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第八話:賭けられた戦い

 日が暮れて、空はすっかり暗くなった為、一行は集合した後、宿へと向かった。

 その後、全員が一つの部屋に集まり、明日の事について話し合うことにした。


「――という訳だ。あいにく私達には金がない。これがとんでもない足止めだ……」


 隣の大陸に渡るための電車に乗るためには金が足りない、

 これは今のカイ達にとっては致命傷だった。

 そんな中、カイは何かを思いついたかのように手をポンッと叩く。


「金がないのなら増やせばいいんだよ!」


 その発言に、全員が疑問を持つ。


「カイ、とうとう頭がイッちゃった?」

「いやいや、そういうわけじゃないよ………この町には闘技場があるんだよ! だからそこで俺が出て勝てばいいんだよ」


 カイの提案に、ユウは軽くため息をつく。


「勝てばいいって、簡単に言うなよ。お前、実戦はした事はあるのか?」


「そこは心配いらない。カイは私が何度も特訓したからな。もちろん、実戦も踏まえてだ」


 ユウの問いに、シヴァは自信満々の表情で答える。


「そうか………それは意外と楽しみだな」


 そう言ってユウはカイの方を向き、ニコッと笑った。


「お前の実力を見るのが楽しみになった。期待を背くようなマネはするなよ?」


 その言葉にカイは親指を上に立て、同じく笑みを浮かべた。


「当たり前だ! っていうか、それより……」


 言葉を途中で止め、何故かシルクと顔を見合わせて、二人が同時に笑みを浮かべ声を揃える。


「ユウが初めて笑った!!」


 その瞬間、部屋中に笑い声が響き渡り、ユウは視線を逸らす。


「そう言えばそうだな、笑った顔は初めて見た」


 シヴァも気付き、腕を組んで微笑む。


「おや? ユウ、照れてるっちょ?」


 視線を背けたユウに、ネプチューンが必死に顔を見ようとする。


「う、うるさい、見るな! ってミーナ! 何でお前まで」


 その騒動にいつの間にかミーナまで加わり、ユウが部屋中を逃げ回るという珍しい光景となった。

 そしてシルクまでもが、私もやる!っと言って加わる事になり、とても騒がしい夜になってしまったのは言うまでもない。












 翌日。

 一行は闘技場へと向かい、エントリーを済ませた。

 そして、後は順番が来るまで待合室で待機するだけとなる。

 その途中、カイは緊張のせいなのか妙に落ち着かない雰囲気。

 そんなカイの肩に、シヴァが軽く手を置いた。


「いいか、相手を私だと思って、稽古の時のようにやるんだ。だからこそ雑念は捨てろ。わかったな?」


 シヴァが送った言葉は、少ないアドバイス。

 だがカイにとって、その少しのアドバイスでも十分だった。


「ありがとう御座います、先生!」

「お前、こういう時だけ先生と呼ぶのだな……まぁいい、頑張れよ」


 その言葉を言い終えた直後、スピーカーから出場要求が聞こえる。

 カイは闘技用の剣を手にして立ち上がり、開かれた扉へと向かう。

 通路のような所を抜けると、目の前には大きな円状のステージが広がっていた。

 その周りを囲むようにして高い塀があり、その上には観客席がある。

 観客達の中には、身を乗り出して歓声を上げている。


『さぁて、次の挑戦者は! カイィィエディフィィィス!!』


 突然耳に響いたのは、スピーカーを通して大音量で聞こえる司会者の声。

 その声は、カイに再び緊張を与えてしまった。


『対する戦士は! 自慢の巨大な肉体で戦う、カルロォォォスジェーーン!!』


 紹介と共に反対側の扉から、巨大な身体に合わせて作ったかのような大斧を片手に持った、カルロスと呼ばれた大男が出てきた。

 その姿を見たカイは、全身に鳥肌を立てていた。

 やっべぇ、ワクワクしてきた、と心の中で呟き、緊張を消し去ろうとする。


「頑張れー! カイー!」


 観客席からはシルクが、他の声に負けじと大声で叫ぶ。

 その声を聞いたカイは片手をシルク達のいる方に上げる。

 その時はもう、カイの中に緊張というものは残っていなかった。


『さぁ、両者が出てきたので、ここで勝敗決定のルールを説明させていただきます。っと言ってもルールは簡単。どちらかがリタイア、または倒れたまま一定時間起き上がらなかった時点で試合終了です。それでは、スタートの合図をさせていただきます』


 カイとカルロスは、スタートに備えて身構える。


『レディー………ゴーォォ!!』


 スタートと同時にカイは一気に走り出す。

 そのまま剣を横に振り、先制攻撃を狙おうとする。

 だがその攻撃は、意図も簡単に防がれてしまった。


「甘いわぁ!!」


 カルロスは一喝と同時に、カイの攻撃を防いだ大斧で、剣ごとカイを振り払う。

 カイはその衝撃を利用して、少し間合いをとる。

 だが顔を上げた瞬間、カルロスの大斧が目の前に迫った。

 それをバックステップでなんとか避けるが、その大斧はカイに休む間を与える事なく降り注ぐ。

 その全てをカイは紙一重で避けながら後退する。


「どうした? 逃げてばかりでは戦いにならんぞ!」


 カルロスは挑発するが、それでもカイは避け続ける。







「あれは戦法の内か?」


「ほう、よくわかったなユウ。あれは私が教えた戦法だ。相手が自分より大きい場合、その身長差を補うために冷静になり、慎重に動きのパターンを読む」


 シヴァの教えた戦法に、ユウは疑問を持つ。


「だがそれは一対一の時にしか使えないんじゃないのか?」

「その通りだ。まぁ、この戦闘以外で使う事は滅多にないだろうな」


 ユウは、やはりな、と呟いてカイの方へと向き直す。






「――だいぶ読めてきた………攻撃がパターン化すつつある」


 カイが避け続けた為、カルロスは油断したようだ。

 それにより攻撃がパターン化しだしており、反撃のチャンスが生まれる。


「右……左……左、上……右……上、今だ!」


 次の瞬間、カイは容易に相手の懐に入った。


「なに!?」


 カウロスは突然の反撃に対応しようとするが、間に合わないまま、カイは脇腹に一撃を入れる。


「うごぉ!? ……小賢しい!」


 カルロスは横腹の痛みに耐え、反撃を与えようとするが、その動きを読んでいたのか、カイはバックステップで回避した。

 カルロスは避けられてしまった為、大斧が空を斬る。

 後ろに下がった瞬間、足をバネのようにして一気に加速する。

 そのまま、カルロスの横振りをジャンプで回避し、顔面を一蹴り。

 よろめいたカルロスに対し、カイは着地と同時に足を連撃。

 それによりカルロスは勢いよく地面に倒れこむ。

 その後、カイは大きく飛び上がり、落下の速度を利用してカルロスの腹部を一撃。

 突如、疾風の如く繰り出されたカイの攻撃に、カルロスは為す術もなく、身動き一つしなくなった。

 少し経っても動かない為、確認の為に審判が駆け寄る。


「………気絶しています!」

『ということは………ウィィナァァ!!カイ選手ぅぅぅ!!!』


 その判定と共に、観客達は大歓声をあげる。


『まさかの大逆転で、我が闘技場のランキング二位であるカルロスを負かしてしまったぁ! これは驚きです!!』


 その言葉を聞き、カイは驚いた。


「えぇぇ!? ラ、ランキング二位? 聞いてねぇよ……」


 そう呟きながら、疲れた身体を引きずるようにして出口へと向かった。

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