第二章 其ノ肆拾漆
「ところで、その源家って何?」
薫と円香さんが血縁関係であることはわかった。
しかし、二人が騒ぐ源家というものが全くもってわからない。
「ああ、『源家』は八丈島の元盟主だよ。源為朝の子孫で、今は伊豆諸島の巫業の管理を任されてる家系でもある」
「源為朝って、歴史に出てくるあの武将?」
佐々木の説明に恭平は驚いた。
円香や薫が教科書の上でしか知らない偉人の子孫という事実。
「そうさ。それと——鬼の管理者でもある」
そして今度は二人とも驚き円香を見た。
「それも初耳だ」
「これは秘密にしてたからね。頼まれても教えられなかったさ」
「なるほど——」
再び佐々木と円香の間の空気が重くなる。
すると、黒猫が「にゃー」と一言鳴き、カリカリと扉を掻いた。
「使い魔のジジ君が外に行きたいようだ」
そう言って円香は立ち上がり、黒猫と一緒に外に出て行った。
「まったく」
円香の後ろ姿を黙って見守っていた佐々木は、彼女が外に出るやいなや大きくため息を吐いた。
「ところで、叔父さんも円香さんのことで知らないことあったんだね」
「あいつは昔っからそうなんだ。秘密にしてたことがバレても悪びれもしない」
「いや、うん……なんというか、そうなんだ」
——大変仲がよろしいようで……
小さいコミニティーの幼馴染とは恐るべし。
「恭平はどうするんだ? 円香を手伝うのか?」
「手伝うも何も最初からそのつもりだったし」
基子を助けることに変わりはない。
佐々木は「そうか」と小さく呟いた。
その声音はどこか寂しそうだった。
「叔父さんだって、手伝ってくれるんでしょ?」
先程、佐々木は円香に手伝うことを強要されていた。
しかし、実際に本人はどこまで前向きなのだろうか。
「いや、それはだな、村の意見もあるし、一概に出来るとは言え——」
カチャリとドアが静かに開いた。
二人ともそちらに目を向ける。
「「ひっ!」」
少しだけ開いたドアの隙間から、円香が佐々木を睨んでいた。
悲鳴をあげた佐々木は口をつぐみ固まっている。
「佐々木、手伝ってくれるよね」
聞いたことのない甘い声で、佐々木に問う円香。
蛇に睨まれた蛙とはこのことか。
佐々木は黙ったままこくんと頷いた。
「よし!」と嬉しそうに言って、円香は部屋に入ってきた。
後ろ手で扉を閉め、先程座っていたパイプ椅子に腰を落とす。
そして、再び某有名アニメの司令官のポーズをとり言った。
「さあ、作戦会議の続きをしよう」




