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#魕ガ棲ム島  作者: YasuAki
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第一章 其ノ拾参

 ため息をついて再び前を向いて進むと、右手に白い廃屋のようなものが見えた。あれが「南台所神社」なのだろうか。基子はそれに近づき辺りを見回した。しかし、何かを祀っている様子がない。本当にただの廃屋のようだ。


「せっかくここまで来たのになにもないのかい……」


 独り言ちりながら溜息をつき、後ろを振り返ると、基子が来た道とは別の道が右手に続いていた。


「こっちが本命か!」


 嬉しくなって小走りで右の道を進む。すると、明らかに異質な建物が現れ、基子はぎょっと目を剥き立ち止まった。


 神社というにはあまりに小さく、何よりも奇妙なのは、壁が真っ赤に染められている。そして、少し高い位置に四角い窓があり、左下には石版が埋め込まれ、何やら文字が書かれていた。 立ち止まりふむふむと文字をなぞる。


『平成十一年南台所神社本殿改修工事』


——えっと、平成十一年ってことは……一九九九年。世紀末に改修したのか。


 建物の左側を見ると道が続いていた。そのままその道を進む。恐らくここが神社の正面なのだろう。赤く塗られた壁の色とは違い、白色をした木の観音扉がきっちりと閉められていた。

 基子はごくりと生唾を飲み、恐る恐る取手に手をかけた。ギギギと不快な音を立てながら扉が開く。すると、出てきたのはガラス戸だった。中には小さな木のテーブルが見える。テーブルの上には榊立てが二つ並んでいて、その前に線香立てが置いてあった。

 基子はガラス戸の鍵に目を向けた。どうやら鍵はかけられていないようだ。手をかけて横にスライドさせるとカラカラと簡単に開いた。恐る恐る中に足を踏み入れ、周りを見回す。入口から覗くとテーブルがあるせいで狭そうに見えたものの、いざ入ってみると室内はそこまで狭くなかった。壁と天井は見慣れた鼠色のコンクリート。建物自体が全てコンクリートでできているのだと基子はこの時初めて気がついた。しかも、入口からは見えなかったが、奥にもテーブルがあり、古い神棚が三つと榊立てが三つ。紙垂も三つ並んでいた。

 基子は神棚の前に立つと、賽銭箱を探して辺りをキョロキョロと見回した。しかし、それらしきものはどこにも見当たらない。かわりに神棚の前には色褪せたコインが無造作に置かれている。

 賽銭箱が無いのであれば仕方がない。

 基子は小銭入れから五円玉を取り出して、前者に倣うようにそれをコインの上に置いた。神棚に向かって二礼し、パンパンと二回柏手を打つ。

 コンクリート作りのせいか、ただ単純に建物の大きさのせいか、基子が思っていたよりも音が大きく反響してビクッと体が震えた。

 気を取り直して目を瞑り、心の中で願い事を唱える。


——世界が平和でありますように。素敵な彼氏ができますように。それと、職場の風当たりも良くなりますように。宝くじが当たりますように。それとそれと……


 基子がたくさんのお願いごとを祈ってる最中、キーンと小さな耳鳴がした。


——ん? 耳鳴り? っ!!


 その音は段々と大きくなり、しまいには耳が全く聞こえなくなるくらいの大音量になった。基子は驚きのあまり目を開ける。しかし、そこは神社の中では無かった。視界が急に閉ざされたのか、何も見えない。瞬きをしてみても見える世界は変わらなかった。

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