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150回目の告白 〜団長、大好きです!!〜

作者: 鍋の猫

お読みいただきありがとうございます!

「ユリウス団長!!大好きですっっ!!結婚を前提にお付き合いしてください!!!」

 青空が広がって心地良い風が吹いている騎士団専用の鍛錬場。そこに、今日1番の大声が響き渡った。

「ま〜たやってるよ」

「こりないな」

「若いっていいな」

 等とほかの騎士たちが言いあいながら見つめるなか、告白をした張本人、この紅の騎士団において紅一点であるエリーナ・メルベルはカチンコチンに緊張していた。

(やばい、私これまで幾度となく告白しては振られてきたけど、今日振られてしまったら通算150回目に到達してしまう……これは、かよわい乙女にとって由々しき事態だ…!こうなったら、スキを見て一時撤退しなければ!!)

 そう、紅一点であるエリーナ・メルベルはユリウス団長に初めてあった時に一目惚れをし、それ以来努力に努力を重ねてユリウス団長率いる紅の騎士団に入ったのだ。逆に言えばそれほどまでにユリウス団長への愛が溢れており、入ってそうそう団長に告白するという新米騎士にとって度肝を抜かされるような偉業を成し遂げたのだった。しかし、それも今日で150回目。エリーナ曰くかよわい乙女(?)の恋心も150回振られたともなれば儚く砕け散ってしまうものらしい。それ故にエリーナは団長からの返事を待たず撤退という名の言い逃げをしようとしているのである。そして、今まさに逃げようと団長から背を向けた時、エリーナの頭をがっしりとした手が覆い被さるように掴んでいた。

「おい………何逃げようとしてんだよ、エリーナ・メルベル。」

 どこか怒っているような言い方に頭を掴まれた状態のままクルリと団長の方に向かされたエリーナは半泣きになりながら必死にもがいた。

「団長!!私、団長の騎士団に入って1日目に告白してから振られるのって今日で150回目なんですよ!!私がどれほど毎日毎日決死の思いで団長に言っているのか団長は知らないからそんなに冷たくできるんですよぉ……ウッ……エグッ……」

 とうとう泣いてしまったエリーナに団長であるユリウスは戸惑いを隠せなかった。それもそのはずエリーナは泣く子も黙る鬼の団長である自分の厳しい鍛錬を大の男でもヒーハーヒーハー言っているなか、泣き言ひとつ言わず黙々とやっていたため頭を掴んだぐらいで泣くとは思っていなかったのである。実際はそんなことでエリーナが泣いていたわけではなく、団長の勘違いなのだが…。しかし、焦ってしまった団長は鷲掴みにしていた頭を離しどうしようか考えあぐねていた。それを泣きながら見ていたエリーナはダッと走り出し団長から十分に距離をあけた状態でいきなり振り返ると団長に向かって彼女持ち前の大声で叫んだ。

「冷たい団長なんて嫌いです!!団長なんて、禿げてしまえ!!タンスの角に小指ぶつけて泣いてしまえばいいんだ!!乙女の心を踏みにじるようなやつは最低だーーーー!!!!」

 そう叫ぶと脱兎のごとく逃げ出していった。

 後に残されたのは、一方的に言われた団長であるユリウス・ペンドラゴンと紅の騎士団に所属している筋骨隆々の男たちだけだった。

 一方そのころ、団長から逃げ出したエリーナは王城の近くにある噴水の縁に座りいじけていた。

「別に私なんて団長にとっては取るに足らない存在かもしんないけど、少しくらいは考えてくれてもいいじゃんか……やっぱり団長のことを好きになってしまった自分がいけないのかな……でもやっぱり好きだし…諦めたくないよぉ…」

 そう言って顔を俯けた時、フッとかけが足元にさした。

 エリーナはその影が団長の影であることに気づいたが、いじけていたのと団長の前で泣いてしまった気まずさもありわざと気付かないふりをした。しかし、その影もとい団長は動く気配が全くなくジッと自分を見つめているような気がするのだ。


 ―10分後―


「団長!!何なんですか!!」

 痺れを切らしたエリーナが顔をカッと上げ団長を睨んだ時、当の団長は少し意地悪な笑みを浮かべていた。

「やっとこっち向いたか」

 そう言うと団長であるユリウスはため息をひとつ着いた。エリーナはそんな団長の態度にとうとう呆れを通り越して嫌われたと思いまたもや逃げようとした。

「あ!おいおい、逃げんなって。お前に言いたいことが2つあってここまで追いかけてきてやったんだからな」

 そう言って団長に肩を上から押さえつけられたエリーナは渋々ながらも座り込んだ。

「まず1つ目だ。別に俺はお前のことは嫌いではない。しかし、好きでもない。それは、お前と出会ってからの日数が少なすぎてお前のことをよく分かっていないからだ。お前は、冷たすぎる!と怒っているようだが毎日毎日鍛錬が終わる度に猪のように突撃されてみろ、戸惑うに決まっているだろ!まぁ、その事でお前を傷つけたのならすまなかった。ただ、お前の俺に対する好意をこれからは全力投球してくるんじゃなくもう少し考えて「団長は私のことを嫌いではないのですね!!」

 団長の話を遮るほどエリーナは喜びに満ち溢れていた。

(団長に嫌われているとばっかり思っていたから、本当は嫌われていなかったんだ!!)

「団長!なら、お手柔らかにすれば告白しても何をしてもOKなんですね!!」

 そう言いながらピョンピョンはね続けるエリーナを見ながら団長は呆れたようなでもどこか優しそうな表情で

「まあ、そういうことだな」

 と了承した。

「よーーーーし!!!団長、絶対振り向かせてみせますから!!」

 そう言いながら意気揚々と駆け出そうとしたエリーナの頭を団長であるユリウスが掴んだ。

「まだ、話は終わっていないぞ。2つあると言っただろう。」

 その声に冷たさが混じっているのを感じ取ったエリーナは団長の手をひっぺがそうともがいた。

「なあ、エリーナ。団長に対しての言葉遣いというものを俺直々に打ち合いをしながら教えてやろう。」

 そう言った団長にエリーナはここに来るまでの数々の暴言を思い出した。その数秒後嘆きの悲鳴が響き渡ったのは知る由もない。


 そして4年後、誰もが思っていたとおりに2人が結婚したのはまた別の話である。

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