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未来からの帰宅  作者: 圧縮
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第7話

 翌朝、いつものように修練をする。ラメールは、また縁側で修練と庭を眺めている。

 そんな、穏やかで、涼やかな早朝とは違い、昨夜は酷かった。

 大人4人の暴走に巻き込まれた子3人。

 飲めや騒げやの大混乱であり、(しゅう)がいつものようにラメールに食べさせて居る所さえも、後でいじられた。

 あんなに甲斐甲斐しく、そして2メートル級の大男が小さく細々と優しくしている所が、どうやら昨夜のツボにハマったらしく、酒の肴になっていた。

 陽向(ひなた)(あきら)も、小さい頃の話しで羞恥の限界まで来ていたが、どうすることも出来ず、食べることに専念してウサを晴らしていた。

 だが、隣の部屋で余りにも騒がしくするのは、彼女の様態にもよくないと考え、エアコンの付いている舟の部屋につれていき、そのまま逃げて眠ることにした。

 翌朝起きた時に彼女も一緒に目が覚め、一緒に連れて行くことに。


『おはよー』


 いつもの様にお茶用のお湯をかけてから雨戸を開け、修練着に着替える。

 修練し、そしてそのついでに庭の手入れをする。

 ツバメも親を呼び、ご飯をねだる。

 それに合わせて、彼女も小さく呼ぶので、ご飯を作ることに。


『ごーはーんー』


 しかし、今日は9人前、いいや、8人プラス一人か。必要になる。

 米は昨夜の内に準備を終え、6時過ぎには炊き上がる予定だ。

 味噌汁用の冷蔵庫に入れてある昆布出汁も追加しておいたので、8人分は大丈夫だろう。それ以外に、新鮮な卵、納豆、それらに入れるネギ等の準備。それ以外にも、庭で育ててるオクラを4本程とり、塩ズリをしてから湯がき、切り刻む。納豆に入れるにしても、そのまま食べるにしても良し。先日収穫して白だしにつけておいたオクラも冷蔵庫から取り出す。タンパク質系は、どうしようかと悩む。焼鮭が定番だったりするが、準備は無い。生卵を食べない人に向けてだし巻き卵でもと思うが、手間を考えると、他のにしたくなった。冷蔵庫を覗くと、直径5cm、長さ10cmくらいのお中元とかで見るソーセージがあった。コレを3mmくらいの厚さで切り、魚を焼くロースターに入れて焼く。適度に油が落ち、直火が当たる所はカリカリになるので意外と人気がある。


 そして、米が炊き上がると、彼女のおかゆを作る。

 昨日はレトルトのおかゆの5分の1を平らげてしまったので、もう少し多めに。子供用茶碗一杯くらい準備する。

 吸い飲み器も煮沸消毒し、水とスポーツドリンクの準備を終えて。

 そろそろ、ビタミン系の摂取もしていかなければならないと思い、先日買っていたメロンを一口サイズに切っていく。一口サイズはもちろん他の人向けであり、彼女には、もっと小さく、そして柔らかい所にするが。

 開いているコンロを使い、ヤカンでお湯を沸かしてあり、その湧いた音がする。一旦そのお湯を簡単に覚ますために、大きめのポットに一旦お湯を入れ、ヤカンに戻す。何回か行うと、温度が下がり、お茶の渋みが減りやすくなる。ただ、頭がいたい時には渋いお茶も好きだと言っていた大地(だいち)さんも居るが、大抵多数決で負けてこのお茶を飲むことになる為、結局この作り方に自然と定着していった。

 そして、人数分以上のお茶を用意する。多分二日酔い、頭が痛くなくとも、アルコールが残っている人も多いだろう為、水分補給として多めに作っておく。

 ピッチャーみたいな大きさのポットに約2リットルくらいのお茶を用意し終えた辺りで(はな)さんが起き始める。


「あら、舟君。おはよう。今日も手伝わないでごめんね」


「大丈夫です。多分、そろそろ伊万里(いまり)さんが戻ってきますので、お皿をお願いできますか?」


「はーい。伊万里ちゃんは大変よねぇ」


「でも、そのおかげで美味しい野菜を頂けますから」


 伊万里さんは、舟が起きるより前に、自分の畑に向かっていた。多分、今日の朝取れた野菜を使って一品作って持ってくるだろうと考え、これ以上作るのはやめていた。


「舟、おはよう」


 晃と大地さんが起きてくる。多分そろそろ明夫さんが起きて、最終的に陽向を誰かが起こしに行く所だろう。

 準備を終えると明夫さんが目を覚まし、伊万里さんが来て、一品並べた辺りで、皆が食べ始める。陽向はまだ起きてきていないが、まあ、食べつくされる前にと言うか、最後に食べ尽くすのは舟と陽向であった為、まだ起きてこなくても問題なかったりするのだが。


 そして、舟は自分の食事より先にラメールの食事をさせる。

 その光景を皆に見られながらと言うのは、流石に恥ずかしい。

 気管に入ることを恐れての食べさせ方なのだが、もっといい方法があるだろう。ただ、それを知らないし、体型差でこの方が楽なので、このままになっている。そして、彼女もそのほうが落ち着くのか、しっかりと食べてくれるのだ。

 今日はおかゆを多くしたけど、全部食べられた。


『おいしっ』


 ただ、その後に用意したメロンで目を丸くしていた。


『なにこれ! すっごく甘い! 香りもいいし! 歯を洗う時の奴より、美味しい!』


 初めてのデザート。メロンの美味しい所をスプーンで口に入れると目を見開いて喜んでいた。その様子をにこにこしながら眺めていると、食事をしていた面々もニヤニヤしていたので、舟は真っ赤な顔になってうつむいてしまった。


『もっと!』


 なんとなく言いたいことがわかってきた舟は、彼女を横たえ、もう少しメロンを切りに行く。初日の食事状態を考えたら、凄く食べられる様になってきた。凄く嬉しくなってくる為、自然と足取りが軽い。

 そんな所に、いつの間にかに起きて食事をしている寝ぼけた陽向が足払いをしてくるが、何も気づかずに避けてしまい、後ろから蹴られてしまった。




 皆が帰宅、出社し終えた後、後片付けをし、彼女が眠っている所で、買い物に出る。

 商店街に入った辺りで、どこから買っていこうかと考える。今日の買うもの。昨日今日で消費した食材、彼女の為の食べられそうな食材、そしてフルーツ。乳幼児用のお菓子もありかもしれない。そう考え、八百屋、雑貨屋と向かおうと思った所で思い出す。

 陽向の言っていた一言。「パンツはいてないの?」という一言を。

 そう言えば、彼女は祖父の使わなかったパジャマと、自分のTシャツ。その下は裸だったのを思い出す。パジャマや肌触りの良い女性服。コレを買うだけでもハードルが高いのに、女性の下着は完全にとんでもない位置にあるハードルだ。


 知り合いの女性陣。陽向、花さん、伊万里さん。連絡先は知らないが、美術部の部長さん。チア部の部長さん。ゼミでの数名。誰に相談すべきかと言えば、始めの3人だろう。だが、運の悪いことに、帰り際にラメールの事で困ったらなんでも言ってと言ってくれた伊万里さんは、商店街の打ち合わせ。花さんは、マンションの奥様方とお茶会の為、連絡は取れない。最後に残った陽向だが、夏休みに入った雄樹(ゆうき)君とデートだと言っていた。


 万事休す!


 実際、今日無くてはならないものでは無い。だが、彼女の肌を考えれば、できるだけ早いほうが良いだろう。

 何もしていないのに、汗をかく。昼過ぎなので、太陽が上がり、暑くはなっている。だが、それとは違い、背中が冷たい。

 とりあえず、最強の敵は最後に回し、パジャマを買いに行くことにした。


 場所は、陽向のおすすめのタオルが置いてあるお店。右半分が男性用としてまとまり、真ん中が兼用、左側が女性用と別れている。男性用側に入り口があるため、舟でもこの店は入りやすかった。

 だが、今回の目的は左側の中段壁際。少なくとも2m級の大男が一人で行くような場所ではない。しかし、彼女のことを考え、店の中には入る。

 その場に行か無くてはならないと考えると、鼓動が早くなる。だが、まだ男性用コーナーである為、自分のものを探しに来たという形を作ることが出来、周りの目をごまかせている、はずだ。


 徐々に、兼用コーナーに移っていく。ここまでは陽向の買い物で付き合って来たこともあるし、自分でもこのタオルを使っているため、来ることは出来る。だが、その隣の1メートルと無い通路、そこがまるで大河のように行く手を阻む。

 そして、その先を見渡すと、黄色、白、ピンク、水色等の淡いパステルカラーの物が沢山見える。男性用コーナーでは、紺、黒、白、茶等が多い為、落差が非常に強い。


 その為、見ているだけで鼓動が早くなる為、男性用コーナーを見て気を落ち着かせる。

 しかし、また女性用コーナーを見ると鼓動が早くなる。ここまで体が大きくなければ……。初めてこの大きな体を呪った。そして、陽向や花さん、伊万里さんに朝の内に相談しなかった自分にも呪った。

 だが、このままここで立ち尽くしていても、怪しい人と思われるだろう。意を決して大河を渡る。実際には歩幅があるために1歩で辿り着いてしまうエリアでしかない。だが、感覚的に底なし沼からの脱出かのような重い足取りだった。


 神域とでも言うかのようなエリアの突入に成功する。視界に入る物が全て淡い色で統一されている。しかし、この一歩で留まっていては、目的を達成できない。目の前に何か見えない壁があるかのように、重圧を感じつつ壁側の棚に向かう。

 およそ5歩。たかだか5歩だが、精神的には持久走を走り終えた様な気分だった。

 だが、なんとか目的のパジャマコーナーに辿り着くことが出来た。


 色々な柄のパジャマを見つけることが出来た。水玉模様、無地、ストライプ、キャラクター。それぞれに素材が違うようだが、全てに肌に優しいと書かれている。よし、これならば大丈夫だと、思い手を伸ばす。

 しかし、そこで問題が発生する。


 サイズがわからない!


 完全に頭の中からそれが忘れ抜け落ちていた。彼女を抱きかかえた時、どのくらいあっただろうか。何を持って彼女のサイズを基本にすれば良いか。ぐるぐる頭の中で回転するが、とりあえず、布団の端まで足が来ていた事を思い出し、170以上はあると推測する。

 ならば170と書いてある物を探せば良いと判断し、探す。


 だが、サイズはSS、S、M、L、LLとしか書かれていなかった。

 自分の場合はLLLでもきつい時がある。しかし、陽向に聞いた記憶では、男性用と女性用では同じ文字でも大きさがかなり違うと。自分の基準では全く当てにならず、何を買えばよいのか、完全に行き詰まってしまった。


 しかし、そこに救世主、いや、平均サイズ表記なるPOPを発見する。パジャマなので、少しゆったり目に作ってあるからLでも大丈夫そうだ。しかし、彼女の身長がそれ以上であった場合、お腹が出てしまわないか、そう考え、LLにすべきか悩む。だが、彼女はとても細い。LLサイズだと、余計な布地が多くなってしまうのではないかとも考えられる。

 一頻り悩み、Lサイズのパジャマを水玉、無地、ストライプの3種類を買うことにした。


 各Lサイズを取り、なんとかミッション半ばまで辿り着く。

 その達成感で一息付いて、さあレジだと思った瞬間、右側、最奥のコーナーの商品が視界に入る。


 肌に優しい女性用下着だった。


 羞恥心の限界を突破しかけた舟は、一目散にレジに向かい、会計を済ませる。

 女性店員が、少し微笑みながら「贈り物ですか?」と聞いてくるが、何を答えたかさっぱり覚えてない。店を出た後、特に包装されていない所を見ると、適切な答えを出せていたようだ。

 しかし、コレだけで1万5千円。痛い出費だった。

 だが、彼女のためだ!と思い直して、買い物をしなくてはならないものを思い出す。


 肌に優しい女性用下着……。


 またこの店に入らなくてはならない理由を思い出してしまった。




 昨日と今日の朝消費した買い置き食材や、今日の昼、夕食用の材料を先に買い終え、再度この戦場に辿り着く。少なくとも連戦は自分の心臓と心に多大な影響を与えてしまうことが想定されたからだ。しかし、考えてみたら、この様なお店は両手いっぱいに荷物を持った状態で入るには違和感がある場所だった。店内が混んでいなければ、確実に声をかけられてしまうだろう。本来であれば、専門家の意見を聞くという事で、正解に導きやすいはずだ。しかし、今回買わなければならないのは、女性物下着。過去に買ったこと等一度もないし、買うことを想像したことさえ無い。しかし、現状を客観的に見て、店の外で荒い息で大量の汗を書いている大男が居る。これだけで通報されてしまうだろう。その為、再度意を決して店内に入る。


 いつも通りに来店の挨拶が来る。しかし、今回に限り、その言葉が非常に怖く感じた。

 店内はエアコンが効いているため、涼しい。おかげで一気に汗が引いていく。心を落ち着けるために、再度男性用コーナーを見ていく。陽向がプレゼントしてくれる事もあるので、見たことある物もちらほらある。だが、心の隅でラメールの為の下着という事がチラチラ顔を見せるため、その度にドキッと心臓が一回跳ね上がる。


 時間は少しずつ12時に近づいていく。もうそろそろ帰らねばならない。このまま帰りたい気持ちもかなり多い。だが、このまま帰ってしまって良いのかと思う部分もある。

 彼女のため、彼女のため、呪詛のように心でつぶやき続け、その一言毎に一歩、いや半歩ずつ、例の大河まで近づいていく。

 しかし、その大河に入る手前でやはり足が止まってしまう。先程この大河を渡ったため、行けるだろうと思っていたが、やはりその先にある巨大な山を考えると、簡単に足を運ぶことが出来ない。目の前にある商品を手にとって眺めるふりして心を落ち着けようと思ったが、両手にいっぱい荷物を持っていた。

 途方に暮れた時に、声がかかる。


「何かお探しですか?」


「ほぃっ!」


 女性の店員さんから声がかけられ、予想外の事で変な声で返事をしてしまう。しかも、肯定する方に。


「そうですか。どういったものをお探しでしょうか。あ、その前にお荷物、レジにてお預かり致しましょうか?」


 フレンドリーににこやかに、そして爽やかに話をしてくる。この様な女性との会話は殆ど経験がない。フレンドリーだけで言えば、陽向に軍配が上がるだろう。だが、あれは行き過ぎと言える。花さんや伊万里さんはまた違う方向だ。一番近いと言えば蒼衣(あおい)さん。しかし、姉御と読んでも良いような人な為、また違う。この様な柔らかな人は自分の周りには居なかった為、それだけで緊張してしまう。そして、言われるまま、命令をくだされたロボットの様に反応し、両手の荷物を渡してしまう。


「お……重いですね……」


 片方だけを持った所で女性の店員はそう言ってしまった。当たり前だろう。今日は来ないと思うが、約8人前の食材だ。軽いわけ無いのだ。

 その為、もう一度持ち直し、女性店員に連れられてレジに向かい、荷物を預かってもらってからもう一度同じところまで戻ってくる。


「どういったものをお探しですか? 先程見ていた辺りでしたら、低刺激の美容石鹸辺りかと思うのですが……」


「あー……」


 ふと思った。彼女は今日もお風呂に入れなければならないと。それと、女性用下着を切り出すためにはもう少し自分に時間が必要になるだろうと思い、話に乗る。


「良い香りの」


「良い香りのですね。それでしたら、この4つが当店の人気商品になっております」


 簡単に4つ出してきて、匂いを確かめさせてくれる。どれもいい匂いであり、きつい物は一つも無かった。


「これを2個ずつ、それと髪用の」


「はい。こちらも低刺激タイプの物でよろしいですよね。それでしたら、この二つがおすすめ致します」


 ラメールの好みがわからないため、この二つも買うことに。


「他はよろしいですか?」


 さあ、あっという間に話が終わり、心の準備が出来てない間に言わなければならなくなった。だが、ここで逃げ出すと、また来ることが心苦しくなる。その為、決死の覚悟で店員さんに告げる。


「女の子の下着……」


 ただの変態だった。この言葉だけで止めてしまった事を後悔した。

 女性の店員さんも、笑顔が固まり、どうすれば良いのか、悩んでいた。


「あ……、体弱い……。優しい下着……」


 慌てふためきながらなんとかこの言葉を紡ぎ出すことに成功した。

 おかげで固まっていた女性の店員さんも、固まっていた笑顔もなんとか氷解し、ほっと胸をなでおろす様な仕草が少し見えた。


「それでしたらこちらにございます」


 スタスタと舟が渡ることの出来なかった大河を渡っていく女性の店員さん。釣られて、いや、置いていかれまいとして、ついていく。

 すると、先程羞恥心の限界突破点まで近づいた女性専用エリアの最奥に辿り着く。運良く、この場所には他のお客様が居なかった為、奇異な目で見られる、いや、この身長な為、店内のどこからも舟の事は見えただろう。だから、直近から奇異な目で見られる心配は無かった。


「肌に優しいのはこちらの商品になります」


 ブラジャーとショーツが至る所に吊り下げられ、舟の羞恥心は一気に限界突破まで近づいてしまった。だが、ここで走って逃げ出す事も出来ず、クラクラする頭でなんとか対応する。


「それじゃ、それを3つずつ……」


「サイズはどうなさいますか?」


 サイズ、何のサイズだと一瞬理解できなかったが、ブラジャーのサイズだった。


「お胸の大きさはどのくらいでしょうか。先程のパジャマと合わせるとこちらになると思いますが、細身の方もいらっしゃいますし……」


 胸と言われて一瞬理解できなかったが、理解できた瞬間、沸騰したように舟の顔が赤くなる。更には、先程迷いに迷っていた買い物にも気づかれていた。当たり前だろう。こんな体の大きな男が女性用のパジャマを四苦八苦して買っていっているのだから、少なくとも数日は忘れないだろう。女性の店員さんはその様子を茶化すことせず、色々と話してくれるのだが、もう頭に入っていなかった。その為、手のジェスチャーで、このくらい。このくらい。これだけを繰り返し、色もなんとか選び、購入することが出来た。

 店の外に出てから気づく。なんか立派な包装に入っていることに。

 どうやら、彼女へのプレゼントと言う様に捉えてくれていたらしい。

 買えたことへの安堵と、二度とこの様な事は体験したくないと思い、そそくさと家に戻ることにした。





 ちなみに、舟は店内でこの様な会話があったのを知らない。


「店長、あの人さっきも居ましたけど、大丈夫ですか?」


「あー、彼ね。大丈夫。人畜無害だよ。それに話してみると結構かわいーのよー」


「えー? 怖くないですか?」


「大きな体だからね。怖いって思う人が多いけど、この商店街では有名な子よ。大きいけど優しいって皆知ってるから」


「へー」


「それじゃ、行ってきなさい」


「えっ!」


「だいじょーぶ。食べられたりしないから」


「ほんとですかー?」


「良いから行きなさい。あれは絶対困ってるから」


「はーい」




 買い物後。


「店長! すっごい可愛かったです!」


「いったでしょー。可愛いって」


「真っ赤になっちゃって、恥ずかしくてクラクラしてるのもわかっちゃいました!」


「イジメてないでしょうね?」


「イジメたつもりは無いんですけどねぇ。商品の説明してたらどんどん赤くなっていくんだもん」


「なら、大丈夫かな」


「また来てくれないかなー」


 知らないという事は、幸せだと言う事だった。




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