初めてなこと
リハビリ作品なので暖かい目でおなしゃす
コントローラーの点検が終わり僕はもう一度寝室に向かった。
僕は3回寝室の扉をノックしたが応答は無い。
(まぁ来てまだ間もないし警戒でもしてるのかな)
そう僕は理解し寝室の扉を開けた。
寝室を開けると妙に整理された空間に少し違和感を覚えてしまった。
僕は超がつく程整理整頓が苦手だ、それでも現状を維持するためにある程度の掃除はするが思うように綺麗にならない。
しかし今この寝室はホコリひとつも見つからない、周りを警戒しながら部屋の照明を付けると
「……………」
壁にもたれ掛かり毛布で大事なところをガードしながら僕に疑いの眼差しを静かに、そして鋭い目付きで向けていた。
よく見ると顔には恐怖を感じているのか少し涙目でありガタガタと震えている。
僕だってもう高校生だ、小さな子を落ち着かせることなど容易い!
「だ、大丈夫ですか?」
「………………」
「あ、あの〜?……!?」
「あなたは……誰……」
彼女はとても冷たい声でそう聞いてきた。
視線もとても冷たく明らか信用等微塵もされてないことが容易に想像がつく。
でもこういう展開には慣れてはいないがアニメやゲームで沢山経験を積んできたから僕にだって……
「僕は猿飛アリス、普通の高校生だよ」
「……」
「……あはは……ごめんねこんな所で寝かしてしまって……」
「……」
超がつくほど気まずい。
まず元々女性経験なしに近い僕にこの手の対処は難易度が高すぎるよ!
スパ○ボFかよ!
「ま、まぁ怪我が治ったら出ていってもいいからね?」
「………」
「一応慈善活動みたいな感じだから礼はいらないから」
「………」
会話のキャッチボールができてない……ボールを自分で回収してるキャッチボールな感じ。
「………」
ついに僕も会話のネタが切れ笑顔を絶やさず後ずさりして良い感じに部屋を出ようとした時
「……ありがとう……ございます……」
「!?今……え!」
蚊の鳴くような声だったが僕の耳にはしっかりと聞こえていた。
彼女の顔を見ると少し表情が柔らかくなったとらいえまだまだ顔は無表情に近い笑顔を見せてくれた。
その顔を見た時僕の心は彼女に惹かれてしまったのか思わず見入ってしまっていた。
「ありがとうね」
僕はそう返答すると彼女はまた先程のように警戒をしながら僕を今にも獲物を仕留めるかのような瞳で見つめる。
(まぁあまり長居し続けると彼女にも迷惑だし一旦引くとしようかな)
ひとまず僕は寝室から出ていった。何はともあれ彼女が少し僕に信用を寄せてくれたことが進歩だ。
(地道に1歩ずつ彼女の信用を積み上げていくしかないのかな……)
そんな事を思いながら僕はリビングでゲームを始めることにした。
……………………………………………………………………
「あ、もう夜か……」
今日はいつもより時が進むのが早い。
まぁ十中八九彼女との出会いなのは目に見えているが。
「もう夜も近いし今日は昨日の残り物でも食べようかな」
そして僕は冷蔵庫からタッパーを3つ取り出した。
日頃から料理を作るのが面倒だが外食はお金がかかるため休日に作り置きを作ったりしているのだ。
小皿を用意してパックのご飯をレンジでチンさせ晩御飯の出来上がり。
そして今日はいつもと違う。
今家にいる女の子のためもう1セット晩御飯を作り上げ僕は寝室へと向かった。
……………………………………………………………
部屋の前に立ったのは良いが果たしてこのご飯を食べてくれるのかが僕には分からない。
一応アレルギーになりそうな物は幸運にも今回の作り置きにはなかったが角が生えていたりと確定で人間では無い。
もしかするとその種族にはこの食べ物は毒かもしれない。
そんな不安を抱えながらも僕は寝室の扉をゆっくりと開けた。
扉を開けると以外にもベッドからは出ていた。
彼女は僕の家で唯一の勉強する時に使っている椅子に座っていた。
「あ、起きてたんだ」
「!?」
彼女は僕の存在に驚いたのか高速で体ごと勢いよく振り向いたが……その椅子は座面が回るため彼女の体は体を振り向かせた勢いでグルンと音を立てるくらい高速で一回転してしまった。
「???????」
彼女はまだ何が何だかわかってないのかポカーンとしている。
「…………………!?」
だがついに原理に気がついたのか彼女は再び回り始めた。
今度は自ら地面を良いタイミングで蹴り回転の勢いを上げているため完全に椅子を遊具として楽しんでいる。
「あはは……楽しそうでなにより……」
時々見える彼女の顔は今までで一番の笑顔だ。
どうやら中身は子供らしい。
…………………………………………………………
回り終えて満足している彼女に晩御飯を机の上に置いた。
「一応これご飯だよ」
彼女はご飯を見ると目を輝かしながらじっと見つめていたが一向に食べる気配がない。
「……食べないの?」
「……」
彼女は答えない、まだどうやら疑惑は晴れてないらしい。
そのため僕は予め考えておいた1つの作戦を決行することにした。
………………………………………………………
「じゃあ僕もここで食べるよ」
僕は自分の料理を盆に乗せ寝室で食べることにした。
座るところがないので少しお行儀が悪いが地面に座りながら食べることにした。
どうしてこのようなことをするのかと言うと僕が毒味をすることにより彼女はこのご飯は安全だと思わせるためだ。
「じゃ。冷めちゃう前に食べようね、いただきます」
僕はまず作り置きで作って置いたきんぴらを1口、その後ご飯を1口と、食べていく。
(食べるのか……食べないのか)
僕はご飯を食べながら視線を上にやり彼女の方へと向けた。
しかし彼女はまだ食べていない。
ずっとどこか虚空を見つめているばかりだ。
(これはかなり難しいなぁ)
そう思いどうやって食べさせるかで途方に暮れていると彼女が唐突に口を開けた。
「……ねぇ……?」
「!?……なに?」
「なんで私なんかにここまでしてくれるの?」
彼女の視線は何も無い壁を向きながらだが話しかけてくれた。
「……なんでだろうね……僕にもよく分からない」
「………」
話しかけてくれたことの方が嬉しかったため何も考えていなかった僕は返答としては0点のような回答をしてしまった。
だが彼女は特に気に留めることなくまた虚ろな目で1人虚空を無言で見続ける。
しかしその虚ろな目に少し、ほんの少しだけだが目に輝きが灯されたように僕は見えた。
そんな彼女に見とれていると彼女はまた口を開ける。
「私……エル……」
「……エル……」
彼女は僕の方へ振り向き静かに僕をじっと見つめた。
あまり女の子にじっと見つめられたことは無いので心臓の音がドラムの音並みにうるさい。
だが彼女は更に顔を近づけてついに口を開けた。
「……ありがとう……私に優しくしてくれて……嬉しい……こんなの……初めて……」
その瞳はまだ輝きが少ないがでも初対面の頃よりかは光が増えているように見える。
少し照れ隠しなのか手を遊ばせながら僕を見つめた。
(ずるいなぁ〜こんなことされると……)
ブックマーク、ポイント等して欲しいなぁ