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悠久の里  作者: 八十川小雪
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第1話 日常

 プロローグ


 妖怪とはなんだろう?自分自身が妖怪なのに、いつも考えてしまう。人間に忘れられた存在、そう大抵の人が言う。もう人間には妖怪より怖いものができ、もう人間は妖怪に対抗する策があるとも。


 私は葉桜風音(はざくらかざね)。私は妖怪の狐、まあ簡単にいえば妖狐である。百数十年生きている。人間にとっては十数年生きているのとあまり変わらないが、それの不気味さ故に昔はよく人間に嫌われていた。しかし今では見向きもされないと思う。


 そんな妖怪だが、今ではほとんどが妖怪の隠れ里をつくり、そこでひっそりと暮らしている。私も、ある森の奥の奥、悠久の里(ゆうきゅうのさと)と呼ばれるこの里で、ひっそりと暮らしている。

 この里は、珍しく人間がいる。昔から住んでいる人間も、なんと里の外からも。いろいろと逸話があったりするこの里で、今日は誰に何を聞こうか。



1話:この世界


 春の昼下がりの里。お天道様がいい感じに当たって私の眠気を誘ってくる。神社いつも通り静かだ。少し神主さんの寝息が聞こえるだけ。


 私は普段、人間の里の宝桜神社(ほうろうじんじゃ)と呼ばれる神社で巫女をやっている…と言いたい。と言うのも、私が勤めている神社は厳密に言うと神社ではなく占い屋、そして占い以外にもたくさんやっている、まあ要約すると神社にしか見えない占い屋と言う名の何でも屋なのだ。

 私も巫女とは言ったが、本当は勤めている場所が場所だけにそう呼ばれるだけで、実際は巫女らしい活動は全くしていないしできない。本当は術師の家系なのにどうしてこうなったとつくづく思う。

 ここは私と神主さんだけしかいない。

 神主さんの名前は橋守紅葉(はしもりくれは)。もみじとは読まない。

 紅葉さんの家系は大昔に人間と白狐(びゃっこ)が結婚したらしく、人間らしいところと妖怪らしいところがある。紅葉さんは私と違い、本当の神主をやっていける。神様の声を聞いたりできる。ただ少し冷たいと言われている。紅葉さんはあまり感情をあらわにしないのだ。けど優しい。


 さて、空雨季(からうき)へ行こうか。今日は少しお使いも頼まれているし、多分しばらくしたら紅葉さんも起きるだろう。

 空雨季というのは人間の里から少し離れた、妖怪の里にある。とても美味しいお菓子と変な雑貨が売られている。そこを営んでいる姉妹はいろいろとおかしな言動が度々見られる。紅葉さんはそこの常連であり、そこの姉妹はよく(遊びに)ここにくる。

 私もあそこのお菓子は美味しいと思う。あとは里の外から来た何かが気になる。それだけだ。

 さて、行こうか。少し私も食べたいから、自分の分のお金も持って、着ている水干と髪を整えて私は少し急ぎ足で向かった。



 妖怪の里は人間の里とあまり変わらない。強いていうなら妖怪は夜型だから、夜になると活気が出てくるということだけ。

一応妖怪の里にも神社がある。と言うよりこの差と全体の唯一の神社があると言う方がただしい。昔はあそこの巫女さんのところによく行ってたものだなとおもうと、少し懐かしい。じゃなくて空雨季に行こうか。

 空雨季には誰もいなかった。それも2人とも。書き置きには「月見堂に行っています」とのこと。月見堂はさすがに知らないから、観月堂(かんげつどう)へ行こうか。あそこの店主さんにいろいろと聞きたいことがあるし。くるりと方向転換して観月堂へ向かった。


 観月堂は人間の里と妖怪の里の間にある、問屋さんだ。別の里と取引をしている天狗の天野真紀(あまのまき)さんが店主を勤めている。最近里の外から来た人間の双葉咲(ふたばさき)さんもいる、ちょっと大きな店だ。

 ここには昔からよく来ていたし、今もよく来る。真紀さんはあまり来ないが、咲さんはよく(あそびに)くる。それもわざわざ仕事を抜け出して。

 少し中が騒がしいな。今日はよく来ているようだ。西洋風の取っ手を掴んで扉を開けた。



 入ると同時に見えるかなり大きな棚にはいつも通りどうしてこんな形になったのかよくわからない何かが並べられている。それもそのはず、ここには里の外、今人間が使っているものもあるからだ。もちろんここの店主が、人間の気持ちが知りたいがために拾ってきている。最近はそんな妖怪も多いようだ。

 ここは本来、問屋なのだ。ほかの里とも取引をしている。この里にないものは大抵ここで頼める。


「いらっしゃいませー何名様ですか?」

「見ればわかるでしょう?変な質問しないこと。いいね?」

「風音さんヤホー」

「こんにちは風音さん」

 入って来てからいきなりたくさんの人から声をかけられた。どう対応すればいいのかわからないのでとりあえず挨拶をした。

「こんにちはです。今日は結構来てますね」

「春だからね。しょうがないね」

「四六時中来ているくせに」

「そんなのホットケーキ」

「くだらないね。ごめんね風音さん、うちの姉が…」

「いえいえ、むしろ面白いです。少しわからないところはありますが」

 いつも通りの会話だ。安心する。


 えっと、まず最初に何名様か尋ねてきた若草色の着物を着ているのは双葉咲さん。人間で、時々訛りかどうかわからないけど変な話し方をする。「こんにちな」とか、「がんじろうね」とか。そして冷ややかに答えた人間のがっこうというところで着る衣を着ているのがここの店主さんの天野真紀さん。天狗だが、本当に人間にそっくりで、少し昔から人間のがっこうというところに通っているそう。どうやらそのときに咲さんと会ったそうで。そしてヤホーと言ってきたのが空雨季灰丗(からうきはいせ)さん。いつも真紀さんが人間の世界に行くときに着ている服をいつも着ている。そして唯一話し方が変わっていなかったのが空雨季鈴鹿(からうきすずか)さん。白が基調の変わった組み合わせの柄になっている着物を着ている。いつも頭に何か刺さっているのは少し事情があるそうで。鈴鹿さんと灰丗さんが空雨季を営んでいて…あれ?月見堂とやらに行ってたんじゃなかったっけ?

「鈴鹿さん灰丗さん、月見堂とやらに行ってるはずじゃ…」

「よくぞ気づいたな…褒めてやろう」

「上から目線に言えます?」

「私はそんなの気にしませんよ。で、どうしてここにいるのですか?」

「すみませんね、姉はよくここを月見堂と呼ぶもので…」

「観月堂だとかたくるしいと」

「誰もがわかる言い方で言う方が普通だと思いますよ」

 ここの姉妹はいつも仲良しだ。店の方は何か爆発やら火事やらが起こってしまうが、まあ彼女らでどうにかできるよう言っているから問題ないと思う。



 さて、何か話そう…かッ!か、体が動かない。ああ、またいつものことが起きてしまった。

 目の前がぼやける。何か変なものも聞こえる。まず私は今何を考えている?それすらもわからない。なんとも形容しがたい感覚だ。

 これはあれだ。私は今、憑かれている。嫌な体質だ。

 そしていつの間にか、私の意識は飛んでいた。



「ね…い…まで寝……るん…?」


 風が寒い。いま、何を考えているかはっきりわかる。多分紅葉さんが落としてくれたのだろう。また、迷惑をかけてしまった。

 体も動かせる。それくらい、普通のことなのだが、私にとっては憑かれている時はそうでもないのだ。


「いつまで寝ているんだ?」

「ふわゎぁぃ今起きました〜」

「風音、やっと起きたか」

「おはようございます。いつも通り憑かれていたのですよね」

「大して害がないような言い方をするなよ。平気で人間を殺そうとするような霊じゃなかったのが幸いだな。

 まあ、変なことにならなくてよかったよ」

「ところでそのとき私は?」

「不思議そうな目でこちらを見ていたな。善良な霊だ」

「それならよかったです」


 私は本当に憑かれやすい。悪意のない霊にまで憑かれるようになったのかと思うと少し私自身に呆れる。

 私は母にというより祖母似とよく母にも言われる。祖母も憑かれやすい体質だったからね。

 霊に憑かれると言っても様々で、善良な霊ならばこの体で何か言いたいことを言ってからあとは何もしない。

 悪意のあるものは厄介で、平気で人間を殺そうとする。実際に憑かれたときは、紅葉さんの首を絞めていたそう。 そのほかにも言いたいことを言ってどこかに言ってしまう霊や、ごく稀に神に近い霊が何かお告げをして言ったりと様々である。まあ憑かれたくないが。


 霊は見えないし声も聞こえない。そのため大半の人間と妖怪は憑かれたり憑かれた者を見て初めて認識する。

 神社に勤めている神主さんや巫女さんはそうでもなく、あえて憑かれて霊の言葉を喋ったりできるそう。そう紅葉さんがいつも言う。

 私は巫女ではないが、なんとなく憑かれたときにその霊の気持ちがわかる。その霊が見てきたもの、過去、そして今考えていることがわかってしまう。

 私はこんな体に未だに慣れていないが、いつかみんなの役に立てたらいいな。まあ、それはかなり後の話になりそうだ。


「ほら、お前はどうせ金平糖を買うつもりだったんだろう?」

「あ、ありがとうございます」

「ほら、明日も頑張れ。お疲れ様」

「お疲れ様でした〜」


 少し今日は日常から外れてしまったが、今日も無事日常で終わったからよかった。


 さて、明日は何があるだろうか?そう思い、私は布団に潜った。








 八十川第一回 あとがき的なサムシング



 こんにちは、八十川小雪(やそかわこゆき)です。今回は私がテンプレートをなぞったよくある話を少し書いて見ました。

 しかしまあ、なぞりすぎですね自分。自重します。


 さて、この文を読んでいるあなたは最後まで読んでくれたか、マウスのホイールを使ってぶっ飛ばしてきたのだと思います。前者でも後者でも、この小説ではない小説もどき、いわゆる文字列の集まりを見ていただき、ありがとうございます。あなたが見たら私も書く気力が出てきます。


 今回は宝桜の巫女(巫狐と思った方も1人はいるかと)の風音の日常でした。最後以外は。

 風音はかなり憑かれやすい体質のため、ただの霊にさえ憑かれます。どうでもいいですが、風音の意識が飛んでいる間、何が起こっていたのでしょうか?書けるかどうかわかりませんが、紅葉視点で書いて見たいと思います。


 というわけで、あやふやですが、どうぞよろしくお願いします。


 八十川小雪~Koyuki Yasokawa~

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