第一章 其ノ参拾玖
しばらくしてボワっと火が灯り、彼の手元だけが浮かび上がる。
びっくりした基子は思わず「ひっ!」と小さく声を漏らしてしまった。
「ここだけ電気通してないんだ」
どうやら蝋燭に火をつけていたようだ。
その蝋燭を提灯に移すと、それを持って基子の方に近づいてくる。恭平の動きと共にゆらゆらと光源が揺れていた。
「えっと、なんで電気ないの?」
恭平の手元を見ながら聞く。
「うーん……ちょっと事情があってさ。それより、危ないからまだそこに居て」
そう言うと、恭平は提灯を持ってスタスタと暗闇の奥へと消えていく。
淡い光がふらふらと動き、止まったかと思うと新たな光源を作ってはまた動きだす。
しばらくして、恭平がこちらに戻ってきた。
「とりあえず蝋燭つけたから、足元に気をつけながらこっちに来て。それと、途中から壁がなくなるから注意して」
そう言って、中に入るよう促される。
——壁がない?
基子はこくんと頷くと、薄闇の中に足を踏み出した。
じゃり。
「えっ?」
足元の感触に違和感を覚えた。
「どうした?」
「えっ? ああ、うん。なんでもない」
変な声を出して立ち止まっていた基子を不思議に思ったのか、恭平は聞いてくる。
——ここは舗装されてないのか。
ところどころごつごつしていて、気を抜いたらつまづいて転んでしまいそうだ。
一歩一歩、薄暗い足元を確認しながら進む。
恭平が着けて回っていた蝋燭は、細長い棒の上に受け皿があり、その真ん中に刺さっていた。
等間隔に並べられ、導かれるようにその間を通る。
通路はいつの間にか開けた場所に出ていた。
脇に水場があるのか、水が流れる音がする。




