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scene_02 帰宅とこれから

 甘え欲求爆発して、お母さんに甘えまくってから3日。

 あの後、目覚めたとはいえ二日間昏睡状態だった以上何か脳に後遺症が残っているかもしれないと、検査を色々されて正直お疲れ気味のわたしです。

 後遺症と言うなら俺の記憶が蘇ったことが一番だと思うんだけど···

 まあそんなことはともかく、医学的には異常なし。晴れて退院となり、現在お母さんと帰宅中。なんだけど···

 

 「···はい。···はい。···それはありがたいですし、個人的には是非ともお受けしたいのですが、会社の方を通して頂かないと私の一存では決めることができないもので···」


 現在、お母さんは電話?中。

 「お昼はお外で食べて、夜ご飯は澪ちゃんの好きなからあげ作ろっか」と喋りながら手を繋いで歩いていたら、いきなり『ちっ、邪魔が入った』みたいな顔を一瞬して「澪ちゃん、ちょっとゴメンね」と頭を撫でてからその場で話し始めたのだ。

 そう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 俺の記憶じゃそんなこと裏側でも難しかったのに、一体どういうことだと混乱しそうになったけど答えはわたしの記憶からすぐに出てきた。

 今世は(実はよく似た異世界や並行世界でもない限り)俺が死んでから大体50年ぐらい経っているらしい。で、半世紀も経てばスマホなんかも当然進化しているわけで、お母さんが着けているメガネがスマートグラスの進化系であり、現在の携帯端末の基本形だったということだ。

 ちなみに、現在歩いている道路も街路樹なんかの緑が多く、建物に関してはあまり装飾などはなくシンプルなデザインのものが多い。

 これは実際に塗装するよりもAR上に投影する方が安価で書き換えなども楽、さらに場所も取らないということで街頭広告なんかはほぼほぼAR上に存在し、ならば基底現実は自然と調和していこう。と世の中がなっていったからみたいだ。

 ついでの余談だけど、今は事故で壊れてしまって持ってないだけで、わたしのアレグ(なんの略なのかはわたしも知らなかった)もきちんとあるらしい。


 「···はい。では、そういうことで···わかりました。明後日の14時にそちらに伺わさせてもらいます。···はい。こちらこそよろしくお願いします。ては、失礼します···ふぅ。ゴメンね澪ちゃん。」

 「ううん。おしごとのお話でしょ?大丈夫だよ」

 「ありがとう。それじゃ、澪ちゃんは何が食べたい?」

 「ん〜、おうどん!」

 「おうどんね?なら、駅前のうどん屋さんが美味しいって評判だからそこにしようか」

 

 電話が終わって一息ついて、食べたいものの希望をお母さんに聞かれ咄嗟に浮かんだのはミートソーススパゲティ、豚骨ラーメン、うどんと見事に麺類だらけだった。これはわたしも俺も本質は違えど外飯といえば麺みたいな思考ゆえだからだろう。とりあえず、あまり負担の大きくないうどんを選んだけど、本当はミートソース食べたかったなあ。


 -とか思ってたくせに、連れて行かれたうどん屋さんが本当に美味しくてすっかりそんな考えが頭から飛んでいったのはここだけの秘密だ-


 「おかえりなさい」

 「えっと、ただいま?」


 「お母さんに先に入らせて」と言うものだから訳もわからず頷いたとこ、ろ、なんか妙なベタ展開茶番を繰り広げるのは俺にとってははじめて、わたしとしては約一週間ぶりの我が家の玄関。

 ちなみに現在の今世の我が家は街の中心地によくあるようなオートロック付き10階建ての(多分)賃貸マンション。その最上階の角部屋である。

 半世紀も経ってるのに家っていうのは変わらないなと一瞬思ったけど、考えてみれば俺の頃でも築60年のアパートとか普通にあったし、案外そんなものなのかもしれない。


 「もう。澪ちゃん、ノリが悪いわよ?こういう時は大きな声でただいまー!って言いながらお母さんに飛びつくものよ?」


 いやいや、お母さんよ。ただいままではともかく、飛びつくなんて俺の頃にはもうフィクションの中ぐらいしか···あれ?そういえば綾が偶に飛びついてきていた気も···いや、きっとアレは例外だよな。うん。とにかく、来なさい!とばかりに腕を広げているお母さんには悪いけど遠慮しておこう。気恥ずかしいし···


 「う、うん。次からはそうする、そうするからちょっと今日はやめない?ちょっと見たいものがあるの」

 「むぅ···まあいいわ。けど、本当におかえりなさい。澪ちゃん」

 「うん。ただいま、お母さん」


 ひとまず飛びつき&ハグを回避したわたしは「着替えはお部屋に出しとくから、まずは手を洗ってきなさい?なにかするのはその後ね?」というお母さんの言葉に返事を返しながら、すぐに洗面所で手を洗い着替えてしまう。で、すぐにテレビを点けて調べ物を始めた。

 今はパソコンとテレビは殆ど一体化していて、リビングなんかにあるのは誰でも使える共用パソコンのような扱いらしい。操作も随分と簡単で俺を思い出してないわたしでも気になることは調べてたりしていた。俺の頃でもITネイティブとか言われてたのにすごいものだよ。


 「随分と早かったけど、ちゃんと手は洗った?」

 「ヤメデカ見たくて急いだけど、ちゃんと洗ったよ」

 「あ、見たいのってヤメデカだったの?本当に澪ちゃんはそういうの好きね」

 「うん!」


 あまり心配をかけたくないから、シークレットモードで履歴を残さないように調べ物をしながら、わたしがハマっているドラマを流す。ま、記憶上前話が良いところで終わっていて続きが気になるのも事実だから、後でもう一回観よう。


 (やっぱりざっと見た感じは普通に未来っぽい。もっとも、死んだあとに歴史の転換点(バラダイム·シフト)があった可能性はあるけどそこは知ったことじゃないし主観じゃやっぱり地続きの未来でいい。となると、やっぱり駄目だとわかっていても気になるなあ)


 想うのは遺してしまった両親、義娘の綾、親友にして戦友のアイツを始めとした数少ない友人。そして···

 

 (襲われたしっかりとした理由···だよな)


 アレは愉快犯とかおやじ狩りとかそんな類では絶対ない。身に覚えはないけど、明らかにターゲットとして俺を狙っていた。今更どうしょうもないとは言え思い出してしまった以上、気になるものはやっぱり気になる。

 となるとだ。


 (一番簡単なのはアイツに接触すること。とはいえSNSのIDなんて覚えてないし、仕事柄俺たちはメルアドを定期的に変えていたから意味はない。電話番号が望み薄だけど可能性があるくらいか)

 

 しかし駄目な可能性の方が高い以上、他の手段を考えなこればならない。

 

 ∼なお、後から考えてみれば諦めて綺麗サッパリ前世とは関わらないという選択肢が一番楽だったんだろうけど、この時点でその選択肢はわたしの中から消え去っていた。∼

 

 (直接接触が駄目な場合、間接的に、つまり間に誰かを挟んで接触するしかない。すると必然的に裏側に接触しないといけない訳だけど···)

 

 この年齢で使えるルートは3つくらいしかない。そして、その中でお母さんにあまり心配をかけず比較的安全なルートは一つしか知らない。 

 それは


 (子役になって芸能界に入ろう)


 これしかない。

 さて、そうと決まればまずやるべきことは


 「さて、ヤメデカを観ようっと。あ、奥様は麻取も新作出てるし!後は···」


 これは今のドラマの傾向や作風なんかの研究なのだ。断じて気になった番組を見て回りたいだけなわけではないのだ。


 「うふふ。楽しそうね」


 


 追記、お母さんの唐揚げはとても美味しかったです。

 日曜日、ギリギリ週一のハズ。

 熊本や熱海なんかは雨がすごいらしいですが、読者の皆様、またはその親族の方は大丈夫でしたか?

 

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