二人で歩きながら
やば、ぐだぐたー
結衣が有栖の名前を出し、鷹斗が記憶を思い出すのに数分の時間、2人は踊る事なくただただ突っ立っていた。
「そっか・・・結衣は、あの時の結衣だったんだな・・・だから母さんの事も知ってたのか、ごめんな今まで気付かなくて、、、あの後あんな事があってショックからあの頃の事はあんまり思い出せなくなってるんだ」
その沈黙を破るように鷹斗は口を開き、結衣の事を思い出した事と当時の出来事から記憶に蓋がかかっている事を伝えると、結衣は首を横に振りながら言葉を返す。
「ううん、それは仕方ない事だよ。。。私はその場に居たわけじゃないから気休め程度にしかならないと思うけど鷹君が悪い事じゃ無いと私は思うよ?」
「そう言ってくれると助かるけど何も出来なかったのも事実なんだよ、だからこうして県外にまで出て来て・・・俺は逃げたんだよ」
鷹斗は結衣の言葉に対して自分は『逃げた』と言い下を向く。
「うーん、逃げたって言うのはちょっと違うと思うなぁ、勿論鷹君の行動だけ見たら受け入れたくない事から逃げたって思われても仕方ないのかもしれないけど、でもさ、きっとそれは鷹君の心が耐え切れなくなったから今はちょっと休憩してるだけなんだよ、だから逃げたとかじゃなくて休憩なんだよ」
「休憩・・・か、だとしたら随分長い休憩だな」
結衣の『心の休憩』という言い回しも鷹斗にはしっくりこずむしろ皮肉っぽく返してしまう。
「有栖ちゃんのお墓参りとかは・・・行って・・・無いよね?」
「うん、あの日有栖が死んでから一度行ったっきり行って無い、というより近づいたら頭が割れそうなくらい痛くなっちゃったり吐き気が酷くなったりで近づけないんだよ」
「そっか、きっと鷹君にとって有栖ちゃんはそれくらい大きい存在だったんだね、私も正直最初の3回くらいはずっと泣いてたもん」
「そっか、、、」
墓参りに行けないと言う鷹斗に結衣は自分も辛かったから鷹斗はもっと辛いよね、と鷹斗の心を理解した上で自分も泣いてしまっていた事を伝えるが鷹斗は相変わらず下を向いたままなので結衣はそんな鷹斗を見かねて自分の両手を叩き提案をする。
「それよりさ!もう踊るって感じじゃなくなっちゃったね!このまま2人でちょっとお散歩しよっか!」
「・・・・うん」
周りから少しばかり視線を感じるのが気になった結衣は話も話なので少し場所を離れて歩きながら話そうと言い、鷹斗もそれを了承して鷹斗は結衣の後ろを歩く。
「そう言えばさ、さっき詩織さんの事何で知ってるの?って話しだったけど私中学校上がるまでは毎年詩織さんと会ってたんだよ?」
少し歩いて周りに人がいなくなったのを確認した結衣は鷹斗が結衣に質問した答えを返す。
「え?結衣が?母さんと?何で?」
毎年?そんな話しは聞いた覚えがない、鷹斗はそう思いながらも自分の記憶から飛んでいるだけなのだろうかとも思い少し戸惑いながらも取り敢えず結衣に何故毎年母と会っていたのか問う。
「うん、毎年ね、お墓参りに行く為に夏休み有栖ちゃんの家に行ってたんだけど、命日の日に必ず詩織さん、有栖ちゃんのお墓参りに来てたんだよ?」
「え?母さんが有栖の?」
これもまた初耳だ、まぁ記憶の問題かもしれんが。
「うん、『鷹斗君が来れなくてごめんなさい、もうちょっと待ってあげてね、いつかちゃんと向き合って有栖ちゃんに会いに来るから』って」
「そっか・・・」
「そこで私も詩織さんから鷹君の事色々話し聞いててね、だから多少は鷹君が苦しんでた時の事知ってるんだ」
「そっ・・・・か」
結衣と詩織の繋がりを理解し、更に詩織が自分の代わりに毎年墓参りに行ってくれていたという事実を初めて知り、鷹斗は自分は本当に何を逃げ回っているのだろうか、と現実の自分に嫌気が差す。
そんな落ち込んでいる鷹斗に対して結衣は気を遣っているのだろう、笑顔で話を続ける。
「でね、私中学校上がる前に決心したの!私を変えるキッカケをくれた鷹君をいつか私が助けるんだって!それでね?私何したと思う?」
「え?分かんない」
何をしたと聞かれても当然分かるわけも無く鷹斗は分からないと答える。
「お父さんが単身赴任でアメリカに行くことになったから私もアメリカについて行ったんだよ!」
「えっと・・・・なんで?」
全く意味が分からない解答に鷹斗は取り敢えず理由を聞くことにする。
「向かうの人ってさ、何かポジティブ!って感じするからね、私も行ったらポジティブな考えが出来る人間になって、それで鷹君にもポジティブを分けてあげられるかな?って」
「なんか色々間違ってる気がするけど、、、」
結衣の意味の分からない説明に鷹斗は指摘をするが結衣は『そんな事なかったよ?』と言いそのまま喋る。
「んー、でも思い描いたのとは違ったけど、やっぱり言語も通じないからさ、周りの人もこっちもお互いに顔色見て何となくで接してたの!だから顔に暗い表情出さないようにー!とか練習していつも明るい感じで過ごしてたらそしたらね、気がついたら前向きな考え方出来る人間になっちゃってた」
「そっか、よくわかんないけど結衣は凄いな、俺は結衣が頑張ってる間ずっと引きこもってゲームしてたよ」
「だからそれは鷹君の心の休憩時間なんだよ〜、てかよく分かんないって・・・」
結衣はよくわからないと言われた事に少し頬を膨らませて怒ったようなフリをしている。
そんな結衣に鷹斗は一つたずねる。
「結衣は・・・今年は・・・行くのか?」
「うん、勿論だよ、偶然こうして鷹君と再開出来たわけだし、ちゃんと報告しておかなきゃなぁって思ってるよ」
質問の内容は有栖のお墓参りだ、鷹斗は結衣は今年行くのか気になって聞いてみるが結衣は即答で『うん』と答える。
「そっか」
「鷹君も一緒に行く?」
唐突に自分も誘われて戸惑う鷹斗。
「いや、、、俺は」
「いつまでたってもそのまんまじゃ何も変わらないよ?」
逃げ回ってばかりじゃいつまで経っても前に進めないと言い結衣はそのまま言葉を続ける。
「ねぇ?鷹君はどうするのが正しいと思うの?」
「・・・・そんなの、聞かなくてもわかるだろ」
鷹斗も当然自分がどうすべきなのかなど当然頭では理解している、だが心がそれを理解してくれないのである。
「鷹君、君は私に昔言ってくれたんだよ?『結局のところ自分が正しいと思う事を行動しなきゃ楽しくない』って、、、勿論お墓参りに行くのが楽しい訳なんて無いけど、その事と向き合わなきゃきっと日常に楽しいを感じられないんじゃないかな」
結衣の言葉に鷹斗は言い返す言葉も無かった、結局のところゲームをして楽しい等と思った所ですぐにそんな感情は失われてしまうというのはいつも感じていたからだ。
それに結衣に関してもそうで、結局自分が好きな人にも未だに過去と向き合えていないせいでその感情すら認める事ができない。
「俺・・・行っても大丈夫かな、、、ちゃんと有栖と話し出来るかな、、、」
「大丈夫だよ!有栖ちゃんならきっと『やっときたの?おっそいなぁ、待ちくたびれたよ』とか言いそうだよ、それに私も一緒に行くから!」
「それはみっともない所見せそうでなんか嫌だなぁ」
「今更なような気もするけど?」
「それもそうか・・・」
「でもね、鷹君がどんなけみっともなくったって私は鷹君の味方だし鷹君と一緒にいるよ?」
「えっ?」
結衣の突然の告白紛いな言葉に鷹斗は驚き思わず結衣の方を見ると結衣は真剣な顔で鷹斗をジッとみていた。
「何はともあれ、今年は一緒に有栖ちゃんの所に行こうね、今度こそ約束だよ!」
・・・約束、一度破った鷹斗には言い返す言葉が無く無言で結衣の言葉に頷いた。
「ん!じゃあ今日はここまででまたその話しは今度しよっか!そろそろ杏が一人で退屈してそうだしね!」
「それもそうだな」
結衣はひとまず鷹斗がお墓参りに行く事を決めてくれた事に納得したようで、2人は杏の待つペンションへと帰るのであった。
忙しいよぉ。。。




