表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
#魕ガ棲ム島  作者: YasuAki
80/102

第二章 其ノ参拾玖

「なんだ、恭平もいたのか」


 そう言ってひょっこり顔を出したのは佐々木だった。

 手には猟銃を抱えている。


「えっ? 叔父さん?」


 なぜ彼がここにいるのか。

 困惑した恭平は思わず彼女を抱き寄せた。


「ところで恭平。そいつは死んだのか?」


「えっ? 死んだって……一体どう言うことだよ!」


 この状況を見て、感情のない言葉を投げかける佐々木。呆気にとられるも、段々と怒りが込み上げてきた。わなわなと肩が震える。


「どうもこうもないんだよ!」


 しかし、先に佐々木の方が声を荒げた。突然のことにびくっとたじろぐ。


「そいつがなにしたかわかってるのか? 村人を殺して回ってたんだぞ!」


「村人を?」


 事切れた彼女を見つめる。

 確かに基子は薫でもある。

 しかし、村人を殺して回っていたのは恐らく薫のほうだ。

 ついさっきまで楽しそうにはしゃいでいた基子ではない。


「だからって——だからって殺していいわけないだろ!」


 今度は恭平が咆哮した。

 キッときつく佐々木を睨みつける。


「い、いや、そうだが、そのまま放っておけるわけもないだろ」


 恭平の怒りに当てられ慌てる佐々木。


「なんでだよ、なんでなんだよ。なあ、基子……返事をしてくれよ」


 涙が頬を伝い、ぽたりと彼女の頬に落ちた。

 佐々木はその場にへたり込み、手に持っていた猟銃をとさっと落とした。

 再び肉塊になってしまった彼女を強く抱きしめる。

 そして、堰を切ったように泣き叫ぶ。


「基子……っく、ご、ごめんよ。俺の……俺のせいで——」


 こんな場所に連れてくるべきではなかった。

「探しに行こう」と言い出した彼女を止めて、大人しく宿に留まっていれば、佐々木と遭遇したとしても話し合うことが出来たはずだ。

 悔しくて拳を握りしめた。

 すると、彼女の体がぴくりと動いた。


「も、基子?」


 恭平は驚き、抱きしめていた腕をゆっくりと解放した。


「んっ……」


 彼女は顔を歪め、薄く瞼を開けた。


「基子っ!」


 目を見開き彼女を見つめる。

 すると彼女はごほごほと咳き込み、右手で自分の口元を押さえた。


「基子、大丈夫か!」


 彼女はこくんと小さく頷いた。


「良かったぁ。って、良くない! めちゃくちゃ血だって出てるし、早く病院行って治療しないと!」


 どうやら急所は外れていたようだ。気を失っていただけなのだろう。

 咳き込む彼女の背中を摩っていると、Tシャツの内側の何かがはらりと取れた。


「きゃっ!」


 咄嗟に胸を隠す彼女。


「基子っ! どうした?」


 彼女はにんまりと笑みを浮かべた。

 口元についた血の痕が不気味さに拍車をかける。


「恭ちゃんの、エッチ」


「えっ?」


 その言葉で全身が痺れたように硬直した。


——なんでこのタイミングで……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ