7話 労働万歳!魔法万歳!
1500字くらいを目安に書いていたのですが、なかなか話が進まないので文字数を増やしてみました。更新ペースが落ちたら元も子もないですが、頑張ります。
「バーミリオン、起きてるか?」
そう言って、部屋をノックするブックス。
俺は返事をして部屋のドアを開く。
「ああ、おはようブックス。もう仕事か?」
「そうだな。だがその前に朝食だ。」
それもそうか。俺は部屋を出てブックスとリビングへ向かう。なんかいい匂いがする。恐らくはパンと、焼いた肉の匂いだろうか。う~んさっきまで腹は減って無かったが、いい匂いに食欲がそそられるな。っと、リビングに到着だ。
「おはようございます。タルナさん。」
「おはよう。バーミリオン君。ご飯持ってくるわね。」
そう言って、朝食を運ぶタルナさん。
「ありがとうございます。じゃあ早速…いただきます。」
そう小さく呟いて、手を合わせる俺。ブックスを見る限り、この世界にこういう風習は無さそうだが、こういうのは日頃から心掛けることが大事だろう。
俺は早速朝食に手をつける。この肉、鹿の肉かな?パンと肉という組み合わせは、元日本人である俺としては少し違和感のあるものではある。ぶっちゃけお米が欲しい。
しかし、今となっては日本のような、米が主食の地域に住んでいたことの方が短いため慣れたものだ。ホットドッグとか、ハンバーガーとかも普通にあったしな、日本にも。
むしろ、未だに肉と食べるのはお米がいいという感覚が残っている方がおかしいのかも知れない。幼少期の習慣って大事なんだなぁ。そんなことを考えつつ食べ進め、3分程で食べ終えた。
「ごちそうさま。」
「もう食べたのか?早いな。足りなかったか?」
「いやいや、食べるのが早いだけで、そんなに大食いな訳じゃないから気にしないでくれ。」
さて、待たせるわけにはいかないと思って急いで食べたが、早すぎたみたいだな。暇だし片付けを手伝うか。そもそも居候だしな。
「机に置いておいてくれれば、私が片付るわよ?」
「いやいや、住ませていただいて、ご飯も用意してもらってるんですから、自分の分くらい片付けますよ。ブックスが食べ終わるまではやることもないですし。」
「そう?助かるわ。」
ここで泊めてもらえなければ、山の中でしばらく暮らすはめになっただろうからな。それに比べれば労働なんて大したことじゃない。だいたい経験済みだし。
よし、これで全部っと…!
本当は二人の分もやった方がいいだろうが、ブックスの手伝いの方が重労働だろうし、そっちが優先だろう。
「待たせたな、早速仕事だ。森に行くぞ。」
「はいは~い、じゃあタルナさん、帰ってきたらまた家事とか手伝いますから。」
「それは助かるけど、そっちの仕事もなかなか大変だと思うわよ?無理しなくても…」
「大丈夫です。家事はだいたいできるので、任せてください。」
「そう。じゃあ、余裕があったらお願いするわね。二人とも頑張ってね。」
「おう!」
「はい!」
そうして家を出て、山の奥に向かうブックス
「今更だが、どこで何をするんだ?」
聞いては見た。ある程度検討はつくが。
「あぁ、まだ言ってなかったか。木を切って集めて、それを建築用の木材なんかに加工するんだ。今向かってるのは作業小屋だな。」
マジか、こんなとこで加工までするのか。流石に想定外だ。でも、
「それって街まで売りに行くんだよな?ここで集めて持って行くのは効率が悪いんじゃ?」
街まで馬車で行くみたいだし、一度にそんなに木を運べないと思うんだが。
「まぁ良くはないな。だからこそここで加工して、余分なものを減らしてから運ぶんだ。木材に加工しちまえば、皮なんかの分の重さも減るし、運ぶとき積みやすくなる。しかも加工すると高く売れるからな。」
「なるほど。だがそもそも、1回でどれくらい運べるもんなんだ?馬車でそんなに沢山持って行けるのか?」
「ああそうか、魔法を知らないんだったな。馬に身体能力上昇の魔法をかけてやるのさ。あとは圧縮と軽量化の魔法を木材の方にかけてな。」
「ブックスも魔法が使えるのか。割と誰でも使える感じなのか?」
「簡単なものならな。魔法の発動を補助する魔法具があれば魔法の基礎さえ知っていれば魔力の尽きない限りだいたいのやつは使える。ただし、魔法使いの魔法は別だ。あいつらは基本補助なしで強力な炎なんかを出せるからな。簡単なことなら教えてやれないこともないが、詳しいことは学園で学ぶといい。」
聞いた感じ、魔力は電気で、魔法具ありの魔法は電化製品のような感じだろうか。恐らくは、全ての人が魔力という電力を持っていて、魔法具という名の電化製品に供給することで効果を発動させるのだろう。
しかし、魔法使いは電化製品の役割をするもの抜きで、それ以上の効果を発揮することが出来る…と。
興味深いな。早くその辺も知りたいものだ。俺がどの程度使いこなせるようになるかは不明だが、これまでの世界で扱ってきた魔法と使い勝手はだいたい同じだろうから、俺も魔法使い並に使いこなせるようになるだろうか?
そういえば、今回の世界の目標の『魔法の習得』は、魔法具の効果を発動させるだけでいいのだろうか?まぁどちらにせよ魔法使いの魔法を学んでみたいし、やることは同じだが。
しばらく歩くと作業小屋が見えてきた。ブックスが中に入って行ったので、俺も後に続く。
「ほら、息子の使っていた道具があるから、それを使いな。作業服と斧の魔法具だ。お前とほぼ同じくらいの年だろうから、サイズも大丈夫だろう。」
「助かるよ。」
実は昨日ブックス達の息子の使っていた服を貸して貰っていたんだが、汚してしまいそうでヒヤヒヤしていたからこれはありがたい。
しかし、斧の魔法具…ブックスがクマに襲われたときに持っていたのも魔法具だったのか。
ちょっとイカツかったとはいえ、クマにも勝てないあたり、そこまで凄いものでもなさそうだが、木を切るには十分なのだろう。
でも俺まだ使えないんだけど…俺だけ人力?まあいい。とりあえずさっさと準備しよう。
「準備できたぞ。でも俺は…」
魔法具つかえないぞ?と言おうとしたがブックスに遮られる。
「分かってるさ、魔法だろ?使い方を教えてやるから安心しな。魔法具程度なら誰でもすぐに使えるようになるさ。それに器用なんだろ?」
「そうか、ありがとう。助かるよ。」
俺たちは早速作業小屋を出て木を伐採しに行く。
「で、どうやって使うの?」
「まずは魔法具に付与されている効果を知る必要がある。この斧だと切断だな切断だな。そして力を込めて、切れ味の良くなった斧を想像しながら斧を振ると…こんな風に簡単に切れるって訳だ。」
そういってブックスが斧を振るとスパッと木が切れ、そのまま向こう側に倒れた。結構な切れ味だな。
イメージが大事ということか。早速試してみよう。
切断…簡単に木を切るイメージ…すると突然何かを吸い取られるような感覚に襲われる。これが魔力を消費し、魔法を発動できたということなんだろう。よし早速振ってみよう。
「いくぞ~」
そういって軽く斧をふると、ブックスのときと同じように簡単に木を切り倒すことができた。
「この切れ味なら、襲ってきたクマを返り討ちにできたんじゃ?」
「この斧の効果は木限定なんだ。こんな簡単にスパスパ切れるのを誰でも持っていたら危ないだろ?」
「それもそうだな。」
というか、効果の対象の制限もできるのか。いや、ここの魔法はイメージが大事なようだし、全く別の物は単純に効果適用外なのかもしれないな。そんな風に魔法について色々考えながら木を伐採していく。
「切った木は集めなくていいのか?」
「最後に全部馬車に積んで、少し離れたところにある別の小屋で加工するんだ。今は邪魔なのを少しどかすくらいでいい。」
「了解~。」
そして二人で木をしばらく伐採し、昼頃に家に帰るのだった。
本編で説明するタイミングがなかなかないので転生と世界ついて解説。今回は世界メイン。
世界はいくつかパターンがあり、普通に現代日本に転生することもあれば、中世ヨーロッパのような場所に転生することもあります。ただ、現代日本とは言っても彼が元々いた日本と同一の世界とは限らず、歴史や文化などに違いがありますし、彼の知る人物は一人も存在しません。いわゆるパラレルワールド。
そしてその中にさらに「誰かの行動の選択」などをきっかけに分岐した世界が存在し、逆にその外には全く関連性のない世界が存在します。
そして魔法や近未来的科学の力を使えば他の世界に移動することも可能ですが、全ての世界にいけるようになることはありません。仮にバーミリオンが世界を移動する手段を手に入れたとしても、元の世界や思い入れのある世界に戻ることはまず不可能です。
これはそれぞれの世界が、次元という名のさらに大きな括りでまとめられ、その次元と次元の間には壁と大きな空間があるためです。それを超えることが出来るのは現状、バーミリオンに起きている、不思議パワーによる転生だけです。それと、次元を超えた別の世界が他の世界と共通点がないかというとそんなこともなく、普通にそこにはそこで現代日本のある世界が存在します。全ての次元の中身はある程度似通っていますが、移動ができないだけです。
簡単に例えるならば、次元=木、世界=枝、世界の中のパラレルワールド=りんご です。
同じ木であれば、別の枝に飛び乗ったり、他のリンゴを食べることも可能ですが、木から木へと移るには単純に力不足なのです。
次の話は転生メインで解説します。