質の悪いフリーライター
記者会見が開かれていた。
とある大企業が不祥事を起こしたのだ。自社のOLを接待要員として使い、猥褻な行為すらも強要したのだという。
記者会見の会場からは、激しい怒号が聞こえていた。怒号を発していたのは、記者…… どうやらフリーのライターのようだった。責める口調からは相手に対する敬意がまったく感じられない。侮蔑しているようにすら思える。企業の重役達は謙虚にしおらしくしていたものだから、その対比により、その態度の悪さはより際立って見えた。そしてその所為か、世間ではそのフリーライターが問題視されてしまったのだった。
「相手が悪ければ、何を言っても良いと思っているのか?!」
「弱い立場の人間に対して恥ずかしい」
「もう少し品位を持って欲しい」
そして、その結果として、不祥事を起こした企業への批判は幾分和らいだのだった。企業を糾弾する立場の記者が、企業を助けてどうするのだ?と、一部からは呆れた声が上がった。
が……
記者会見が終わった後、
フリーライターが謝礼金を受け取っていた。相手はどうも不祥事を起こした企業の人間であるようだった。
「いやー、助かりましたよ。お陰で、世間の目を多少はうちから逸らせました」
フリーライターは「いえいえ」と返す。
「どうせ、本名も写真も公開してはいませんからね。お安い御用ですよ」
そう。
このフリーライターは、意図的に悪い態度で質問をしていたのだ。もちろん、不祥事を起こした企業を助ける為に。謝礼金を貰って。
切り取り、捏造、自作自演。様々な情報が飛び交うこの世の中。
もっと冷静かつ慎重に、我々はこの高度情報化社会を受け止める必要がありそうだった。
こーいう事まで疑わざるを得ない時代……