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#魕ガ棲ム島  作者: YasuAki
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第二章 其ノ弐拾捌

「なんで、巫女の服を着ているんだ?」


 薫は緋色の袴に白衣を纏っていた。

 ただ、抱きつかれているせいで掛け襟の隙間から覗く肌色が、妖艶な雰囲気を醸し出している。


「なんでって、着替えろって言ったの恭ちゃんじゃない」


——ああ、やっぱり。


 頭の中がぐちゃぐちゃとかき混ぜられていく。


「こういう格好が好きだなんて、恭ちゃんってもしかして変態さん?」


「なっ! お前っ!」


 慌てる恭平から薫は手を離し、面白そうに笑った。

 突然手を離された恭平はバランスを崩し倒れそうになった。しかし、窓枠の縁を掴んでなんとか持ち堪える。

 恭平は窓から降りると、くるりと踵を返し薫の方を向いた。

 そして、深呼吸を一つして、その姿を見つめ驚愕した。

 白衣にはベッタリと血のようなものが滲んでいた。

 恐らく、薫本人のものではないだろう。

 恐怖が全身を支配する。


「薫、もしかして、また——」


「ん? またって?」


 小首をかしげ楽しそうに笑う彼女が、恭平の目には不気味に写る。

 どくんどくんと心臓が大きな音を鳴らす。

 恭平はふるふると首を振り、キッと薫を見つめ聞いた。


「も、基子をどこにやった?」


「えっ? お姉ちゃん? さあ、どこだろうね」


 そして、薫は不敵な笑みを浮かべた。

 ぞくりと背中に悪寒が走る。


「何でもかんでもただで教えてもらえると思っちゃダメですよ、恭平くん」


 薫はくるりと回転しながら窓枠に背中を預けた。

 そして、挙げた右手の人差し指をチッチッチと左右に振りながら言う。


「いや、でもな——」


 恭平の言葉を遮るように薫は再び向きを変えた。


「じゃあ、恭ちゃんからキスしてくれたら教えてあげる」


 薫は自分の唇に指を当てて悪戯っぽく笑う。


「なっ! なんで」


「だってえ——私は恭ちゃんのことが好きだから」


 頬を赤らめ恥ずかしそうに薫は言った。

 これが基子なら嬉しいはずなのに。

 感情がないまぜになって、思わず目頭が熱くなった。


「ねえ、早く!」


 そう言いながら恭平の方に両手を差し出す薫。

 恭平はそれに引き寄せられるようにゆっくりと腰を落とした。

 唇と唇が重なる。

 それと同時に、恭平の目から涙がこぼれ落ちた。

 二人の距離が離れ、ゆっくりと目をあけた薫がにこりと笑顔で言った。


「そんなに嬉しかったの?」


「いや、違う……これは」


 全身が戦慄き後退る。


「そっかそっかー。そんなに嬉しかったのかー」


 薫はそう言って窓枠に手をかけると、平然と飛び込むように入室してきた。

 恭平は散乱している本に足を取られ、その場にペタンと尻もちをついた。


「そんな恭ちゃんには特別に薫が抱きしめてあげる」


 薫がそう言いながら近づいてくる。

 ふわりと長い黒髪が揺れた。

 そして、恭平に覆い被さるように抱きついた。

 ただ——先程とは違いどこか優しい。


「大丈夫だよ。私はここにいる」


 耳元で囁かれた。

 その言葉は、紛れもなく——

 すると、薫の体からかくんと力が抜けた。

 ずしっと急に重たくなる。


「今のは……」


 恐る恐る薫の肩に手をかけて顔を覗き込む。

 彼女はすぅすぅと小さな寝息を立てて眠っていた。


——一体どういうことなんだよ、基子。


 恭平は顔を顰め、眠る彼女を抱きしめた。

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