scene_08 企画内容
結局いつも通りだったよ···
「では早速、僕···いや私の企画の説明だが、その前に彼女の紹介をしよう」
わたしとの握手を終えて、軽く咳払いをした龍宮さんは企画の説明の前に部下らしい女性を紹介するという。
それにしても口調や一人称が変わったし、さっきまでは比較的素の龍宮さんで今からや前の時の龍宮さんは仕事モードとでもいう感じなのかな?
俺の知り合いにもその手のタイプの人はいたし、そもそもそこまで気にしてなかったけどこれからは勉強したって感じでこの感じの龍宮さんには丁寧に接しよう。その方が何かと面倒は少なそうだしね。
「彼女は塚原 桜君。ウチの営業部の所属だが前はマネジメント部に居てね。今回、澪君のマネージャーをしてもらおうと思っている」
龍宮さんのその紹介を受けて、隣に座っていた女性···塚原さんが立ち上がって一礼をする。
うわぁ、ザ·キャリアウーマンて感じのキレイなお辞儀。胸は、その、ちょっと残念だけどスタイルもシュっとしていてかっこいいしモテそうな人だなあ。
わたしは多分かわいい系にお母さんを見る感じ成長しそうだけど、こういうのにも憧れるなあ。
「龍宮部長より紹介に与りました塚原です。これからよろしくお願いしますね。澪さん」
止めに親しみやすいようにだろうけど、少し固さを崩した微笑みでわたしへの挨拶。ヤバい。この人絶対仕事がデキる人だ。こんな人をマネージャーにしてもらって本当にいいの?ちょっとプレッシャーだよ。
「今日は初仕事として、塚原君に説明をしてもらおうと思う。無論、もともとは私預りの企画だから細かい補足は私からも行うが···よろしいですか?」
龍宮さんのその問い掛けにお母さんは特に問題ないと、雪沢さんは「お前は説明が少し下手だからな」と了承した。
それを受けて「そこは言わないで下さいよ先輩」と苦笑しつつ、「では頼む」と龍宮さんは席についた。と同時に部屋の照明が薄暗くなって、目の前に俺の感覚ならPPのようなホログラム資料が浮かび上がった!
これ、光度で見え方が異なるホログラムなのかな?ホログラムを見たことが何度もあるわたしとしても初めてでビックリした。
お母さんたちは平然としてるし、知らなかっただけで多分現在じゃ当たり前のものなんだろうなあ。
「それでは改めまして。ここからは私、塚原が主に説明させていただきます」
っと、今はこんなので驚いてはないで説明を聞かないと。これからわたしがやることになるかも知れないものだし。
「今回、澪さんに提案する企画は『実在型バーチャルアイドル密着育成プロジェクト』。仮のプロジェクト名として電脳姫プロジェクトと言うものです」
そしてホログラムにはよく電脳世界として描かれそうな光の線が行き交う背景に、アイドルっぽい黒いシルエット。
いや、え?アイドル?
いやまぁ知名度が稼げるならわたしとしてはアイドルでもいいけど、わたしはほぼほぼずぶの素人だよ?
「現在、ヴァーチャルの姿で活動を行う方は多く存在し、我が社にも子会社にヴァーチャルタレント専門の事務所があります。しかし、その方々はどうしてもヴァーチャルである以上、メディアでの活動に制限がかかります。例えばドラマや動きを伴うバラエティへの出演ですね」
塚原さんの説明とともにホログラムも変化し、ドラマやバラエティ番組であろう画像に大きなバツ印が付けられる。なんかこれ、コミカルで面白い!
にしても、ヴァーチャルタレントっていうのは俺でいえばVの者たちのことだよね。あの文化、廃れたりせずにきちんと続いてるんだ。ファンだった一人として感慨深いなあ。
もう、俺の推しだった人たちは全員引退してるだろうけど、帰ったら検索してみよう。
それはそれとして、確かにヴァーチャルは確かにトーク番組やCM、歌番組以外のメディアへの露出は難しいよね。
まずモーショントレースがバラエティとなるとキツイだろうし、それが問題なくてもそもそもドラマとかじゃ絵面的におかしくなるよね。
「その結果、現在ホログラム技術や3Dアバター技術というのは今に至っても現実の番組やライブにはあまり活かされておりません」
次に浮かび上がるのは今みたいなホログラムPPや、イベントなんかでの2次元キャラがステージに生身の人間とともに立っているような画像。
ん~確かになんかもったいないというか線引きがされすぎている感じ。もっと色々使えそうな気はする。
「この現状を座視できなかったエンジニアと一部業界人が集い、開発されたのが今回澪さんに使っていただこうと考えている「FDシステム」です」
そして古き良き某フリーイラスト素材のような感じのもので、何人かの人間が集まり、ひらめいたといった感じで大きくFDシステムと書かれている。
この資料作った人、ユーモアに溢れすぎじゃない?
「このシステムはホログラムによる試着システムベースに、その状態の人間を立体アバターとして映像化、撮影や配信などを行えるようにしたものです。語弊はありますが、自身がネットの世界に入ったり分身をするシステムですね」
と思ったらいきなり資料が専門的なものに変わった。えーと、資料のほうは少し読みにくいから塚原さんの説明だとなんとなくだけど、要は立体映像で配信をするシステムって・・・こと?
わかったようなそうじゃないような・・・?
「しかしこのFDシステム。動作確認などは完了しているものの、色々と新しい試みも多くどのような不具合があるかわかりません。それは開発した側もわかっており、最初は開発側で試験使用者をプロデュースする予定だったのですがその後色々とありプロジェクトが凍結され、システムなどをうちで死蔵される運びとなっていました。それを今回、龍宮部長と私、それから数人のスタッフで手直しして澪さんに合わせたものが今回の企画です」
なるほど、何かのごたごたで日の目を見なかったシステム。その試験使用と評価が会社側のメリット。たとえ失敗してもわたしは出来高制だから大して痛くない。逆にわたしとしてもうまくファンを掴めばとてつもない成り上がりが可能。そしたら会社にも報酬が入るのでそれはそれでいい。会社としてはどっちに転んでもいいわけだ。
いい。ワクワクするよねこういうの。具体的に何するかにもよるけど、わたしの中ではほぼほぼうけること決定だね。
「前置きが長くなりましたが、澪さんにやっていただくのは基本的に昼は各種レッスン。夕方から夜の早い時間にその日にあったことの雑談や披露。たまにわが社のⅤタレントなどとコラボやゲームなど。要は一風変わった配信者ですね。もちろんやってみたいことがあれば、言ってくれればできる限り叶えるからね??」
多分前置きはお母さんたち大人用で、わたしに対してはこれを伝えたかったんだろう。にこりと微笑んだ塚原さんにそんなことを思いながら、「少し難しかったけど、澪さん大丈夫?」ときかれたので、「うん!やってみたい!」とわたしは元気に返事をした。
なんか上手いこと切ろうとすると尻すぼみになるのが自分の悪い癖なんですが、今回もまさにそれですね。
今話は諸事情でセルフ誤字脱字チェックができてないので、間違いがある可能性が高いです。ですので、これ誤字脱字かな?と怪しいものがありましたら遠慮なく報告して頂けると有り難いです。
今回はちょっと短めだったから次でバランス取らないと(遅れた時用の保険)