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5話 西宮最強説

改めて確認するが、霧崎悠馬と草野一樹は遅刻常習犯、無断欠席常習犯の素行の良くない生徒、所謂『不良』というレッテルを貼られた生徒である。

朝、イレギュラーがあり、遅刻はしなかった。

しかし、その程度で『授業を真面目に受けよう、うん、そうしよう』と改心するわけがない。


正午の学校の庭。授業終わりの合図のチャイムが鳴り、生徒はしばしの解放の時間を迎える。

庭にいくつか植えられている木の中の1本に寄りかかっている草野は言った。


「お、やっと終わったみたいだ。いやー暇だった。」

「飯どうする。」

「そうだなー…。学食?」

「それでいいか。行くぞ。」

「うぃー…ルンバッバッッ」


「うぃー」まで言いかけてかけて急に某円盤状の掃除ロボットとリズムを合わせたような叫びが「す」を言わせてくれなかった。


一樹の体は後頭部の大きな衝撃でフライアウェイ。その後地面に叩きつけられて滑る。

簡単に言えば、ガンッヒューゴッズザザザザザザザー。

後頭部の衝撃、地面に叩きつけられる、地面を滑る痛みの華麗な3コンボで【効果はばつぐんだ!】のテロップと共に一樹のライフは一気に削られていった。


「おい草野…。お前また新しい趣味か。今回はパントマイム?クオリティ高いし、体よく張るな。」

「んなわけあるか!そんなことより後ろ!志村後ろ!志村じゃなくて霧崎後ろ!般若がッ悪魔がッゴリ…ぶるがっはぁっ!!」


一樹を叫びを遮ったのは、彼の顔面に直撃したカバン。

一樹の視線の先、つまり悠馬の後ろから飛んできた。

ちなみに。

一樹が吹っ飛んだのは、彼の後頭部に誰かが飛び蹴りを食らわせたからだ。


「やめて!一樹君のライフはもう0よ!」

「あ〜ん〜た〜た〜ち〜。」

「…………………………………あ。死んだ。」


恐怖の始まり始まり〜☆


悠馬の後ろには全ての元凶、西宮莉奈が立っていた。

一樹の後頭部に飛び蹴りをしたのも彼女。


ぶっちゃけ悠馬にとっては毎日毎日PPCT関係の仕事や流れ込む依頼をこなすよりは帝王の如く生徒界に君臨する彼女、西宮莉奈の魔の手からどう逃げ切るかの方が至難の技だった。


色々カミングアウトして誤解を解いたり、本気を出して捻り潰したり出来ない分悠馬の方が弱い立場にいる。

何とも女性に手を出さない男というものは不憫である。


誰かこの若き悪魔帝王をなんとかしてくれ…と切実に思ったが、こいつを止められるのは男女平等パンチを何も気にせず繰り出せる奴か親くらいだろう。

もっとも男女平等パンチを繰り出せたとしても彼女より強くなくてはいけない必要があるが。

そもそも一般人の中でそんな人がいるかどうかも疑わしい。

まさに西宮最強説。


「なんだよお前…。頭に素行の悪い人センサーでもついてんのか。業者に言って取り外してもらえ。」

「ついてるわけないでしょ。たまたま通ったらあんた達が話しているのが目に入ったのよ。そこであんた達が授業受けずに抜け出したのを思い出して。」

「バレましたか…。」


莉奈は、一樹へ大ダメージを与えた割に悠馬に鉄拳制裁を加えることなく、彼と普通に話している。何故か彼には分からなかったが、一応助かったことにほっとした。


一方、鉄拳制裁をモロに食らった不憫なサンドバック少年草野一樹は、既に限界を迎えている空腹と先程のクリティカルヒットのユニゾンで現在戦闘不能状態。

彼は遠い目で敗北をしたら目の前が真っ暗になる主人公のように絶望の海の真っ只中を漂いながら言った。


「あのー…誰か忘れてないですかね?草なんとか君を忘れてないですかね?畜生、お前らドSコンビとは決着をつけるべきだ。一度血みどろのバトルをする必要があるようだなァゴルァ!」

「「あ”ぁ”?」」

「…………ヒッ…そんなガチでこなくてもいいと思うんだ。」

「……弱いな。ま、お前見てると生き物の治癒能力の高さって凄えなって思う。あんだけぶっ飛ばされたり、殴られたりしても数分で復活してるじゃねえか。良かったな、これから盾として使える。」

「……よわっ。早く復活されても面倒事が増えるだけだけだから半日くらいくたばってればいいのよ。」

「…うぐ…この…このドSコンビが!」


サラリと一樹に日頃の鬱憤をぶつけながら、ポケットに手を突っ込んだ悠馬は一樹を連れて学食へ向かおうとする。一樹はいつの間にか完全回復していた。

ファンタジー世界の回復魔法を誰かにかけてもらったように。


「霧崎〜さっさと行こうぜ。俺もう限界だ。」

「さて、私も一緒に行くわ。」

「エ”ッ」


あまりにも突然すぎて腹を思い切り殴られた時に出るような声が一樹から出てしまった。

汗をダラダラ垂らしながらこの世に存在しえないものを見たような表情で口をパクパクさせる。

………そこまで嫌なのだろうか。


「いや…なんで?」

「なんでって学食で食べるからに決まってるじゃない。」

「イヤァァァァァァァァァ!!!唯一の至福の時がッ!生きるか死ぬかのデスマッチ状態!?俺の身体も精神もライフ0で持たないよ!オーバーキルでもする気か!つか、さっきからなんで霧崎は無言なの!?何か言い返せよ!」

「断る理由がない。飯食うくらいはこいつも別に何もしないだろ。悪いことしてるわけじゃねえんだし。」

「そ。話わかる人は嫌いじゃないわよ。」

「そいつはどーも。ほら、さっさと行くぞ。混むとめんどくさい。」

「えっ…いや…まだはいともイエスとも…ちょっまっあ、あぁぁぁぁぁ……」


あまり時間をかけると学食が混み始めて昼飯にありつけるまでだいぶ待たなければいけない。

それを防ぎたかったため悠馬と莉奈は、一樹の襟を掴んで無理矢理にで彼を連れてさっさと学食へと行こうとする。

どうしても嫌だったらしく、ジタバタと子犬のように暴れるが、2人の力に敵うわけもなくズルズルズルズルーーーーーっっ!!と抵抗虚しく引きづられる一樹なのだった。


「あ…ちょっと待て!タンマタンマ!T!Tお願いします!あの!」

「「うるさい」」

「キャン!」


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