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後編

 それから今までいた使用人を見かけなくなって、知らない使用人が部屋へ食事を持ってくるようになった。

 今までの使用人に話しかけようなんて思ったことはなかったのに、知らない使用人に私は話しかけた。


「ダルトェイが結婚するのを知っている?」

「・・・はい」

 返事が来た。天罰が落ちるかも知れないけどお父様以外の人と初めて話をした。


「プレゼントを贈りたいの。私の代わりにプレゼントを送ってくれるかしら?」

「どのようなものをお贈りになりたいのですか?」

「私はよく解らないからあなたが選んで。可愛いものがいいわ」


「でしたらダルトェイ様よりご結婚される女性に贈る方がいいかもしれません」

「だったらそうして。結婚?まで毎日送って」

「解りました」



「ダルトェイ様が結婚する女性に同じものを送りました」

 新しい使用人はそう言って色々な小物を毎日私に差し出す。

 渡される小物の美しさにうっとりとする。


 部屋にあるはずのないものが部屋にあるのでお父様に直ぐに気づかれてしまった。

 お父様は怒り狂って私を初めて殴った。蹴られた。

 それは天罰よりも恐ろしいものだった。


 お父様の怒りに私は怯えた。

 強くお腹を蹴られると蹴られた痛みだけではない痛みを感じた。


 私の異変を感じてお父様は私に声をかける。

 お腹が強く痛くなったり痛みがなくなったりを繰り返した。

 お腹の中から何かが出てくる気がして、私はトイレを頑張る時のようにお腹に力を入れた。


 何かがお腹から出ていって、お父様が「私の子がっ!!」と叫んでいた。

 そのまま意識を失い目覚めた時には桶の中に私が産んだ子供が入れられていた。

 これが子供?


 新しい使用人が「明日ダルトェイ様の結婚式ですが行けなくなりましたね」と言った。

「どうして?」

「体の調子も悪いでしょう?」

「ダルトェイの結婚式?は絶対見に行くわ。連れて行ってちょうだい」


 使用人は戸惑っているように見えたけれど「お父様とは約束しているもの!!」と言うと最後には約束してくれた。

 そして私が色々聞くと、使用人はいろんなことを教えてくれた。


 結婚式に異議を申し立てることが出来ることや、ダルトェイが好きならば伝えてもいいことなどを教えてくれた。

「本当にそんなことはできませんけどね」と言っていたけれど私はいろんなことを知ってしまった。


 使用人は「平民が貴族が」と他にも色々言っていたけれど、ダルトェイを私のものに出来るのだと初めて知った。

 お父様は私が気を失ってから顔を見せない。

 今しかないと思った。


 使用人が私の衣装を持ってきてくれてそれを着せてもらう。

 少しふらふらしたけれど、ダルトェイを私のものに出来るのだ。

 私は胸を弾ませて馬車に乗り込み降ろされた場所でダルトェイを探した。


 ダルトェイを見つけて私は直ぐに声を上げた。

「この結婚に反対いたします!!」

 ダルトェイが私を見る。

 持ってきた桶の中の私の子供をダルトェイの横に並んでいる女の子にプレゼントした。

 お父様があれ程望んでいた子供だもの。

 きっと喜んでくれる。

 嬉しくなって笑いが漏れた。


 沢山の悲鳴が聞こえる。

 ダルトェイの視線は私に向いている。

 私はダルトェイに飛びつこうとして阻まれる。

 やっぱり神様はダルトェイに触れることは許してくれないのかしら?


 でもダルトェイが欲しいのよ!!

 ダルトェイにもっと近づこうと足を踏み出すとたくさんの男の人に押さえつけられた。

 


 知らない薄暗い場所に連れて行かれ色んな人にいろんなことを聞かれる。

 私の名前はルルーシェだと伝えることはできたけど、お父様の名前も屋敷の場所も答えられなかった。


 聞かれることの意味もよく解らない。

 誰かがダルトェイと結婚する女、ユリアナというらしい。二人の結婚はできなくなるだろうと言った。

 私は嬉しくて声を上げて笑った。


 誰かがプレゼントした子供は誰の子だと聞くので嘘をついてダルトェイの子だと答えた。

 たくさんの人が来ていろんな質問をしてくる。

 誰かから聞いたことを繰り返すように相手に伝える。


「これでダルトェイとあの女は結婚できないでしょう?ダルトェイは私のものよ」

 そんな風に言ってみるとみんな顔をひきつらせた。


 沢山の人が来るのにお父様だけが来てくれない。

 私に聞くことが無くなったのか、薄暗くて汚い部屋から放り出された。


 そこから私はどうすればいいのか解らなくなった。

 オロオロとしていると、色々教えてくれた使用人が来て私の手を引っ張っていく。


 かなり歩かされたところに馬車が止まっていて、乗るように言われ使用人と一緒に馬車に乗ると屋敷に帰り着いた。


 お腹が空いたと伝えると直ぐに食事が用意され、今まで落ちてこなかった天罰が落とされた。

 今まではお尻と足の裏だけだったのに、顔まで酷く痛む。

 痛まない場所のほうが少なくて、意識を取り戻しても痛みでまた意識を失うことを繰り返した。


 その傷が癒えてもお父様は会いに来てくれない。

 寂しくて泣いていてもお父様は来てくれなかった。


 

 季節がいくつか変わってもお父様は来てくれなかった。

 使用人に「お父様を呼んで」と伝えても、会いに来てくれない。

 だからダルトェイに会いに行くことにした。


 使用人にダルトェイの居場所を探すようにお願いして、また馬車に乗ってダルトェイを眺める。

 お父様が居ないから首に枷は掛けられていない。

 馬車の扉も開いた。


 私は馬車から飛び出してダルトェイの元に駆け寄る。

 やはりダルトェイに触れることはできない。

 何度試しても誰かに阻まれてしまうのだ。


 ダルトェイが「二度と近づかせないと約束したのにお前の両親は何をしているんだ」と言っていたけれど両親が何か解らなかった。


 何度も天罰が落ちて私は起き上がれなくなった。

 天罰の傷が治ってもベッドから出ることができなくなり、それからも天罰は落ち続けた。


 そして私はダルトェイを見に行くことも、思うこともできなくなった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ルルーシェが妊娠して子供を産むことを待ち遠しく思っていたら、どこから知識をつけたのかダルトェイの結婚祝いをしたいと言い出した。

 頭に血が上ってルルーシェに暴力を働くなどという愚行を行ってしまい、ルルーシェはまだ育っていない子供を産んだ。


 それから暫く私は使い物にならなくなった。

 何も手につかずぼんやりとしていると、父が私のところへとやってきてルルーシェがダルトェイの結婚式に乗り込んだと聞かされた。


 ルルーシェのしたことに私は恐れをなした。

 私達の身元を知られるわけにいかないのでルルーシェを迎えに行くことはできなかった。


 今考えると迎えに行くべきではなかった。

 放っておけば屋敷に還ることもできずにのたれ死んでいたのに、ルルーシェにもう一度子供を産ませることに執着して使用人に迎えに行かせてしまった。


 その後を付けられ、私の身元がバレてしまった。

 いや、ダルトェイが私の名を告げていたらしいから遅かれ早かれバレていたのだろう。


 私と妻が矢面に立つことになり、慰謝料として大金を支払った。

 妻は「なぜわたくしが母親だと名乗らなければならないのです?」と怒っていたが、父が説得してくれて「不本意です」と言いながら付き合ってくれた。


 ルルーシェを二度とダルトェイの前に姿を現せないと約束して手打ちとなった。


 それなのに私がルルーシェの元に行かないことをいいことに、ルルーシェは屋敷を抜け出してダルトェイの元へと行くことを覚えてしまった。

 

 もう天罰を与えてもルルーシェを止めることは出来なかった。

 天罰の最中にルルーシェの中に注いでいたが、ルルーシェが大きくなりすぎていて食指もあまり動かなくなっていた。


 天罰を与えすぎてルルーシェは死んでしまった。

 溜息が一つこぼれたが、まぁいいかと思った。

 育ちすぎたルルーシェは可愛くなかったし。


 父が新しい少女を連れてきてくれたから。

 この子に私の子を産ませようと私は頑張った。

 両親を恋しがる少女を(なだ)めなが少女の狭い中に入る。


 今思えばルルーシェはもう狭くはなかったと思う。

 この少女は初潮が早く妊娠も早かった。

 けれど私の子は育つ前に流れてしまった。


 二度ほど繰り返すとこの少女に飽きてしまった。

 父に処分を頼むと暫くは用意できないぞと言われてしまった。


 くさった心を町で遊び歩いて晴らしていた時、ダルトェイとユリアナが男の子と可愛らしい女の子を連れて歩いていた。


 私はダルトェイが連れている可愛い女の子が欲しくなった。

 ダルトェイとユリアナによく似た美しい幼子。

 私はルルーシェを失ったのだからダルトェイも子供を失う辛さを知ればいい。

 気づかれないように後をつけて周りにいる大人の目が緩むときを待った。



 半年ほど経った時、お茶会に子連れで参加していて子供は子供だけで遊んでいた。

 親達の頭上に蜂が現れてお茶会の場が騒然とした。

 大人の目が子供達から外れた。

 私はダルトェイとユリアナの子供を連れ去った。


 

 その日から大騒ぎになった。

 貴族の子供が一人いなくなったのだ。

 ダルトェイの子供はマリアーネだかマリアネリアだか言っていたが、お前の名前はルルーシェだと教え込んだ。


 当然服を着せることなどしない。

 裸を恥ずかしがる仕草にグッと来た。

 私の子のルルーシェは使用人で失敗したのだと思う。

 だからダルトェイのルルーシェには使用人も近づけない。


 父に呼び出されて「約束を破ったか?」と聞かれた。

 私は正直に謝り父にすべてを話す。

 父に決して子供を外に出してはいけないと約束させられ、私も望んでいることなので私は頷いた。


 

 幼くても貴族の子だ。ダルトェイの子は既に最低限のマナーは知っていた。

 私好みに修正していくだけだ。

 体を撫でると初めは嫌がっていたが、嫌がると暫く一人ぼっちになることを教えていくと嫌がらなくなった。


 

 私の子のルルーシェより私に依存する子が出来上がった。

 私が部屋に行くと私の膝の上に乗り抱きつく。

 寂しかったと言って泣いて私に縋り付く。


「もう少し長く一緒にいてあげられるようになるんだけど、頑張れるかい?」

 そう聞くと「頑張るから一人にしないで」と言った。


 今まで一番小さい子に指を挿し入れた。

 まずは小指からにした。

 処女膜が破れたより出血が多い。

 今までの子にもそうしたようにハンカチに拭き取り、後で名前を書いて額に入れて飾らなければならない。


 ダルトェイのルルーシェは体が馴染むのに時間がかかった。

 一年の時を掛けてようやく私はダルトェイのルルーシェの狭い中に入ることが出来た。


 まぁ、泣き叫んでいたけれど「私と会えなくなってもいいのかい?」と尋ねると叫ぶのは止めてくれたのでそのまま続けた。



 それから何度も季節は巡り、ダルトェイのルルーシェは初潮を迎えた。

 暫くは妊娠しないように気をつけた。

 流産して体を傷つけるのが許せなかったのだ。


 ダルトェイのルルーシェは本当に理想的な子だった。

 両親のことは忘れてしまったのか、私以外を知らないので誰かを恋しがることがない。

 この子を大きくさせない方法は無いものかと思案するほどだった。



 ダルトェイのルルーシェが育ちすぎて興味を持てなくなってきた。

 だから妊娠させることにした。


 妊娠させるために腹の中に排出するとあっさりと妊娠した。

 私は腹の子に語りかけ、女の子でありますようにと神に祈った。


 

 ダルトェイのルルーシェが妊娠四ヶ月くらいになった頃、いつもは呼びつけるだけの父が私が住む離邸へとやってきた。

 父は腰に剣を携えていた。珍しいことがあるものだ。


「父上、こちらにこられるなんて珍しいですね」 

 執務室のソファーに対面で座り用意されたお茶を飲む。

 半分ほど飲んだ頃、意識が混濁し始める。


「貴族の子供には手を出さないと約束したのに子供まで作ったらしいな。もうお前を好きにさせておけなくなった。ダルトェイ達は未だに子供のことをあきらめていない。ダルトェイの子供と一緒にゆっくりするといい」


 私の首と胴体が離れるのを混濁する意識の中見て全てが終わった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 自分の子を手に掛けた後、ダルトェイの子の元へと行き甘いお菓子を差し出す。

 最初は私に怯えていたけれど、甘いお菓子がたくさんあることに喜んで私の目の前で食べる。


 三つほど食べた時コポリと血を吐き出す。

 毒の効き目はかなり強かった。

 直ぐに息をしなくなった。


 ダルトェイが何度か私の元を訪れてくる。

 ダルトェイの子供を知らないかと。

 息子に会わせてくれと詰め寄ってくる。

 軽くあしらっていたが、段々とあしらえなくなってきていた。


 息子はダルトェイの娘が誘拐された時、平民の使用人に見られていたのだ。

 平民の言う事など相手にはされないが、息子の子供のルルーシェの事があった。


 誰もが息子が関わっていると思うようになっていった。

 可愛い息子が幼女にしか興味がないと言ってきた時に処分するべきだったのだ。

 だが貴族にはいろんな趣味の人間がいる。


 平民で我慢している間は誰も何も言ったりしないはずだった。

 それなのに約束を破って貴族の幼子に手を出してしまった。


 直ぐに手を下せば良かった。

 息子の妻が産んだ私の子、跡取りはもういるのだから、息子のことは諦めるべきだった。

 ここまで育ったダルトェイの娘を野に放つことももう出来ない。



 息子とダルトェイの娘の始末をした半年後に、息子の葬儀をごく少数だけで執り行った。

 伝染る病気だと届け出た。

 空の棺を埋める下には息子と息子が手を出してきた少女達が埋まっている。

 空の棺を墓穴に納めて土を被せた。



 息子が使用していた離邸も取り壊す。

 そうして私は息子のしでかしたことを隠蔽した。

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― 新着の感想 ―
[一言] たくさんのお話を、ありがとうございます。 酷いですと前置きしていただき、承知のうえ拝読させてもらいました。 貴族の横暴があたりまえだった時代、こんなふうに子供が犠牲になり、知られないま…
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