第1話 百八星、転生する
今より約900年前の昔。
中華の地は、宋という王朝が支配する世だった。
初代皇帝・趙匡胤や二代目の趙匡義の辣腕により動乱の中華を平定し、大いに繁栄した宋王朝であるが、第八代皇帝・徽宗の時代には斜陽の兆しが見えていた。
衰退の理由は複数ある。
うち特に大きいものは二つ。
まず一つに当代の皇帝である徽宗が芸術家としては極めて優れた才能の持ち主ではあったが、君主としてはまったくの無能であったことだ。徽宗は絵画や彫刻などの芸術に極めて優れた感性を発揮し、芸術界にたびたび革新を起こした。だがそればかりにかまけて、政治を面倒くさがり、自分にとって都合の悪い諫言は聞かずに、都合の良い佞言ばかり聞き入れる。一文にもならない芸術に巨額の国費を投じるが、民のためには金を出さない。それどころか搾り取る始末。頂点にいる皇帝がこの様では国が傾かないはずがない。
もう一つは政治に無関心な徽宗にかわり、政治を思うが儘にする佞臣の存在である。皇帝が愚かなことをいいことに政治を思うが儘にする彼らは、汚職の手形を手に入れたも同然であった。蹴鞠が上手く他者におもねることが巧みだったというだけで徽宗に気に入られて出世し、皇帝の権威を笠にきて好き勝手する高球などは、その典型例であろう。高球が己の権力を確立するために、罷免したり死に追いやった名臣名将は両手と両足の指を足しても足りはしない。
また高球以外にも宰相の蔡京、枢密使・童貫、宦官・楊晉などの悪行も数多い。
高球を筆頭にする国の癌たる佞臣たちを、民たちは四奸と呼んで恨んだが、誰も彼らの横暴を止めることはできないでいた。
正しく混迷の世。
賢者であれば滅亡が見えた国。無辜の民草には希望の見えぬ国。
王朝の末期。
そんな宋の世にかつて伏魔殿に封じられた魔王達の魂が解き放たれた。
天晃三十六星、地刹七十二星。合わせて百八星。
世を乱し、世を救うと予言された百八の魔星は人間へ転生し、いずれ約束の地・梁山泊に集うという。
そして百八の魔星の一つにして、星主たる天魁星が転生したのは、済州宋家村の地主の家であった。
息子が魔星の生まれ変わりであることなど、平凡な両親は知らない。自分たちの後継ぎになる長男坊の誕生を、親たちは無邪気に喜んだ。
「この子は江と名付けよう。字は公明だ」
「宋公明……素晴らしいと思いますわ、貴方」
宋大公が名付けると、出産という大仕事を果たしたばかりの夫人が微笑む。
こうして王朝と同じ姓をもち、江と名付けられた少年、宋江は誕生した。
宋江は背丈に恵まれず肌も色黒であったが、容貌の小人と反比例する巨大な才気の持ち主であった。
齢三歳にして大人並みの知恵をつけたのは序の口。
武芸をやらせてみれば、あっさりと師を凌駕してみせ、十三の頃には村の若い衆を統率して盗賊を蹴散らした。
文武において無限大に才能を発揮する様は神童という他なかっただろう。十で神童十五で才子二十過ぎればただの人という諺はあるが、どれだけ年を重ねても、宋江の才能に陰りが見える気配はなかった。
しかしなによりも宋江が秀でていたのは政治面における見識である。
「今の宋家村には無駄が多いですね。無駄な出費をなくせば、それだけ村の財政が潤いますよ」
「お前はいきなり何を言っているんだ?」
宋江、齢にして九の頃の発言である。
当初はまだ子供の言うことと退けた宋太公であったが、息子の熱心さに押されて、一度だけだと頷いてみるや、効果はすぐに現れた。無駄な出費が削減され、貯蓄が増え始めたのである。
村を発展させたことで村人の支持を受けた宋太公が、保正(村長)になるにはそう時間がかからなかった。
「村の統治機構は非効率なところが多すぎますねぇ。これはここをこーしてこーしたほうがいいですよ」
11歳になると宋江は父よりも村のことについて把握していた。
なお宋太公にはもはや宋江の言っていることが理解できなかった。高度な知識を持つ官僚でなければ、今の宋江の言っていることを理解することは難しいだろう。
だが宋太公は素直だった。
「江の言ってることの半分も理解できんが、いつになく自信満々だし、江の言ってることが外れだった試しはない。ここは言われた通りにしてみるか」
そうして宋江の進言を素直に聞き続けてみたら、いつの間にやら宋家村は、州内でも屈指の都市にまで成長していた。
これには宋太公も吃驚である。
「うちの鄙びた田んぼがあった土地に、ずらりと商店が立ち並んどる。一気に宋国でも指折りの大金持ちになってしまった」
「ここまでくるのにちょっと苦労しましたが、これだけ財政的に余裕があれば、ある程度の金は私が自由にしても構いませんね?」
駄目だ、という選択肢は宋太公にはなかった。
なにせ宋家の財産の九割以上は宋江が稼いだものなのである。ならば使い道を宋江が決めるのが道理というものだろう。
こうして宋江は齢15歳にして、かなりの自由に使える金を得たのである。
「これだけの金があれば、新しい屋敷を買うことも大きな商売を始めることもできるでしょう。兄上は一体この金を何に使うのです?」
そう言ったのは弟の宋清である。宋江と比べれば才気は劣るが、人当たりがよく過ぎたるを知る人物で、宋江も頼りにしていた。もしかしなくても父親よりも。
「滄州に柴進という名士がいるでしょう。あそこのように全国から広く食客を集めようと思いましてね」
「柴進殿ですか! たしか宋王朝の皇室の主家筋にあたる柴家の末裔とか」
皇帝の主家という特別な家系の柴家には、宋王朝から幾つもの特権が与えられている。
丹書鉄券という治外法権めいたお墨付きなどその最たるものだ。
「その柴進さんですよ。といっても成金の宋家に丹書鉄券なんて便利なものはないので、彼ほどの無茶はできませんがね。住む場所と食事を用意すれば、このご時世それを求めてやってくる人は多いでしょう。その中にはこれはという人物がいるかもしれません。平原君のところにきた毛遂のようにね」
平原君とは戦国四君と称えられた人物の一人である。毛遂はそれを支えた食客で平原君をもってして「弁舌は百万の兵に勝る」と称えられた弁士だ。
宋清は心臓が興奮で裏返ったような心地だった。国の政治が乱れたこの時代に、毛遂を求める兄に底知れぬ大望を感じ取ったからだ。
「まあ江の稼いだ金だ。好きに使うといい」
「持つべきは話の分かる父親ですねぇ。では早速全国に私が広く客を求めているという話を流しましょうか」
噂は直ぐに宋国中に伝わり、3800人もの人間が宋家に集まった。
殆どは食うに困ってきた難民崩れであるが、これはという人物もいた。
「兄上。私がざっと全ての人間と面会した限り、目ぼしい人材は三人です。まず神医の渾名をもつ安道全、獣医の皇甫端、そして呼延灼将軍の配下として働いていた韓滔殿です」
「三人のうち二人が医者ですか。なにか理由があるんですか?」
「それでしたら本人たちが聞いたところによると――――」
『患者を治すのに腹を掻っ捌いたら異端者扱いされましてね。宋江殿は成果さえ出せば、こういったことは気にしないと聞いたので流れてきた次第です』
とは安道全。
『僕は彼と違って獣医だけど、似たような理由だよ。それとも人を診ない医者には用はないかな?』
とは皇甫端である。
二人とも極まった腕に比例した捻くれ者で、居場所を失って流れてきたのも納得の人物だった。
「ふむふむ。医者はもちろん、騎兵の使う馬に食用の牛や豚。腕のいい獣医の仕事はいくらでもあります。宋清、そのお二人は最上の待遇でお迎えしますよ!」
「ははっ! して……三人目の韓滔殿はどうなされます?」
「呼延灼将軍といえば宋国にその人ありと言われた宿将です。その宿将に仕えていたほどの人物が、私みたいな成金の食客になりにきたのは気になりますねえ」
「かといって追い返す訳にも参りません。韓滔殿は百勝将と渾名された人物。機嫌を損ねると面倒ですよ」
「分かってます。ともかく客として迎える前に本人に会ってみましょう」
韓滔将軍と対面した宋江は絶句することになった。
長い眉毛に丁寧にケアされた肌、紅を差した唇。なによりも隆々とした四肢。
百勝将・韓滔はオカマだったのだ。
「あ、貴方が韓滔さんで、いいのでしょうか?」
「御覧の通りよ! 呼延灼将軍の名参謀にして名副将! 百勝将・韓滔とはこのあたしのことよ!」
(見ただけじゃ分からなかったから聞いたのですが)
宋江はそう思ったが口には出さなかった。
こういうデリケートな問題に不用意に口出しするものではない。
「あたしがきたからには大船にのった気でいなさい! 例え山賊がこの宋家村を襲ったとしても、このあたしがパパっとやっつけてあげるわよ!」
宋王朝の腐敗が進むとともに、国にいる山賊の数は増加の一途だ。食うに困った農民や労役から逃れてきた奴隷が、生きていくために犯罪に手を染めるからである。
山賊の中には数千の手勢を抱えて、討伐にきた官軍すら撃退している連中もいるという。
「韓滔殿。呼延灼将軍の名前はこの私ですら知っています。腐敗しきった官軍の中にあって、天下万民から名将と称えられる大人物です。
そんな将軍にお仕えしていた方がどうして我が家の食客に?」
気になって当然の疑問を宋清がぶつけた。すると韓滔は苦虫をかみつぶしたような顔をする。
やはりというべきか事情があったらしい。
「呼延灼将軍ったらあたしより後輩の彭紀ってやつばかりに別動隊の指揮を任せて、古株のあたしをないがしろにするのよ!」
「それは……閑職へ追いやられているということですか?」
「そこまでじゃないわ! 参謀は任せられてはいるわ。でも将軍はあたしをいつまでも一番上の地位にはしてくれないのよ! あたしだっていつか独り立ちして、将軍になりたいのに! 呼延灼将軍はそういう仕事はいつも彭紀にばっかり」
「成程。それで辞めてきたわけですか」
腕を組み考える宋江。
何度も言うようだが呼延灼は名将だ。部下に対して依怙贔屓するような人物ではない。だから韓滔がいつまでたっても別動隊を任せられず、参謀ばかりやらされているのにも、しっかりとした理由があるのである。
(けど口で言ったとしても、韓滔さんは分からないでしょうね)
上司である呼延灼すら韓滔に真意を伝えられなかったのだ。出会ったばかりの宋江が説得してどうこうなるようなことではない。
口で分からない相手には、実戦が一番だ。
「そこまで仰るのであれば、韓滔さんにはその実力をみせて頂きましょうか。ここより南に三百人ほどの手下をもつ山賊の寝床があります。
韓滔さんには同数の三百の手勢をお貸しするので、これを追っ払ってきていただけますか?」
「烏合の衆の山賊相手なんて、半分の百五十で十分よ!」
「それは頼もしい。ではお願いしましたよ」
韓滔は意気揚々と飛び出していく。
宋江にいいところ見せて待遇を良くしたい、というだけではない。百五十とはいえ自分が将として戦えるのが嬉しいのだろう。
「清」
「はっ」
「すぐに韓滔さんに貸すのとは別に精鋭100人を集めておいてください」
「韓滔殿に任せるのではないのですか?」
「覚えておきなさい。人には向き不向きというものがあります。韓滔さんはなるほど有能なのでしょう。無能な者をあの呼延灼将軍が参謀にするはずがありませんからね。
逆を言えば……その呼延灼将軍が頑なに一隊を率いる長にしなかったことには、相応の理由があるはずなんですよ」
宋江の懸念は当たった。
意気揚々と攻め込んだ韓滔であったが、副将や参謀であった頃は大将の下でのびのび発揮されていた才覚を、自分が総大将になるとまるで発揮することができないでいた。
韓滔は確かに才能はある。だがそれは参謀としての才能であって、将としての才能はなかったのだ。
結果韓滔は持ち味を活かせず、山賊相手に凡庸な戦いしかできなかった。
そうなると兵力が山賊の半分程度で、地の利もない韓滔軍の不利は明白。
「う、嘘でしょう!? こんな山賊相手に彭紀だったら簡単にけちょんけちょんにできるのに、兵が全然思うように動いてくれない!」
山賊に囲まれあわや全滅というところで、救いの手は伸びてきた。
精鋭100を率いた宋江が援軍として駆け付けたのである。
「やはりこういうことになりましたか。韓滔さんを救出して、ついでに山賊を捕縛しますよ。私に続きなさい!」
宋江は剣を抜くと先頭にたって突撃していく。
だがここで宋江にとってもまったく想定外のことが起きた。宋江が先頭にたったことで、宋江の存在に山賊の頭が気づいたのである。
「あの浅黒い肌に小柄な背丈。まさかあれが宋家村を大発展させた及時雨・宋江様では!?」
及時雨とは恵みの雨の意味である。
築き上げた財産を気前よく困った人々に分け与えることから、宋江はそう渾名されるようになっていた。
「全員、攻撃をやめろ! あれは官軍の討伐軍じゃない! 宋家村の宋江様だ!」
頭は手下たちに攻撃停止命令を出す。
すると困惑したのは山賊討伐にきた宋江たちである。
「兄上、どうなされます? なにかの罠では?」
「分かりません。負けたふりして逃げるならまだしも、突然攻撃を停止して棒立ちしてかける罠というのは、ちょっと考えにくいですね」
言いながら宋江もまた手勢に攻撃中止を命令する。
すると馬から降りた山賊の頭が宋江のところに近づいてくる。宋清の言う通り罠だった時のために、宋江は剣を構える。
だが心配は杞憂だった。山賊の頭は宋江の顔をはっきり見るや否や跪いたのである。
「やはり宋江様だ! 宋江様、このたびは相手が宋江様だと知らずに無礼なことをして申し訳ありませんでした!
この通り降伏いたしますので、私のことは首を切るなり役所へ送るなり好きにしてください! ですが……できれば手下だけは見逃してはいただけないでしょうか?」
「なにやら事情があるようですね。話してみなさい」
「……私の生まれた村は貧しく、保正も宋江様の御父上とは比較することすら烏滸がましいような下種でして。私達は朝から晩まで奴隷より酷い扱いで働かされました。
役所に訴えても役人は賄賂漬けの保正とグル。話すら聞いてくれません。逆に私たちを反乱分子であると取り締まる始末。生きていくには山賊になるしかなかったのです」
「酷い奴ねぇ! 元官軍の軍人として、そんな保正も役人も許せないわ!」
そう叫んだのは九死に一生を得た韓滔である。
官僚や官軍という組織全体が腐敗しても、中にいる全てが腐ったわけではない。周囲が腐る中、真面目に働く人間もいる。
そういう少数の心ある人物がいるから、宋という国は滅びずに済んでいるのだろう。
「事情は分かりました」
もう宋江には彼らを捕縛して役人に突き出すという考えは失せていた。
「話は変わりますが宋家村は急激に発展したせいで人手不足が深刻でしてね。山賊がやれるくらい体力のある人間が三百人ほどいれば、非常に助かるのですよ」
「え、そ、それって……」
「賊なんてやめて、私の村に移住しませんか? 幸いこちらに死者も出ていないようですしね。役人には鼻薬を嗅がせてやりますよ」
「ほ、本当ですか! ありがとうございます、ありがとうございます!」
こうして山賊三百人は悉く宋江に降伏した。
なお山賊を討伐すべき役人は宋江が賄賂を贈ると、あっさり討伐されたように書類を書き換えた。腐敗極まれりである。
「さて韓滔さん。討伐は予想外の形でしたが無事終わってなによりですが、私の言いたいことは分かりますね?」
「……っ」
「貴方は知略はあって参謀としては一流なのでしょう。ですが人を統べる統率力は人並みです。呼延灼将軍は貴方以上に貴方の長所と欠点を把握していたのですよ。だから参謀しか任せなかった」
「そ、それじゃ呼延灼将軍はあたしを信頼してなかったんじゃなくて……」
「これは私見なんですがね。信頼しない相手を参謀に任せるはずがないんじゃないですか?」
韓滔の目から大粒の涙が溢れた。
間違っていたのは尊敬していた将軍ではなく、自分だったことに漸く気づいたのである。
「韓滔さん。これからどうなさいますか? 貴方は食客、ここを出るも残るも貴方の自由です」
「あたし……戻るわ! 軍に復帰したいんじゃあないわ! あたしも百勝将と渾名された好漢! あたしを信頼してくれていた将軍に一度会って謝らないと名が廃る!」
「そうですか」
宋江からすると韓滔は余りにも惜しい人材だ。将軍としては平凡でも、呼延灼が参謀と頼んだほどの兵法は是非とも手元に置いておきたいものだった。
けれどそんなつまらない理由で男の旅立ちを邪魔するほど野暮でもなかった。
「呼延灼将軍の下へ戻るにも路銀がいるでしょう。短い間だったとはいえ客人の旅立ちです。これは私の気持ちです。受け取ってください」
宋江はパンパンと手を叩いて使用人を呼び出し、三両を韓滔に渡す。
韓滔から流れ出す涙が更に勢いを増した。
「宋江様……この韓滔。呼延灼将軍に誓って、この恩義は忘れないわ! いつか絶対、死んでも恩返しするわ」
「ええ、達者で。体に気を付けてくださいね」
去っていく韓滔を宋江は微笑みながら見送る。
これまで黙っていた宋清が口を開いた。
「良かったのですか、兄上。逃がした魚は大きいですよ」
「逃がしてませんよ。体のほうは逃がしましたけどね。もっと大切なものはちゃんと捕まえました」
宋江がにやりと言った。
後日。呼延灼将軍の任地にて。
呼延灼に謝罪にきた韓滔は、手続きもなくあっさり呼延灼の陣中へと通された。
「しょ、将軍! あたし……将軍に謝らないといけないことがあって、戻って参りました!」
「韓滔。長期休暇から帰って早々に騒がしいぞ。話なら後にしてくれないか」
「え? 休暇? あたしは将軍に辞職届を提出したはずじゃ……」
「なんのことか分からんな。私が聞いたのは貴官が長期休暇をとって宋家村に行くということだけだ。
そういえば休暇は今日までだったな。明日からはまた参謀として働いてもらうぞ。これまで休んだ分も、な」
厳めしい上官の男気に、韓滔はただ涙を流した。
百万言の感謝の言葉が湧き上がってくるが、韓滔はそれを全て封じ込める。恩は言葉ではなく行動で返す。それが百勝将・韓滔の仁義だったからだ。
そんな韓滔の様子を見た呼延灼は、韓滔が来た方向――――宋家村のある方角を眺めながら思いをはせる。
(宋家村の宋江か。ただの成金の孟嘗君気取りかと思ったが、人の噂も馬鹿にはできんものだ)
呼延灼は宋江の名を脳裏に深々と刻み込んだ。
宋江と呼延灼がこの広い中華で巡り合うのは、まだまだずっと先の話である。