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お待たせしました。再開します

 十月に切り替わって最初の日。体育祭の当日である。

 台風の心配もあったが、それも先週で過ぎ去ったようで、早朝から文句無しの快晴だった。龍一が雪に聞く。

「雪、準備できた?」

「ええ。あとは……」

 と、言いかけたところで、チャイムが鳴らされる。一通りの確認をしたところで龍一がドアを開けると、蛍が入ってきた。

「おはよう。お、二人とも準備万端なようね」

 さくら荘一〇四号室内は、三人ともジャージ姿で、三人分のお弁当が用意されていた。


 今日に備えて、昨日は三人で、お弁当の準備をしていた。このような生活下なので、どうせなら皆まとめて用意した方が効率的だし、面白そうという話になったのである。とはいえ、これから食品を何種類も作るのは大変なので、唐揚げと卵焼きのみを大量に作ることにした。

 調理器具は、すでに一通り揃っている状態になっており、その熟練度が二週間前より格段に上がっていることを物語っている。

 お弁当の定番ということで、唐揚げを選択したが、三人とも作ったことがなかったので、ネットのレシピを参考にした。鶏もも肉を適当に切り、ニンニクと生姜をおろし、しょう油とお酒(調理のためと言って、森野に分けてもらった)を入れて、揉み込む。そして、片栗粉を絡めて衣を作った。

 レシピには、肉に付く水分を極力なくすために吸水シートで取る、鶏皮がサクッとした食感になるので身を皮で包む、といった技が載っていたが、応用技だったので省略した。

 いよいよ、油で揚げる。最初、油が跳ねることを考え、龍一だけで行っていたが、蛍もやりたいと言ってきて、次第に雪も続いたので、何度も交代して行った。実際に跳ね上げて大袈裟に騒ぐ場面もあったが、それらも含めた一連の工程が賑やかで楽しかった。


 そうやって完成した唐揚げと卵焼き、そしてトマリギで購入したOTLサンドが、本日の体育祭での昼食となるメニューとなっていた。そしてここに、もう一品が加わる。

「龍一、これ。母さんから」

「これは、ポテトサラダ?」

 蛍が差し出した三つのタッパーを、龍一が受け取る。

 昨日の唐揚げと卵焼きは、分量が足りなくなることを懸念して、多めに調理しようと決めていた。だが、予想以上に多くなり、とても三人では食べきれない量となってしまった。そこで、森野宅と沢渡家に、お裾分けをと考え、蛍に唐揚げと卵焼きを自宅に持ち帰ってもらったのだった。

「昨日の唐揚げのお返しだってさ。お弁当のメニューを教えたら、野菜不足だって言って、作ってくれたの。まったく、余計なことよね」

「そんなことないさ、ありがたいよ。今度、感謝を伝えないとね」

 蛍も内心では嬉しく、龍一の言う通り、お礼を伝えようと思った。いつのまにか両家の交流というものが出来上がったことも兼ねて。

 こういったやり取りも、沢渡家の両親そして親子の改善にも繋がってくれるのかなと龍一は考えたが、今日はこの問題には触れず、体育祭を楽しむことが皆にとって重要とみなした。

「よし、これで本当に準備ができたね。じゃあ、行こうか」

 龍一の掛け声で皆が出発する。今日は体操服での登校なので、身軽で清清しい。軽やかな歩みをする三人が一緒にいる姿は、すでに日常であった。


(続)

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