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#魕ガ棲ム島  作者: YasuAki
29/102

第一章 其ノ弐拾捌

「……心的異常?」


 基子は思わず口走った。


「みたいだな。それが一体どういう状況なのかは書いてないから分からないけど、基子の身に起きたことがそうなら、呪いじゃなくて『巫女気』があって、神様に選ばれたのかもしれないな」


「ちょ、ちょっと待って! 神様に選ばれるとか、ないないない、絶対ない!」


 慌てて首を振る。そもそも怖いものが苦手なのに、そんなものは頼まれても願い下げだ。


「じゃあ、なにか。呪いの方が良かったか?」


「いや、それは……もっと困る……」


 パタンと本を閉じて、水が上手く吸えなかった花がごとくしゅんと項垂れる。


「だろ。呪いに関しては俺は聞いた事ないし、その『巫女気』があるって言われた方がしっくりくる気がする」


「でもでも! じゃあなんで私なのかな? 普通だったら島の人じゃないの?」


 ずいっと恭平に詰め寄る。突然のことにたじろぐ恭平。


「い、いや、そんなこと言われてもなあ。神様の趣味は——わからないでもないが……」


「どう言うこと?」


 ガシッと恭平の肩を掴んだ。恭平は目を逸らしポリポリと頬を掻いている。


「そ、そうだ! 現役の巫女さんに直接話を聞いてみたら良いんじゃね?」


 恭平は思い出したように言った。


「現役の巫女さん? 私、巫女さんの知り合いなんていないけど?」


 友達もそんなに多くないよと自虐ネタは内心に秘め、怪訝な顔で言葉を返す。


「何言ってるんだよ。さっき会っただろ」


「さっき?」


 基子に思い当たる節は全くなかった。先程、恭平がお喋りしていた司書の女性のことだろうか——


「いや、だから、何怒ってるんだよ」


「えっ? 何が?」


「何がって、明らかに不貞腐れて——まぁ、良いや。巫女って言うのは、円香さんだよ」


「円香さん? ——えっ? ええええー!」


 驚きすぎて大きな声を出してしまった。


「ば、馬鹿! 声がでかいって!」


 カウンターからは何事かと司書さんが顔を覗かせていた。慌てて自分で口を塞ぐ。


「あっ、ご、ごめん」


 自分でも思ってもいない声が出たことに、恥ずかしくて赤面する基子。


「でも、円香さんってお医者さんでしょ? 巫女さんと兼業ってこと?」


「うーん、そう言うことになるかな——ただ、そもそもこの島で巫女が職業かって言われると、微妙なんだけどな」


 恭平はそう言うと、椅子から立ち上がりテーブルの上の本を片付け始めた。


「あっ、私も手伝うよ」


「サンキュ。それじゃ、こっちお願い。確かあっちの棚だったと思う」


 なかなか重そうな本を数冊基子の方に寄せ、テーブルから一番離れた位置の棚を指して言った。


——意地悪。


 そんな基子の気持ちを読んだのか、ぽんぽんと頭を叩きニカッと笑う。


「ありがとな」


「あっ、うん——」


 俯きながらテーブルの上の本を取り、そそくさと本棚に本を戻しに向かう。

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