すいません。気をつけます」
とりあえず謝る私を、
菜七子は鋭い眼光で睨みつける。そして、
さらに追い打ちをかけてきた。
「そんなんじゃ、プロテストもうからないよ」
確かにそうだ。こんな気持ちでは、
「私は、何かを成し得ることなんて出来ない」
やはり菜七子はプロ意識の高いアイドルで、
その精神性がファンを魅了しているのだろう。