第二章 其ノ拾弐
「この島は昔『鬼ヶ島』と呼ばれてたのは知ってるよね。その名の通り、鬼が住まう島だったの。もちろん私たちの先祖は鬼と呼ばれた『吸血鬼』。1160年ごろ、源為朝が上陸したことによって他の人間たちもこの島に渡り、不思議な力を持つ私たちの先祖を捕らえ、迫害し、殺し始めたのがはじまり」
「吸血鬼を迫害?」
「西洋の魔女狩りのようなものだよ。自分達より優れ、脅威となりうるものは排除される」
昨日、叔父が本を見ながら似たようなことを言っているのを思い出した。
「だからって……その当時ならともかく、今は流石に——」
「そうだね。純血種がいなくなった現代だと、ほとんどの島民は普通の人間だし。中には吸血鬼の血が多少なりとも混じってる可能性はあるけど、それも微々たるもの。ただ、双子が生まれる時だけ何故か違った」
薫は廊下の淵に座り足を外に投げ出した。
そして、恭平の方に顔だけ向き直ると、真剣な表情をして言った。
「双子のうち、どちらかが絶対に吸血鬼になるの」
恭平は驚きのあまり息を呑んだ。
「ちょ、ちょっと待て。双子が生まれると吸血鬼になるなんて、意味がわかんないだろそれ」
「そう、意味がわかんないのよ。本当になんでなのかな」
地面に視線を落とし、足をぶらぶらさせながら薫は言った。
「じゃあ、薫は——本当に基子の双子の妹ってことか?」
薫はぴたりと足を止めると、恭平の方を向き、再び不貞腐れて言う。
「だから、そうだってずっと言ってるじゃん。お姉ちゃんの妹の薫だよ!」
「あぁ、そうだったな。と、ところで今、基子はどこにいるんだ?」
「知らない」
温度のない声音で返され、恭平はビクッとたじろいだ。
「し、知らないわけないだろ。封印がどうのとか言ってたじゃないか」
「封印されてて外に出られなかったのは私だし、お姉ちゃんじゃないからね。私の代わりに封印されちゃったんじゃないかな」
「いや、だからどこに……」
「知らないってば! そんなことより恭ちゃん、血、吸いたい」
薫はにやりと不敵に笑いながら恭平に近づいてくる。
「えっ? いやいや、ちょっと待て!」
慌てて後ろに下がりながら薫の肩に手を当てて静止させる。
「ちょっとだけだって、ほら、先っぽだけってよく言うじゃない。あれと一緒だって」
恭平の力が敵うはずもなく、床に押し倒され、そのまま首筋に歯を立てられた。
「先っぽって、歯に先っぽもクソもな、あっ……」
ジュルジュルと勢いよく血を抜かれる。
急な吸血のせいで貧血になったからか、目の前が霞がかり、そのまま意識が飛びそうになる。
——力が、入らない。




