砂場
夕暮れ。からすがやかましく鳴いている。
ここは、どこの町にもある、何のヘンテツもない普通の公園。
「おーい!ソラ~!遊ぼうぜー!」
遠くからだれかが呼んでいる。しかし、呼ばれた少年は男の声が聞こえていないのか、砂場で遊び続けている。
「おい!ソラ!」
大柄な男が再度ソラを呼ぶ。
ベンチで新聞を読んでいたサラリーマンが男を見る。
しかし、呼ばれている本人は振り向くことすらせず黙々と砂を掻く。
待ちきれなくなった男は、頭をぐしゃぐしゃとかきむしりながら自分から少年のもとへと駆け寄ってきた。
たかが20メートル走っただけだが、男はぜいぜい息を切らしながら、少年の頭をガシッと鷲掴みにして言った。
「なあ、面白い遊びをしよう。」
ソラがはじめて男の方を見た。
その目には、人相の悪い太った大柄の男がニヤリと笑っている姿が映っていた。
「あそこのベンチに座っている人がいるだろ?そいつを殺して砂場に埋めろ。」
ソラはにんまりと笑って嬉しそうに言った。
「そいつも殺していいの?」
大柄な男は吹き出る汗を拭きながら
「ああ。だがタイムリミットは五分だ。過ぎたらおしおきな」
「いいよ」
自信に満ち溢れた笑顔で少年は答える。
「失敗は許されないからな。いくぞ、よーいどんっ」
男の合図と共にゲームは始まった。
しかし、それはゲームと呼ぶにはあまりにも残酷なものだった。