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アイドルの原石、輝きの始まり

「ぼく達がこの世界のアイドルの星、Five (ファイブ) Pointed(ポインテッド) Star(スター)!」


「落ちこぼれのレッテルを貼られた秘めたる才能あるもの達よ、アイドルとしてデビューしたくはないか?」

「「「「「したいです!」」」」」

「勤務地はどこでもかまわんか?」

「「「「「はい」」」」」

それぞれの夢の中で、いかにも怪しげな声にそう答えてしまったが最後、未来ある5人の若者達は目覚めた時、異世界へと飛ばされ、そこで生きていく事となる。

「最後に、現地で同じ境遇の仲間を探す事!それがメンバーになる。以上!」


最初に目を覚ましたのは、とある双子だった。

「みてご覧、(ひびき)。見た事ない動物さんがたくさんいるよ〜」

「さすがにーさん!動物さんと仲良くなるの早い!」

異世界に来てしまった事などお構いなしに、大の動物好きの(かなた)は目を輝かせている。

弟の響も、周囲の様子には目もくれず、動物に興味を惹かれるとと同時に、動物に夢中になっている兄に夢中になっていた。

「響!次はあっちのちょっとヤバそうなゴツいの触りにいかない?」

「うん!わーいっ!楽しいな!」

見るからに危険そうな生物にも動じない奏と、兄を疑いもせず喜んでついていく響、そこに三人目のメンバーが現れる!


「ちょっとちょっと君達!たぶんメンバーだと思うけど、最初から死亡フラグ立てまくらないでよねっ‼︎」

毛先にかけて色の濃くなる、ミントグリーン髪とライトパープルの髪を持つ、自分より少し背の高い少年達を両手で捕まえ、猫のような印象の可愛らしい顔をしかめながら桃色の髪を揺らす。

深い紫と緑の、2人とも髪色と反対の瞳が無邪気に振り返り、ため息をつく。左右両方の2人の髪の分け目から生える髪が、ぴょこりとぼくの方にかかる。

髪型や顔立ちは似ているが、一方は穏やかに微笑み、もう一方は、利発そうで、やんちゃそうな表情を浮かべている。


翔太(しょうた)さん、あちらの方々ではじゃないでしょうか?」

黒髪のすらりとした印象の青年が、赤茶色の髪をした、さらに背の高い男性に声をかける。

「そうみたいだね、(りつ)くん。おーい!」

声をかけられた方の男性は、少し体格に似合わないくらいの人懐っこい笑を浮かべ、手を振り、琥珀色の瞳を輝かせながら三人の方へ駆け寄る。

黒髪の青年もメガネの位置を直し、慌てて追いかける。

2人を捕まえていた少年燈里(とうり)は、燃えるようなピンク色の瞳を見開いて、その姿を見据えた。


今ここに、異世界(このせかい)で最初のアイドル、そのメンバーが集結した。


ところ変わって近くの村にて

「見かけない顔じゃのう、旅の者か?」村長と思わしき老人にそう尋ねられ、燈里は意気揚々と「ぼく達はアイドルです!」と答えた。

老人は、不思議そうな顔をして、「はて、アイドルという職業は聞いた事がないのう?旅の一座か、旅芸人、吟遊詩人とでも言ったところか?」

その反応からするに、本当にアイドルを知らないのだろう、彼のみでなく周りの者も不思議そうにしている。

「そんな、信じられない…!芸人はいて、アイドルは存在しないなんて…」奏はしゅんとして悲しそうな声を上げる。

「泣かないで、にーさん!」わたわたとしながら、響は奏の背中をさすっている。

そんな2人に、燈里は「何言ってんの、君達っ!アイドルを知らない人達に、ぼく達アイドルの素晴らしさを教えられるのは楽しみでしょ?」とにやりと微笑んだ。

その言葉に、2人はハッとして目配せをし、満面の笑みでうなずいた。

「それに、まだライバルがいないというのは、何かと好都合かもしれませんしね。」律は、瑠璃色の瞳を細め、ゆったりと言った。メガネの奥に見えるその瞳には決意が宿っている。

翔太も、にこにことした表情で力強くうなずき、「これからよろしくね!」と言った後、「…ていうか、ここが異世界だって事には誰も突っ込まないんだね…?」と事情を知る誰もが思っていたであろう疑問を、小さく口にした。


「出会ったばかりの仲間なのか?大事にせい、お主らは全員属性が違って釣り合いが取れとる。相性が良いはずじゃ。」

一連の流れを聞いていた老人がそう口にすると、「「「「「属性?」」」」」と5人の声が揃う。

「いかにも。この世界は、木火土金水の要素によって成り立っておる。」

五行説だとピンときた燈里は、早速グループ名の提案をする。

「五芒星を英語にして、Fivepointedstarとかいいんじゃない?」と少しドヤ顔で胸を張った。

「五人で一つという意味も込められて、人々を幸せな気分にさせる僕達にぴったりだと思います!」と、律はやや興奮気味に言った。

「いいね!仲間って感じがするよ!」翔太も燈里の方へ身を乗り出して、握手を求めた。

燈里は少し怪訝そうな顔をしてから、仕方ないというように手を差し出したが、その顔はほんのりと赤かった。

「やっと…響とアイドルになれるんだね。」楽しげな様子の弟を眺めながら、静かに呟く奏の声には哀愁が漂っていた。

その声は、誰の耳にも届く事なく、その場の空気にしっとりと溶けていった。

「にーさん!にーさんも一緒に皆と握手しよーよ!」さっきまでの自分の感情を知る由もない響の笑顔に、自然と笑顔になる。「うん!」期待を膨らませ、僕も話の輪の中に加わった。

「ぼく達がこの世界のアイドルの星、Five pointed star!」

燈里は天を指差し、高らかな声を上げた。

4人もそれに続き、拳を突き上げる。

「「「「おー!!」」」」

今ここに、最初のアイドルグループが結成され、異世界でのアイドル伝説が幕を上げた。

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