第一章 其ノ参拾伍
夕食を食べ終えた基子は、恭平の運転で大里神社へと向かった。
佐々木は先に出かけたらしく、基子が休んでる間に円香が迎えに来たそうだ。
宿から二十分ほど山道を走り、大里神社手前の集会所の駐車場に車を停めた。
もうすでに集まっているのだろうか。他の車も数台停まっている。
足脇に置いたコンビニ傘を手に取り、ドアを開けると同時に開く。
ザーと鳴っていた雨音が、傘にぶつかってばちんばちんと音程を変える。
車から降りて、急ぎ足で玄関に向かう。傘の意味があるのだろうか。地面に落ちて跳ね返った水滴は、基子の足元をしっかりと濡らしていた。
「びしょびしょだぁ……」
後から手で頭を守るようにして恭平も駆けてくる。
「やばいなこれ。降りすぎだろ」
恭平は玄関前の軒下で手を振り払い水滴を切るが、滴り落ちる雫は全くもって切れていない。
「あれ、傘は?」
傘を畳みながら恭平に問う。
「あ、ああ。大丈夫だよこれくらい」
恭平はびしょ濡れのまま答える。
「ごめん、傘取っちゃって……」
宿を出る時に恭平は傘を持って車を取りに行っていた。
入口まで回してもらい、そのまま急いで乗り込んで……
「そうだ! これで拭いて」
ガサガサとボディーバックからハンドタオルを出して恭平に渡した。
「ああ、サンキュー」
それを受け取り、額を拭う恭平。
「とりあえず中に入ろうぜ。叔父さんたちもいるだろうから」
入口脇の傘立てに傘を刺して、ガラガラと玄関を開けた。
上がり框は広く、正面には給湯室とトイレが目についた。土間左側に簀子の式台と下足箱があり、靴が幾つか踵を見せている。
基子も靴を脱いで下足箱に入れると、上がり框横に置かれたスリッパを二人分手に取って、ポンポンと床に落とした。
「サンキュ。後、これも」
後ろを振り向き、恭平からハンドタオルを受け取る。
スリッパを履きながら、恭平が先に行くのを待つ。
「みんなこっちに集まってる」
パタパタと音を立てて右の方に向かう。
ミーティングルームのような部屋は、どうやら右と左の二部屋しかないらしい。
恭平は襖を開け、「こんばんわ」と中の人に声をかけていた。
基子はその後でしずしずと待機する。
敷居のところでスリッパを脱ぎ、畳の部屋に入っていく恭平に倣い、基子も静かに中に入った。
人数はざっと十人ほどだろうか。一昨日の居酒屋の時のように、ワイワイガヤガヤと賑わっている。




