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未来からの帰宅  作者: 圧縮
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第4話

 彼女との生活を初めて3日目。

 呼吸も落ち着き、回復に向かっているように思える。

 回復がどこの点なのかは、現状なんとも言えないが、一般女性の行動が出来るようになるまでにはまだまだ先が長いだろう。

 初日から一日二日で終わるとは思っていなかった為、タオルや歯ブラシや洗浄液も買ってきた。初日は、スポーツドリンクを飲んだだけで夜まで寝てしまい、もう一度飲ませて安心させると直ぐに眠ってしまった。


 その為、昨日、ようやくチャレンジすることが出来た。

 歯磨きである。

 スポーツドリンクとはいえ、歯に糖分がつくと、虫歯の原因になってしまうだろう。最先端科学では原因が違うかもしれないが、今の自分の常識であればそうなっている。

 その為、彼女にも歯を磨いてもらいたいと思い、実演する。


 ゆっくりと丁寧に、こう磨くんだよと見せながら。

 クッションを重ねて背もたれにしているので、真剣な眼差しでとこちらを見てくる。

 何をやっているのだろうというところか。彼女の住んでいる所には、歯磨きの習慣が無いのかと疑うが、とりあえず、そのまま見せ、持ってきた洗面器に水を含んでゆすいだものを出す。

 きれいになった歯を見せ、ようやく納得したようだ。

 万が一飲んでしまっても大丈夫なような、子供向け歯磨き粉を買ってきたのだが、スポーツドリンクを飲ませた時を考えると、飲み込んでしまわないか不安になる。

 不安になった為、結局低刺激タイプの歯磨き粉を付け、背中から抱きかかえるようにして彼女の歯を磨く。

 ヌルヌル、ザラザラしている感覚が不愉快だったのか、嫌な顔になっていったが、口の中が泡でいっぱいになっていくのが面白いのか、表情がコロコロ変わっていく。

 異性に歯を磨かれる事はとても恥ずかしいと誰かが言っていたが、彼女はそんなことは無く、簡単に受け入れてしまった。


「ぺって出してー」


 彼女を前のめりに体と頭を支えながら、吐き出すように促すと、しっかりと吐き出してくれた。水を含ませ、ゆすいでもらってから吐かせる。幾度か繰り返すと、口の中がスッキリしたようで、驚いた顔になる。

 とても知的で素直な子供の様な感覚で非常に楽と言えば楽なのだが、見た目は美しい女性。初日は心配が勝って何も考えなかったが、昨日からは余裕が出来、美しい女性を抱きかかえると言う行為が少し気恥ずかしかった。陽向(ひなた)(あきら)が居たらなんて言われるだろうか。

 3日目の今日に帰ってくる予定だ。だが、しっかりと遊び通してくる様な二人だから、明後日顔を出すことだろう。それまでに彼女のことを説明できる様にしなくては。




 甘くて美味しい水と、普通の水。交互に飲ませてくれるけど、やっぱりあの白くてドロドロした物も食べたいと思う。甘くておいしい水とは違った甘さがあって、美味しかったから。でも、またあの苦しい思いをしたいかと言うと、そうは思わない。でも、食べたいと思い、口を小さくパクパクさせるが、彼には今日は通じなかった。


 彼が目の前で、歯にブラシで何かをこすりつけ始めた。

 泡がどんどん増えて面白い。そんな食べ物あるのかと思っていたら、ぺっと吐き出してしまった。口に含んだ水を動かした後、ぺっと器に吐き出す。そして、歯を見せてくる。

 以前の状況がどうかと覚えていないが、ちょっとキラキラしていた。

 つまり、歯を洗っていたのだとそこで気づく。

 昔の映像にそんなシーンが少しだけあったような記憶があるが、正直自信がない。でも、ちょっとおもしろそうと好奇心にかられてくる。


 彼も、それがわかったのか、私の口に入れてくる。

 ヌルッ。ワシャワシャ。

 始めのぬるっとした感触は非常に気持ち悪かった。香りも何か強い物で、美味しくなかった。気持ち悪くて吐き出しそうになったが、ワシャワシャした感覚は気持ちよく、そして、口の中が泡だらけになっていくのが面白かった。気づいたら気持ちの悪い感触はなくなり、強い香りにも慣れてきた。


「****ー」


 相変わらずなんて言っているのかわからないが、やってほしいことはわかった。

 彼と同じように泡を吐き出す。

 口の中にものすごくいっぱいの泡があったように思えたけど、意外と少なくてちょっと残念だった。そして、水を含み、彼と同じように吐く。

 歯を舌で触ると、ツルツルしていた。

 なるほど。これは気持ちがいいし、楽しい。また頼みたかったけど、毎回やるものでは無いのだろうと思い、次やってくれることを楽しみにした。

 出来たら美味しいのでやってほしいなと思ったけど。




 3日目の昼、彼女が口をパクパクさせている様子がわかった。


『白いのちょーだい。ちょーだい』


 スポーツドリンクで満足したのかと思っていたが、ひょっとしたらおかゆも食べてみたいのかと思った。しかし、また初日のように吐き出すかもしれない。だが、2日スポーツドリンクで過ごせているのだから、胃の方は少し慣れてきて、少量なら大丈夫かもしれない。そう思い、少しのおかゆを作る。

 しかし、ほんの少量だけ作ると、水の分量を失敗するのと、米から作ると時間がかかるので、冷や飯から作る。

 10分少々で作り上げ、粗熱を取る為にバットに広げる。

 小さな器に四口分のおかゆを入れ、彼女のもとに向かう。

 彼女の目を見ると、少し嬉しそうだった。やはりこの判断は間違っていなかった。


『また食べられる! やった!』


 万が一吐き出しても良いようにタオルと絞ったタオルを持ってきて、準備をする。


『準備は万端だね。でも、今日は出さないよ!』


 彼女も少し緊張しているのがわかるが、ゆっくりと口に運び、食べてもらう。

 強く咀嚼出来ないが、ゆっくりと飲み込む。レトルトのものより、水加減が少なかったのか、味が濃く感じたようで、目が驚いていた。


『この前と何かが違う? 香りが良い!』


 そして、すぐに飲み込み、次を再即する。

 四口分だったが、五回に分け、全て食べることが出来た。

 もう少し欲しそうな顔をしていたが、万が一を考え、これだけで終わりにする。


『けちー』


 一緒に準備していた昼食は、もう冷めていたが、気にせず食べる。彼女を観察しながら食べられるので、冷たいのもさほど気にならなかった。全て食べ尽くすまで、五分程度だが、その間彼女は吐き戻すことはなかった。

 手早く食器を洗い、後片付けを終え、彼女の元に戻る。

 疲れたのか、既に眠ってしまっていたが、呼吸も落ち着き、のどに何か詰まったような音も無い。歯磨きするかと思ったが、今日はこのまま寝かせようと思う。


 夜も少しおかゆをせがむので、昼と同じだけ食べさせることに。


『はやく、はやくっ』


 一口おかゆを入れると、嬉しそうに食べる。ここ数日でようやくあまりわからなかった表情の動きも読めるようになってきた。こちらにも余裕が出てきたからか、彼女も慣れてきたのか。結構喜怒哀楽が大きく動いてるらしく、とても魅力的な女性だった。

 歯磨きも、やはり最初が気持ち悪いらしく、口に入れた瞬間嫌な顔をした。だが、今日はその後が嬉しそうな顔になる。今日は子供用のイチゴ味にしたのだ。


『なにこれ! 甘くて美味しい! でも、飲んじゃダメなやつだよね?』


 女性は甘いものが好きというのがこんな所に出てくるとは本来思わないのだが、なんとなく思い出してしまった。

 飲み込まないことは昨日で確認済みなため、問題なく使うことが出来た。


 ちなみに、初日から何かあった時の為に、同じ部屋で寝ている。

 今の所何もないので、問題ないとは思うのだが、万が一を考えてだ。ひとつ屋根の下で男女が暮らしていると言う言葉だけでも、陽向や晃に色々と言われそうなのに、同じ部屋で寝ているなんて知られたらと思うと、頭を悩ませる。

 彼女のことばかりで殆ど忘れていたが、明日に晃と陽向は顔を出すだろう。その時の言い訳をどうしようかと考えると、眠りたいタイミングで眠ることが出来なかった。




 4日目の朝。

 スマホの目覚ましで目が覚める。3日間、(あきら)陽向(ひなた)から連絡は無かった。便りがないのは良い便りという言葉があるように、あの二人いや、あの四人の心配はしていなかった。全員とは連絡先を交換している。しかし、各々二人ずつで行動しているため、二人の世界にさせておこうと考えての事と、この状況で連絡すれば、面白がって四人は戻ってくるだろう事が想像出来たため、こちらからも特に連絡をしていなかった。


 いつもの日課を行うために起き上がると、彼女はもう目を冷ましていた。そして、少し首を動かせるようになっており、こちらを眺めている。

 雨戸のガラスの部分から入ってくる光、ふすまと言うより、ガラス戸になっているところからの光で彼女は目をさましていたのか、眠そうにはしていなかった。

 弱く付けていたエアコンを消し、ふすまを開け、雨戸を開け放ちに行く。

 夏になりかけの少しだけ涼しいが暖かい空気が家全体に回っていく。

 日課の修練をやろうと思った所に、彼女の視線が感じた。


『何やるの?』


 見せてと言っているのだろうか。バリアフリーなのと、板の床である為、布団が簡単に移動が出来る。今まで彼女を連れて来る余裕が無かったが、改めて彼女に庭を見せてあげる。

 ツバメの餌をねだる音、木々の風になびき、擦れ合う音。土や木、草、花の匂い。それらが一気に彼女に襲いかかり、目を丸くして驚いていた。


『ほわー……』


 その間にお茶を用意し、修練着に着替える。

 修練をしている間、彼女はずっと庭と舟を見ていた。物珍しい事なのか、それとも今まで何日も娯楽らしい事をしていないため、暇だったのかもしれないが。


『綺麗って言葉はこういう時に使うのね……。あと彼、あんなに凄い体して……』


 少し顔が赤いような気もしたが、時間が経つに連れて収まっていったので、少し暑かったのか、久しぶりの外に興奮したのか。そのどちらかだろうと思った。

 手振り身振りのジェスチャーも彼女にようやく通じるようになってきて、拙い会話になる。

 こちらの修練と、庭の剪定作業が終わり、汗を流してくる間、ここに居るかと言う問だった。彼女はもう少しここに居るということを瞬きと笑顔で示し、外を眺め続けていた。

 暑いので、修練着の前をはだけながら剪定作業していた為、少し蚊に食われたようだが、気にせず、汗を流しに行く。

 縁側に上がろうとした時、彼女の顔が少し赤くなっているため、手のひらをおでこに当てるが、少々熱い。大丈夫かともう一度念を押すが、大丈夫と目で訴えるので、そのまま風呂場に向かう。


『男の人の体ってこんな凄い体なのね……』


 汗を流し、服を着替えてから彼女の元に戻ると、もう熱は治まっていた。

 その為、そのまま朝食を作りに台所に向かう。

 今日は縁側で彼女と食べるのも良いだろうと思い、簡単な味噌汁と漬物。そしておにぎりにした。

 彼女のおかゆももちろん作ってあり、スポーツドリンクと水と共に持っていく。


『ドロっとしてるけど、美味しいのー』


 まずは、彼女の食事を優先させる。今日はもう少し多めに持ってきた。初日食べたレトルトのおかゆ5分の1くらいだ。初日は多分胃が受け付けなかったのだろうと考えて、少しずつ慣らして言ったため、今日ならそのくらい行けるだろうと判断してだ。

 ぺろりとは行かなかったが、その量を笑顔で食べる。後ろから抱きしめている状態なので、はっきりと見えることではないが、頬がほんの少し上がっているのが見えるととても嬉しくなる。


『ちょっと苦しいかな。こんなに食べられるなんて凄い』


 彼女の食事を終え、自分の食事にかかる。お茶と味噌汁をすすり、そしておにぎりにかぶりつく。彼女がちゃんとしたこちらの食事を見るのは多分初めてなのだろう。同じ白いものなのに、何それと言う表情がありありと見えた。


『何それ! 私が食べた奴の違うやつ?』


 まだ咀嚼もしっかりと出来ない状態の彼女にこんな固形物を与えるわけにも行かない。このまま順調に回復していけば、いずれは食べられるようになるだろうが、今は無理だ。その為、首を振りながら駄目という意思表示をすると、少し怒ったような顔になっていた。


『何よ。少し位良いじゃない!』


 どうやら、とても好奇心旺盛な女性の様だ。




 食後、歯を磨き、ずっと寝ていた布団から、別の布団に変える。寝たきり状態であれば、布団が寝汗で湿ってくるだろうと考えたからだ。

 彼女を起こして、抱きかかえようとした所で、彼女から声が漏れた。


「ahu……」


 発光球体の時に聞いて以来の声だった。何の意味かはわからないが、どうも嫌がる様な顔、そして顔が赤くなっていった。

 どうしたのかと不思議に思い、彼女の隅々を観察する。

 しかし、より彼女の顔が赤くなっていき、何かが起こったのは間違いなかった。


 しばらくすると、鼻孔に何かしらの匂いが届く。

 その匂いを嗅いで気づく。そう言えば、出会ってからある行為を全くしていないことに。


 トイレだった。彼女はトイレに一度も行っていない。あれだけ飲めば少なくとも小の方は出るだろう。少量だが大の方が出てもおかしくない。いや、実際この匂いは大の方だ。

 背中にファスナーとは違うが、服の裂け目が見える。彼女に開けることを許可して貰おうとしたが、一向にこちらを見てくれない。その為、強行的に開ける事にした。

 彼女をうつ伏せにして、背中全体を見えるようにする。彼女の白い服は無理に開けなければならないかと思ったが、思ったより素直に裂けていき、彼女の背中、素肌が現れる。

 そこで気づく。彼女の頬のこけて居る理由が。


 拒食症患者とまでは行かないが、痛々しいと思えるほどに凄く細かったのだ。ずっと食べ物を与えられてなかったかの様に見えた。しかし、食べられない状態で、呼吸が困難な状態になるか、それと、これだけ動くことに苦労する事はあるのだろうか。喋ることさえ困難な様に見えたのは、何故か。それらの疑問が出てきた。

 だが、今は彼女の体が先だ。このまま放置することは出来ない。これだけ衰弱していたならば、排泄物が体に付着した状態は、衛生的にもよくないし、肌も痛み、最悪ただれていくだろう。それだけは回避しなければならないと考え、裂け目を一番下まで下げる。


 腰のあたりで裂け目が左右に別れ、ふくらはぎの真ん中辺りまで裂けていった。

 今更、このスーツは外用だったりするのかと考える。足の先まで一体化しており、更には靴底の様な厚みを持っていたからだ。後の祭りと言う事で、気にしないことにした。

 背中で別れた所をめくりあげると、彼女から小さなうめき声と、そして匂いが一気に広がる。


 予想通り、彼女は出してしまっていた。

 余り量は無いが、このまま無視できる量でも無い。服にも付着してしまっている為、洗わなくてはならない。


 色々と考え、まずは彼女から洗うことにする。

 手の方も裂け目があったため、両腕を取り出し、服を腹の下を通し、足先まで取る。完全一体化した1枚のスーツだった為、脱がすのに苦労したが、なんとか体を片手で支えながら出来た。彼女のスーツを軽くたたむ前に彼女をうつ伏せで寝かせるが、彼女から涙がこぼれていたのが見えた。

 羞恥心と、知らない男に裸を見られてしまった事の悔しさだろうか。それとも、これから性行為を強要されるのかという恐怖だろうか。だが、舟にはその様な事は全く考えていなかった。全て彼女を助けたいが為の行動だった。


 泣いてしまっている彼女をこのまま放置した場合はよりひどい結果になる為、抱き上げて風呂場につれていく。抱き上げる前に、陽向が小さい頃まだ髪が少し長かった時に教わったタオルで髪をまとめる方法を使う。絶対落ちてこないとは言い切れないのだが、短い時間であれば、なんとかなるだろう。


 椅子に座らせ、彼女の背中は自分の体で抑える。濡れてしまうことを考え、シャツを脱ぎ、彼女の背中に胸板を当てる。

 シャワーホースを取り、弱めで彼女の感じている体温と同等位の温度に設定してから、自分の腕に当ててから彼女の体に掛かるようにする。ほんの少し頷くため、温度はこれで良いのだろう。自分の腕に当ててから彼女の体に掛かるようにゆっくりと体全体にかけていき、そして問題のお尻にも背中を通してかけていく。


 流すだけで洗えれば何も問題ないのだが、残念ながらそういうことは無い。女性の体を見るのは、母親や小さい頃の晃の母、花さんと、陽向の母の伊万里さん。それと小さい頃の陽向以外見たことがなかった。だが、恥ずかしがっていては涙まで流した彼女に申し訳が立たない。意を決して、彼女のお尻に触る。ゆっくりと強くこすらないように、優しく、そして何度も。おかげで座っているお尻から見える辺りには汚れが見えなくなった。


 だが、もっと大きな問題がある。股下の事だ。直接見てるわけではないが、本来こちらの方にも汚れが付いている可能性が高い。女性の裸は先の4人だけだ。だが、直接性器を見たことは一度も無いし、触れたことも無い。彼女のためだと思って行動してきたが、これは流石にハードルが高かった。洗い方なんて聞いたこと無いし、陽向に聞いたとしたら、多分ドロップキックを少なくとも1ダースは喰らうだろう。しかし、尻の肌に触れていただけでかぶれる物が、股に付いていて良い訳がない。そう思い、意を決して彼女の股に前から触れる。触れてわかったが、汚れは付着していた。そして、無心になりながら、ゆっくりと洗い流し終える。


 しかし、ここで気づく。ボディソープで洗わないと駄目なのではないかと。しかし、陽向が置いていっているボディソープでも、今の彼女には刺激が強いだろう。そう考え、洗面器で薄めたボディソープを体にかけ、手でゆっくりと洗っていく。腕、肩、背中は問題ないが、やはり胸と尻、股、腿はそう簡単にハードルを越えられない。一度越えたのだから、二度目は楽だろうと言う言葉があるが、そんなことは無いと今は思う。


 意を決して、彼女の体を隅々まで洗う。そして、ゆっくりと洗い流していく。

 柔道の昇段審査で後1勝すれば黒帯になると分かった時の緊張感。それを遥かに凌駕した物だった。


 全てを洗い終え、彼女の表情をようやく見ることが出来た。

 屈辱の極みで怒り心頭になっているだろう。そう思って居たのだが、思ったより表情が柔らかかった。

 陽向に教わった肌に優しいタオルで体を指先から胸、お尻、股、腿、足の指先までくまなく拭き終えてから抱きかかえる。今更だが、彼女の裸の全面を目にしてしまう。自分の顔が真っ赤になっていくのがわかる。そして、彼女の視線も自分の顔に向かっているのもわかる。恥ずかしくて仕方がない。だが、もっと恥ずかしいのは彼女だと言い聞かせ、客間に敷いてある敷布団に彼女を寝かせ、新しい乾いたタオルで優しくトントンと叩くようにして水気を取っていく。

 しかし、その時だった。


(しゅう)!? 何やってんの!?」


 晃と陽向だった。



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