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M式縛りプレイ執筆法で『小説を書き始めて一ヶ月の随筆』を書いてみた

作者: うーた

『表現の幅を広げるための「縛り(使用制限)」リスト』


――――


・接続詞の禁止(しかし、だから、そして……)

・曖昧の「が」の禁止(私は彼にフラれたが、あきらめがつかない)

・接続詞「ので」の禁止(晴れたのでピクニックに行こう)

・指示語の禁止(この、その、あの、どの、ここ、そこ、あそこ……)

・「思った」「感じた」「考えた」の禁止

・特定できない「時間」と「場所」の表記の禁止

・「AというB」の禁止(劣等感という感情が私を際限なく苦しめた)

・「~と言った」の禁止

・「頷いた」「振り向いた」「微笑んだ」の禁止

・三点リーダーの禁止

・文末重複の禁止(~だった。~だった。)

・「~のような」の禁止(直喩)

・「こと」「もの」「とき」の禁止(私にとって悲しいことだった。/それは嫉妬とも呼べるものだった。/私が彼に初めてあったとき……)


――――


(webサイト『タロットプロット創作研究室』の記事、『小説らしい文章の作り方(M式縛りプレイ執筆法)』より引用)


 非常に参考になるサイトなのだが、特にこのリストが目を引いた。


 「自分に制約を課して代替表現を探す」ことで、小説文体を作っていくことができるらしい。おもしろそう。


 プロっぽい小説の秘密がここにある気がする。


 へへ、もう「この」だの「ここ」だの使ってしまっている。意識して消さないとダメなようだ。


 気を取り直して、以下から禁止ルールをすべて適用して文章を書いてみる。

 目標は1000文字だ。ふぁいっ!



  『小説を書き始めて一ヶ月の随筆』


 小説執筆ツールNolaでは、資料を開いて執筆するためにプレミアム登録が必要だ。課金するお金はないのに。

 プロットなどの資料表示が無くては、執筆は進まない。ぐぬぬ。


 PCの前のくたくたの万年床に座って天を仰いでいた私は、苦肉の策で2つのウィンドウを開いた。


 右にプロット、左に執筆中の内容を表示して、無課金でも擬似的に参考資料を見られる環境にする。

 Edgeのワークスペース機能を使って体裁を整えるも、アプリケーションのUpnoteと比べて、ウェブブラウザのNolaは扱いにくく、慣れない。


 大きく布団に寝そべって、どうして執筆ソフトを移行することになったのか思いを馳せる。




 2024年の元旦に、実家に家族が集まった。

 初めて書き上げた3000字過ぎの小説を、高校生の妹に見せてみる。

 良くないのは分かっていた。意見が欲しかったのだ。

 妹は渡したスマホで小説を読み始める。サーッと斜め読みして、一、二分が経ってスマホを返された。「うん、まあいいんじゃない」と曖昧に笑う妹。


 数週間悩んで書いた小説を、読み流されてはたまらない。私はムッとした。よく読んでくれ、と強引に再読させ、丁寧に最後まで読ませる。妹の感想はさらに減る。傷つけまいと見せる愛想笑いに、苦汁を飲まされた。


 おもしろくないとわかっても、どうすればいいかがわからない。シーンがあって、キャラがいて、読める文字で書いてある。妹に改善のアイディアを尋ねても、具体的な案は貰えなかった。


 諦めて、5ちゃんねるで小説を晒す。未熟な作品を見せるのが怖くて妹に頼っていたのだ。もう致し方ない。スレのテンプレの通りに指摘してほしい点を並べ立て、意見を募った。


 ブックマーク数100未満しか出入りを許されない『【小説家になろう】底辺作者が集うスレ』、俗に『底辺スレ』と呼ばれるスレには、毎日長編小説1~2話を更新し続ける手練れが集まっている。

 ふつふつと煮えたぎる書籍化の野望を胸に、何年にもわたって小説を書き続ける彼らには、私のちっぽけな創作の炎の比ではない、どす黒い、小説家としての魂があった。


 私の小説は9人からの有難い叱咤激励を受けた。参考にして6000文字の小説に書き直す。確実に良くなった確信はあった。

 一から書き直した小説を晒して、反応を待つ。またしても非常に厳しく、有難いお言葉を頂いた。少し良くなっても足りなかったのだ。

 私はめげなかった。

 小説にすっかりハマってしまっていた。




 布団から起き上がって、また執筆環境を作る作業を再開する。

 執筆にはUpnoteを使っていたが、今日、25日になって、ノート50個の制限に引っかかり、新しいツールに移行しなくてはならなくなったのだ。

 Upnoteの1ヶ月分のノートを眺めていく。書き上げた小説は結局1作品だけだった。書きかけの小説や随筆が、メモ欄をすべて埋めてしまっていた。


 1作品書いたあとの小説の執筆は、行き詰まっていた。書いては破綻し、盛り上がりに欠け、描写の稚拙さにうんざりする。疲れてくるとさらにひどい。

 一日に数千数万文字書く作家はすごいのだ。私は数百文字のプロットにうんと悩んで、無理やり本文を書き始め、一時間に1000文字ちょっとを書いて、3000文字を超えたあたりでダメな小説だと気づく。書き出してみるとずいぶん間抜けだ。


 まあ、小説は続けていこう。書き始めた文章が着地しようとするのは、なんだかんだ気持ちがいい。

 今後の短編はこだわりすぎずに、公開まではこぎつけたい。



 うーん、頑張って書いた。

 制限リストに則るため、何度も書き直した。書きながら合っているのか不安になって、今も見直しをしてしまった。

 ルールに沿うと、独特の文体になる。何も考えず書くよりは確実にうまくいった。今後の小説に活かしたい。


 ぜひ読んだ人は試してみてほしい。制限は慣れるまで大変だけど、「文体ってルールで変えられるんだ!」というのが体感できて楽しくなるよ。


 あと、慣れてくるとNolaも悪くないかも?


 ……わっはっは。でもでもだってだからこそあど! 何も制限なく書くのって気持ちいいねえ。


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