第2話 ハードワーク過ぎる夏休み
学校は夏休みに入った。だが、私は、
ボクシングジムに通い詰めだ。
「これが、結構、きつい」
それに加えて『きらめき♡美天使』の仕事では、
各地のイベントで、歌って、踊っている。
しかし、そのイベントの舞台裏で、
「あんたはオンチだから、企画モノで頑張んな」
と、リーダーの菜七子が酷い嫌味を言ってきた。
だが、そんなことは、あんまり、
「気にするな。芸能界は、こんなモノだ」
マネージャーの徳井さんは、そう言っている。
「それよりボクシングの方は、大丈夫?」
徳井さんは私のことを、
心配してくれているようだ。
「大丈夫ですよ。私、空手選手ですから」
と、私は強がっていたのだが、
この夏休みは、人生最大のハードワークだった。
そしてボクシングジムでは、
トレーナーの畠山貴教さんから、
「パンチ力は有るが、顔面のガードが甘いな」
そう指摘を受けている。
この様子は、ユーチューブで配信されていて、
再生回数は順調に伸びていた。
コメント欄には、
「無理せず、頑張ってください」
「アズミちゃん、カッコいい!」
などと、応援のコメントも書き込まれている。
畠山トレーナーの話では、
「プロテストは十六歳から受けられるよ」
というので、それなら私は、
「夏休みの終わりには挑戦できます」
試験内容は健康診断と筆記試験、実技試験だ。
実技試験は、2ラウンドのスパーリング形式。
「アズミ、時間は無いが合格へ向けて猛練習だな」
「はい、頑張りますので、よろしくお願いします」
そんな夏休みを送っていた私だが、ある日、
クラスメートの蓮太郎から、
「次の日曜日、皆で海に遊びに行くんだけど」
と、ラインがあり、
「たまには桃山も一緒に行かない?」
そう誘われたのだが、
アイドル活動のイベントのスケジュールが、
入っているため、断るしかない。
「ゴメンね。仕事なんだ」
「そうか、頑張ってな!」
こうして私の高校生活は、
普通の女の子とは違うものになっていった。
しかし、
「今、私は、燃えるような熱い夏を生きている」
早朝に起きて走り込み、
ジムではサンドバッグを全力で叩く。
その様子がユーチューブで配信され、
応援してくれる、ファンも徐々に増えていった。