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#魕ガ棲ム島  作者: YasuAki
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第二章 其ノ肆拾捌

 ずっと動き続けていたためか、急に眠気が襲ってきた。状況が状況なだけに、ここで休むわけもいかないと思ったものの、身体は正直だ。

 円香からも平気だから少し休めと説得され、宿の入口のソファーで軽く仮眠をとった。

 そして眠りにつこうと思ったその時、耳元で円香が囁いた。

「ここから先は、恭平の活躍にかかっている」


 嫌な夢を見た。

 身体中が痛い。

 それにほとんど寝た気もしなかった。

 佐々木に揺さぶられソファーから起き上がると、食事の用意ができたと言われ、いつもの大広間に向かった。

 廊下を進み、一瞬立ち止まる。

 そして、壁に掛かっている絵を見る。

 円香に言われたことが頭の中に蘇った。


——これが二人の祖先ねえ。


 大きく欠伸をしながら頭の掻き、そのまま右に折れると大広間の襖を開けた。

 テーブルの上には既に食事が用意されていて、恭平はその前に腰を落とした。

 箸を取り、手を合わせ「いただきます」と小さく呟き味噌汁を啜る。

 今日の味噌汁はワカメとネギと豆腐。

 焼き魚は本土でも食べられる鮭の切り身だ。

 後は漬物に目玉焼きと納豆。

 質素なものだが、ここは本土と違ってなんでもあるわけではない。

 天候によっては船もヘリコプターも到着出来ないため、物流が止まることもしばしばある。

 納豆の蓋を開けて醤油を刺し、こねこねと箸で軽く混ぜ、そのままご飯の上にぽとり。

 それを切るようにしてご飯の中に植え込んでいく。

 適当に混ざったところで一口。

 納豆と醤油の香ばしい香りが口の中に広がる。

 恭平はゆっくりとそれを嚥下すると、再び味噌汁を啜った。

 小さな幸福感に浸っていると、大広間の隣の台所から片付けを終えた佐々木が入ってきた。


「恭平、もうすぐ円香が迎えに来るそうだ」


 壁にかかっている時計を見る。時刻は六時になろうとしていた。


——本当になんでこんな夕方に。


 当たり前だが、昼間の方が見通しが良い。

 わざわざ暗くなってから作戦を実行する理由が恭平にはわからなかった。

 食事を食べ終え、空いた食器を台所の流しに置いて水に浸ける。

 佐々木に「後はやっておくから」と言われ、そのままお風呂場に向かい、備え付けの洗面台の前で歯を磨き始めた。

 ふと、鏡に写った自分の姿を見てビクッと肩が踊った。

 髪の毛はボサボサと色んな方向に跳ねている。

 睡眠不足のせいで目の下のクマが酷い。

 そして、首筋には薫に噛まれた傷が隆起していて、まるで消波ブロックに住み着いたフジツボのようだった。

 恐る恐る触れてみる。

 チクリと痛みが走った。

 血は固まっているとはいえ、何度か吸われたせいもあるのだろう。

 恭平はバシャバシャと顔を洗うと、洗面台の引き出しからタオルを取って顔を拭った。

 そしてタオルを横に置いてある洗濯カゴに投げ入れる。

 ここにいる間は二階の壱番の部屋を借りていた。

 部屋に戻って着替えを済ませ、階段をとんとんと小気味よく降りていると、玄関がカラカラと開く音が聞こえた。

 恭平が玄関に向かうと、ちょうど円香が靴を脱ごうと上がり框に腰を落としていた。

 どこかの軍人のような迷彩服に身を包み、その横にはとてつもない量の荷物が入ったボストンバッグが置かれている。


「円香さん、この荷物は?」


「あ、ああ。H&KのMP5A5と弾薬に恭平の銃が入ってる」


 靴の紐を緩めながら円香はさらりと言った。


「H&K? って、銃が入ってるのかよ! 普通に捕まるだろそれ!」


「まぁ、普通ならね」


 靴を脱ぎ終えた円香は笑顔で答えた。

 そして、そのままボストンバッグをかつぎ上げると、ズカズカと中に入っていく。

 恭平は円香の後を慌てて追った。

 円香はテーブルにどかっと荷物を置くと、ソファーに深く腰を落とした。


「さてと、準備しようかね」


 そう言って、ボストンバッグのジップを開ける。

 中から出てきたのは——MP5。短機関銃だ。

 そして円香はそれを慣れた手つきでカチャカチャと組み立てていた。

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