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第二章 其ノ拾伍
玄関先で濡れた靴を素足のまま履いた。
時間もさほど経ってないせいか、乾いた様子は微塵もなくて、足入れした瞬間、ヒヤリと冷たさが電気のように体を伝った。
端の方に置いてあった傘立てから傘を一本拝借して外に出る。
雨はだいぶ弱まっていた。
空は相変わらず鼠色だったが、日が昇っているおかげであたりはうっすらと明るい。
恭平は道路に出ると、今いる場所がどこなのか自分の記憶と照らし合わせた。
——ここは、夜中に薫が外に出てきたところか。
物音がして恭平が中を伺った家だ。恐らくあの時、暴れる住人を薫が殺害していたのだろう。
脳裏に椅子に座ったまま息絶えている三人の姿が浮かび上がった。
何もできなかった自分が悔しくて、唇をかみしめる。
交番は村の中にあるため、恭平は目の前の道路を左に進んだ。くねくねとして左右森に囲まれた一本道を早足で歩く。
その間、いくつかの民家の横を通り過ぎたが、変わった様子は見られなかった。




