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悪ガキ四人組

 北海道札幌市にある小さな中華料理店。

 赤いカウンターに丸椅子。どこにでもある個人の店だ。

 その店内に鍋を振る音が響く。店内に取り付けてあるテレビには、北海道出身の人気バンドのライブ映像が流れていた。


「スゴイなこのバンドは!」昼食を食べに来ている客は40代で、その部下であろう30代のサラリーマンの二人がテレビを観ながら話をしていた。


「バンド活動って、いくつになっても青春そのものだからね〜」と店主が相づちをうつ。

「おっ、マスター、音楽好きかい?」

 40代の客は昼間なのに仕事は大丈夫なのだろうかビールを飲みご機嫌な様子で、店主と話始めた。


「今でこそこんななりですけど、昔はバンドマンだったんですよ!レバニラ、お待ち!」

「ほんとかい!?どんなバンドだったんだ?」

 男性客は割り箸を取り出し、小皿に取り分け、いい匂いがするレバニラを一口。美味い!と舌鼓を打っているのだが、店主の話しも気にかかるので、テーブルからカウンター席に移動をしての食事となった。


「話せば長くなりますがね、」

「いいよ、いいよ、俺等、時間だけはたっぷりあるんだから!」

「あれは、高1のころの話なんですけどね…」





****

***

**





「クォらー!またお前らか!」

 北高教諭、新井が逃げる生徒を捕まえるべく竹刀を持って走ってくる。

「やべっ!新井だ!」

 何をやらかしたのか、慌てて学校の塀を乗り越えようとする4人がいた。

 名前をリーダーの涼介・お調子者の雅也・巨漢の浩二・美男子の透。


「待たんかー!今日こそは、みっちりと指導してやる!」


 学校の塀は乗り越えられそうなのだが中途半端な高さのせいで、あともうちょっとがなかなか乗り越えられない。

 4人組中3人が塀の上までよじ登ることができたが、一人だけが上手く登れない。


「浩二!早く!」

「俺の運動神経では、無理だって!」


 3人で浩二の腕を引っ張るが、185センチの巨漢は、そう簡単には持ち上がらない…


「つ、捕まえた〜♡」

 新井がニヤっと浩二の学ランを引っ張る。


「ヤメロ!」涼介が壁から飛び降り新井の腹へ「ヤァー!」タックルを決めるが、新井はビクともしない。

 さすがに柔道部の顧問。簡単に涼介も地面に叩きつけられた。





「さて、今日はどんな言い訳、聞かせてくれるんだ?」

 4人組は柔道部の畳の上に正座をしている。学ランはヨロヨロ、顔はパンパンである。


「実は、うちのお母さんが急病で…」と涼介が言った瞬間に空を舞った。

「俺は昨日の夜、お前の母ちゃんの店で飲んでたんだ!ピンピンしとったわ!もっと上手い嘘つけ!」

「あっ、涼介の飼っている子犬のチャッピーがオナカを空かせてるんです!」雅也が言ったと同時に、また涼介が空を舞う。

「も、もうやめて…」涼介の声を聞いた雅也が、これは面白いと、次の理由を考える。

「あっ、うちの店のあんかけやきそばのそばがないんです!」涼介が空を舞った…。






「痛てててて…新井の野郎、手加減っての知らんのか?」

 何度も畳に投げつけられ起き上がれない涼介に雅也が

「ホントだよね!もう少し、優しくしてくれてもいいもんだよね!」

「途中から気づいてたぞ雅也!お前、途中から楽しんでたじゃねーか!」

「アリャ、バレたか。」雅也が舌を出す。


「まったく…お前らは大丈夫か?」

「お前に比べりゃ無傷だわ…」透と浩二がうなずく。


 涼介、雅也、透、浩二、この4人。

 札幌屈指の「悪ガキ4人組」で、知らない人を探すのが難しいぐらいに有名な高校1年生だ。


 ある時は同じ高校の人間が、別の高校生に殴られたと聞き、その高校自体を壊滅状態寸前まで殴り飛ばし、

 そうかと思えば、キャバクラ店のお姉さんに鼻の下を伸ばしていたり、パチンコ屋で当ててる所を警察官に補導…この時ばかりは、フィーバーが止まるまで、待ってくださいとお願いしていたらしい。などなど、補導の数は数え切れず…警察官も「また、お前らか。」と顔を覚えるほど…その度に新井先生が頭をさげる。


 そんな4人組にも怖い相手が3人いる…


 ひとりは高校教諭の新井。身元引受人なので頭が上がらない。

 もうひとりは、透の父親。大工の棟梁である。以前に警察に迎えに来てもらった時に、警察官の前では、ニコニコとしていたが、警察署を出た途端にバットを持って追いかけ回されたことがある。それ以来、保護者は新井先生にしてる。


 もうひとりは、意外かもしれないが「女の子」。

 浩二の妹で響子。中学3年生の生徒会長だ。


 なぜ響子はダメなのかと言うと、この4人組は悪さはしても、老人、親、立場の弱い人、女子は決して殴らないとの「プライド」があり、響子は響子で、痛い所をズバズバと言うもんだから、言い返せないのだ。


 そんな「どうしようもない4人組」だが、街の人の人気は高い。


 目上の人間、年上の人には敬意を払うからだ。

 お年寄りが横断歩道を渡ろうとすると、ひとりが荷物を持ち、もうひとりが抱えて歩く、すすきのの繁華街でサラリーマンが高校生にカツアゲにあったと聞けば、追いかけまわして取り返す…当然相手は半殺しではあるが…


 それでまた補導されて新井が迎えにくる。その繰り返し。

 さて、新井のストレス発散の格好の餌食となった4人組は、教室の中でグッタリしていた。






**

***

****





「ほー!そんな悪ガキだったんですか!?」

「いやいや、これはほんの一部分でね〜」

「痛かったけど、楽しかったな〜」


 店主はテレビを観ながら青春時代に思いを寄せていた。


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