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世界と決断〜現実世界との繋がりと絆〜

シャッフルユニットライブを終え、各グループがさらに有名になり、それぞれが輝き、彼らが順風満帆な日々を送っていた最中、突如としてその時は訪れた。いつかのあの夢のように…


「異なる世界からこの世界に招かれた者達よ、どちらの世界で生きるか己の意志で選ぶといい。どちらでも成功できるだけの力が備わっているはずだ迷わずに進みたい方を選ぶといい。」

選ぶまで目覚める事のない中で。


どちらを選ぶかによって、未来はまるっきり変わってくるだろう。

決断を迫られた時、彼らの過去と思いが垣間見える事となる。


燈里

自分だけの判断、相談もできない。それぞれが別の世界を選択すれば、ぼく達はバラバラになってしまったり、最悪一人だけ取り残されてしまう、なんて事もあるかもしれない。

いわばそんな賭けのような選択を迫られたぼくは、売れていなかった時代を思い出す。

そもそも、僕はなんでアイドルになりたいのか、そんな疑問を持つ前から有名人同士の子供として期待され、もてはやされ、それだけで身の丈以上の愛情を得る事ができた。

しかし、やがてそれが膨らみすぎるのも時間の問題だった。大きすぎる期待や愛情は、ぼくが成長するにつれ不の感情へと変わってゆき、何をしても褒められてきたぼくの心を蝕み、自信を剥ぎ取っていった。

絆も歌声も何もかも失い、壊れかけた心を、自分に自信を持ち自分を信じ暗示をかける事で保ち、歌声を取り戻した。

それと引き換えに他人と関わることに対する溝は深まった。しかし、ここに来てからは、何にも縛られず、自分らしく自分の歌う意味や歌いたい理由も見えてきた。それを教えてくれたのは、他でもない、ここで得た絆だ。ならもう決まっているではないか、ふと柔らかな笑みをこぼした。

ぼくの選ぶ世界(こたえ)は…


奏&響

二人でアイドルになりたいと、両親の反対を押し切って二人で家を飛び出した。

それからは、ずっと二人でバイトを頑張って死に物狂いでレッスンに励んだ。

そこで仲良くなった友人達が、いつのまにかレッスンをやめ、共にオーディションに落ち続けた戦友達が、知らぬ間に諦め消えてゆく中で、世間の厳しさを知った。

奏「それでも、響が隣にいれば乗り越えられる。二人で楽しく生活できれば、それだけでいいとすら思い始めた。」

響「それなのに、偶然聞いてしまった。にーさんだけのデビュー話、ずっと一緒に歩んできたと思っていたのに、俺はにーさんの足枷に変わっていたのかもしれない。」

少しづつすれ違い、狂い始めた双子(きょうだい)の歯車を繋ぎ止めたのは…夢を追い続けた先で、ありのままのいつもの魅力を大切に、アイドルとして愛される事ができた場所は…

僕/俺の選ぶ世界(こたえ)は…


幼い頃に両親を失ってから、親戚の家を転々として来た。

俺がいい子にしていると、みんな俺を本当の家族のように大切に優しく扱ってくれる事を知った。自分を押し込め、愛されるように振る舞いながらも心のどこかでいつも孤独を感じていた。そのせいでいつも心から分かち合えるような友達もいなかった。

でも、俺はここで出会い、そして変わった。家族のような友人と本当の自分を見つけた場所、俺がアイドルになりたいと自分の意思を初めて示した時、喜んで、一円も使われていなかった今まで俺が送ってきた仕送りを渡してくれた親戚達だって、きっと喜んでくれるはずだ、だから…

俺の選ぶ世界(こたえ)は…


勤勉、優等生、そんな言葉が似合う子供だった。しかし、何かずば抜けた力や個性があるわけではない。良くも悪くも目立たず、注目されない。どこにでもいる、そんな自分がずっと嫌いだった。

そんな悩みが理解される事はなく、気がつけば高校卒業が近づいてゆく日々、なんとなく、いつも望まれる選択をするように大学進学を考え、本当にそれでいいのか思い始めた頃、街中で不意に衝撃が駆け巡った。ビルのテレビから流れてくるかっこいい曲、思わず足を止めて振り返ると、スポットライトを全身に浴びて自信に満ちた表情で、歌い踊り輝くアイドル。

この時僕は、初めて憧れ焦がれる気持ちを知り、夢が芽生えたのだ。気がつけば、すぐに有金の限りそのアイドルのグッズやCDを買い漁っていた。

珍しく興奮気味な様子で、家族にそのアイドルの事を伝え、自分もそんなふうになりたいと宣言すると、みんなは少し驚いた顔をしてから快く了承してくれた。

友人達は、道を踏み外すのか、血迷ったのだろうと心無いリアクションをするものもいたが、覚悟が決まっていた僕はそんな声も気にならなくなっていた。

アイドルの素晴らしさを語り、アイドルを目指し初めてから触れるもの全てが輝いて見えて、次々と壁にぶつかって努力する事で日々の時間の美しさを知った。

しかし同時に、努力したからといって成功できるほど甘い世界ではない事も痛いほど思い知らされた。

練習でのコンディションも上がり、合格の可能性もあると期待され始めた矢先、僕は極度の緊張と眩しすぎるライトに潰され、それ以降オーディションなどの大事な場所での歌声を失った。

どれほど歌いたいと願っても声が出ない。そのまま手放しかけた煌めきを、繋ぎ止めて貰った世界、本気でぶつかってもらって、乗り越えて、時間や感情を分かち合う喜びや楽しさも教えてもらった。

家族にもう二度と会えないかもしれないのは寂しいけれど、もう僕にとってこの場所や出会ってきた人々も家族同然、かけがえのないものになっていたから…迷わずに決断しよう。

僕の選ぶ世界(こたえ)は…


現実世界での俺が、何年も昏睡状態だったなんて…

今なら、俺も…現実世界に帰れる?

でもここで過ごして来た日々は、俺にとって輝かしいもので、大切な友人にも恵まれた。それに、俺がもし帰ってしまったら雫はどうなる?昔と違って雫にも元からこちらの世界で生きる頼れる仲間が増えた。

もう本当は俺は必要とされていないかもしれない。

ふと胸が苦しくなる。

いや、tearsとして何度も隣にいたいという思いを歌い続けて来た、その時に感じた喜びと、確かな絆に嘘偽りはないはずだ。

きっと俺が急にいなくなってしまったら、雫は家族を失い俺と出会ったばかりの悲しい顔をまたさせてしまうだろう。その時にまた誰かが雫の隣に現れるのも運命かもしれないが、俺は自ら進んで雫にあの顔をさせたくない。

雫に増えた頼れる仲間達は、俺にとってもそうだ。

希望を失った日に出会った俺達は、互いに支え合い、特別な絆を見つけ大切な存在になった。

出会ったあの時、うまくやっていける予感、助けたいと思った思いはやはり間違いではなかった。

生死を彷徨っている俺が目覚めたら、家族は喜んでくれるのだろうか、俺が急にいなくなってしまったら、雫は…今度こそ本当に向こうでの居場所を失ってしまうことに少しの不安と恐怖を覚えながらも、両親に謝る。

ただ、あの時自分で命を絶ったよりは、悲しませる事なく背中を押してもらえる選択だと信じて。俺が見つけた、毎日が希望溢れる場所。最初の心から信用し、なんだって分かち合える友人と出会った場所。たくさんの笑顔と触れ合って、豊かな心を育んだ、愛しい世界。tearsとして、いつまでも雫と守り続けていこう。

俺の選ぶ世界(こたえ)は…


選ぶ世界(こたえ)は…きっと心は一つだろう、同じ思いを胸に、答える。

「こちらの世界に残りたい!」

その意思を示した時、みんなの声が重なって聞こえた。


five Pointed starと晴は、それぞれの意思で異世界に残る事を決めた。

ただ、目覚めてからの話し合いの結果、最後の頼みとして天の声に現実世界でもう一度会いたい人への手紙と、ライブの映像を収めたDVDとそれぞれの思いを込めたソロ曲を作詞作曲し、プレゼントする事を頼んだ。


自分達を望んで必要としてくれる人達の前で歌い続けるのがアイドルだから異世界に残る。現実世界での出会いも大切にしながら、この世界で出会った仲間といつかどこまでも歌を届けようという思いを胸に。


この世界におけるアイドルの歴史を優が絵本にまとめて出版することでより幸せや楽しみが広まった。

挑戦的なイメージを残しつつも、素直な本質を明かしたpalletも、昔の雰囲気のファンも今の雰囲気のファンの声も全て受け止め活動している。

四グループの仲の良さもそれぞれの売りになり、高め合うばかりだ。

四グループの人気の裏で日の目を見る事のできない(かつての自分達のような)アイドル達を輝かせ、新たな未来へ、努力するすべてのアイドルが平等に愛される世界を築こうと、14名の伝説達によるプロジェクトも立ち上がっている。

夢物語のようでも、不可能はないはずだと、そう信じて。


かつて落ちこぼれと言われた者たちがこちらの世界呼ばれた理由、希望を取り戻す事ができたのは、想像と夢の数だけ、無数に、無限に広がる世界の力かもしれない。

誰かの頭の中で浮かんだばかりの物語(せかい)も、そこにある人々(いのち)も、形にならない世界、名前のつかない命だって、そこに生まれた瞬間に大切なものとなる。きっと…永遠に変わらない輝きに違いないと信じ続けて…今日も生まれる。

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