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第十五話:初めての海上

 我、見たのは未来。

  黒き翼を持つ者により、世界は滅びゆく。


 我、見たのは過去。

  歯車が回りし時は、突然の出会いである。


 そして、我等が見るは現在―――











 大陸と大陸の間、海上すれすれに架かっている橋。

 その上を走る列車"アクアトレイン"は、ゆっくりとカナン大陸へと向かっていた。

 そんな中、ある客室の窓に貼り付くようにして、カイは外の景色を見ていた。


「すげぇぜ! 海だ海っ!! すげぇぜ! 広いぜ!」


 赤い半袖シャツと青いジーパン姿のカイは、まるで子供のようにはしゃいでいる為、隣りに座っている全身白で胸のあたりに黄色のラインが入っているフリルの付いた服を着たシルクは、溜息をつきながら彼の首筋を掴んで、思いっきり引っ張る。


「はいはい、すげぇぜ! ってのを二回も言わなくていいから、とりあえず騒ぐのをやめようね、カイ!」

「おわっ、な、何するんだよシルク!海を見たのは初めてなんだから、少しくらいはしゃいでもいいだろっ」


カイは、えりを掴んでいる手を離させようとするが、シルクのもう片方の手が、それを邪魔する。


「あまり暴れると、首をしめて落としちゃうよ〜」


 シルクは笑顔でそう言うが、カイはその笑顔と言葉の違いに恐怖を感じ近くに座っている、身体にピッタリとフィットした黒色の服を着ているユウに助けを求める眼差しを送った。

 だが彼は、自業自得だ、というような目でカイを見て、微笑する。


「……ねぇ、ユウ。カイを助けなくてもいいの?」


 ユウの膝の上に頭を置き、横になって、小さな水色のドレスに似た服と共に、水色の長髪を垂れ下げたミーナは、透き通ったような青い瞳で、彼を見上げる。


「自業自得だからな、気にするな」


 そう言いながらユウは、ミー名の長い髪を撫でる。

 すると彼女は、撫でられたからか、満足そうな笑みを浮かべた。


「……ユウはずいぶんとミーナに懐かれているな。羨ましいよ」


 そう言ったのは、ユウの向かい側に座っている、ミント色のスーツのような服を着たシヴァだ。

 彼女はピンク色の長髪を、組んだ腕に絡ませている。


「ようは受け入れ方だ。なんなら手を広げて読んでみたらどうだ? シヴァ。今のコイツは、だいぶ皆に慣れていると思うしな」

「そ、そうか……? そんな動物のように上手くいくのだろうか……。まぁ、それなら、――さぁ、ミーナ。私の膝の上においでっ」


 シヴァは組んでいた腕を広げ、笑顔でミーナを誘うポーズをとる。

 それを見たミーナは、ユウとシヴァの顔を交互に見て、再度ユウの顔を見て、首を傾げた。

 彼はそれに答えるように頷くと、ミーナの表情はまた笑顔になり、シヴァの膝の上に移った。


「か、可愛い………――おぉ! 髪を撫でるとやわらかい……――なんと! 寝息を立てて眠っておるぞ! か、可愛い過ぎる……!」

「お前……可愛いものを見ると、性格が変わるのか?」


 少なくとも、ユウの内心では、シヴァの見方が変わったようだ。


「こっれは激写だっちゃ! 写真に納めるぜよ!」


 ユウの隣りにいた、ボロ切れのローブを羽織っているネプチューンは笑いながら、自分の荷物に手を突っ込み、小型のフィルムカメラを取り出した。

 それをシヴァに向け、左上についている、シャッターを切るためのスイッチに指を添えて構える。


「はい、笑って笑って〜――って、ああぁぁ! わっちのカメラが真っ二つにぃぃ!! 何をするんじゃ!?」


「何をする………だと? 私の天使をお前ようなやつの濁声で、夢の世界から無理矢理引きずり出すような行為は許さんぞ……? 一度目は警告、二度目は制裁だ」


 そう言ってシヴァは、カメラを真っ二つにした細剣を、ネプチューンの首筋に添える。


「こんなところで死にたくはないだろ? ネプチューン」


 シヴァの冷酷な赤い瞳を見たところ本気だという事を悟ったネプチューンは

、添えられた細剣で首筋を斬らないように、ゆっくりと頷いた。

 それを見た彼女は満足そうな表情をして、細剣を鞘に納める。

 その後、ネプチューンは急いで自分の首筋を触り、首が繋がっている事を確認して安堵した。

 ユウはそれを見て、苦笑。

 すると突然、シヴァは真剣な声で言った。


「さて、ミーナも寝たところだ。この列車が目的地に着くまで、まだ時間はある。………ユウ、この世界について、そして皇国軍について教えてやろうか?」

「この世界について……か。興味深い話だな。お前がよければ聞かせてもらいたい」


 そう言うとシヴァは、いいだろう、と呟いて、窓側にいる二人の方を向く。


「お前らも――って、いつまでじゃれあっているつもりだ? ……お前らも聞く必要があるだろ? 皇国軍について、だ」

「え? ………そういえば、シヴァちゃん、授業で皇国軍の事、全く教えてくれなかったもんね。――ほら、カイ。起きなさいって」


 シルクは、おそらく落ちていると思われるカイの頬を連続ビンタした。

 すると、う〜ん、とうなりながら、カイが目を覚ました。


「……あれ? お花畑は?」

「よし、揃ったな」


 シヴァはカイのボケを無視し、ミーナの髪を撫でながら、今までにない真剣な表情になる。


「まずは二十年前、世界を巻き込んだ報復戦争と呼ばれた惨劇についてだ」

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