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第十二話:魔術と禁術

 少しずつだが、遠のいていた意識が戻ってきた。

 まだ慣れていないからなのか、頭がボーっとする。

 だがしばらくすると、俺は異変に気付いた。

 自分の身体が自分の意思で動かない………


『どういう事だ?』

「どうやら無事に入れ替われたようね。うまく魔力の開放をしてくれて助かったわ、ありがとう」


 入れ替わるとは、こういう事なのか……


『って、お前はなんで声に出して喋っているんだ?』

「いいじゃない、別に。小声なんだし」


 そういう問題じゃないと思うが……


「とりあえず、お風呂に向かうわよ〜」

『………わかった、もういい、好きにしろ』


 それにしても不思議な感覚だ。

 自分の意思とは関係なく、身体が勝手に動いているんだから――

『って、ちょっと待て! そっちは女湯だ!!』

「えー! 私に男湯に入れって言うの?」

『当たり前だ。俺の身体を使っているんだからな』


 俺が女湯にいた、なんて事にはなってほしくない。


「わかったわよ、男湯にはいればいいんでしょ?」


 ティファはブツブツ言いながら、隣の男湯へと入った。

 その後、脱衣所で無駄に急いで服を脱ごうとした。

 だが、中々うまく脱げず、苦戦しているようだ。


「何この服! 脱ぎにくいわね!」

『しかたないだろ。ジードでやってた仕事では、こういう動きやすい服が一番いいんだよ。慣れればすぐに脱げる』


 慣れたくないわよ、こんな服、と文句を言っていたが、コツを掴んだのか、すんなり脱いでいた。

 そして服を脱ぎ捨てて、駆け足で浴場へと向かった。

 浴場へと繋がる扉を開け放つと、そこに広がった光景は、綺麗に整理された桶やイスの山と輝いて見える蛇口、そして屋根がない為、露天風呂となっており、空を眺める事が出来る仕様となっていた。

 だが、一部の露天風呂の上には雨避けの為か、小さめの屋根が儲けられている。


「へぇ〜、客室はボロいけど、浴室は綺麗なのね!」


 それは失礼だろう。

 ……まぁ、確かにそうなんだがな。

 ティファは先ほどと同じスピードで露天風呂へと向かい、飛び込むようにして入った。


「ふあぁ〜、暖かくて気持ちいい〜! そして久しぶりのお風呂ぉ〜」

『あ、暖かい……入れ替わっていても感覚は伝わるって事か?』

「当たり前じゃない、五感は全て共有よ。一心同体ってわけね。だから、大怪我とかはしないでよね?」

『努力する』


 ………それにしても、先ほどから下の方の視野にちらつく何かが気になる。

 その違和感が何かを確かめるために下を見ると、俺にはない、いやこの世の全男性にないものがついていた。


『な、なな、なんで俺の身体にこんなものがついているんだ!?』


 そう言いながら、慌てて視線を上に向ける。


「こんなものとは失礼ね……それより、どうしたの? そんなに慌てちゃって。もしかして、女性の胸をみたのは初めてだったの?」

『そういう意味じゃないが、突然見えるとそりゃ慌てるだろ! それよりも、なんで俺の身体が女になっているんだよ!』


 脱衣所では確かに男の、俺の身体だったのに……


「ふふふ、びっくりしたでしょ? これが、大魔導師たる、私の力よ。……まぁ、私が使う魔術は失われた禁術なんだけどね」


 なんだけどね、って軽がると言っていいものなのか?


『その禁術で、身体を変えたと?』

「そういう事〜。………でも、そう簡単には信じないでしょ?」

『当たり前だ。第一、魔術ってのは魔力を消費して火・水・氷・樹・雷・風・地・光・闇の内、一つを創造して攻撃、または身体の一時的補助をするものの事だ。存在している身体を別の姿に変えるなんて事、出来るわけがないだろう』


 少なくとも、俺の知っている魔術はそうだ。


「その摂理は一般的な魔術の、でしょ? 私の使っている魔術は禁術と呼ばれるくらいよ? そんなもの、誰もが知っているわけないじゃない。ちなみに……」


 言葉を途中で止め、ティファは自分の胸を掴んだ。

 ……たしかに掴まれている、という感覚はある。


「今、私が掴んでいる"コレ"は確かに存在している。偽物ではなく、本物。

さて、ここで問題。この世に存在する命あるもの達の身体は元をたどると、何によって構成されているのかわかるかしら?」

『………数多の細胞とそれを支えている、つまりは細胞のエネルギー源となっている魔力によって、だったか?』

「正解。ちなみに、その魔力が普通の人よりも多い人は、魔術師としての素質があるのよ」


 それぐらいは知っている。


「それじゃもし、その細胞を支えている魔力が生命体そのものの存在、身体の形状を保っているとしたら?」

『世界中の学者や哲学馬鹿が驚くだろうな。だがその前に、信じないと思うが』


 ティファはその返答を聞き、ふふふっ、と笑った。


「その通りでしょうね。でも、そうじゃないと今のこの状況はどうやっても説明できないでしょ? この魔術は、存在の形状を保っている魔力を一瞬分解して、記憶している魔力の形状に変換するの。それによって、身体が変わるのよ」


 ティファは一度目を閉じ、ややあってまた開ける。


「……でも、この魔術によって身体が変わる方法を知ったある人物は、これを禁術として、他の禁術と共に封じる事にした」

『その理由は、自然の摂理を簡単に覆すような事は、その人物にとって許しがたい事だったから、か?』

「よくわかったわね。……でも、その人物はミスを犯した。魔術に対しての興味が、人一倍強かった孫である、私に話してしまったから。その話を聞いた私は、好奇心でその封印を解き、禁術を手に入れた。その分、代償は大きかったけどね……」


 そう言ってティファは、胸の中心、心臓のある辺りを軽く撫でる。

 俺は、その部分を見て驚いた。

 そこには大きな傷跡が残っていたからだ。

 この傷の事について聞こうとしたが、止めた。

 俺が見たティファの表情には、曇りが見えていたからだ。

 それと同時に、悲しい感情が俺の中に流れ込んでくる。

 もしかしたら、禁術を手に入れた代償は、胸の傷の他にもあるのだろうか……

 しばらくの間、俺とティファは黙り込んだ……

魔力とか魔術とか、何言ってるかわかんない

という方がいるかもしれませんが

ようは魔法ですw

そう解釈していただけると助かります


ちなみに、魔術構成の説明などは、題材にしている物は一つもないのであしからず(?)

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