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2話 絶望の年

西暦2047年。

いくら世界が広いと言えども10歳未満の子供を除けばその年に何が起きたのか知らない者はいない。

どんな年かと問えば、皆が絶望の年、死の年、終わりの年と答える。

何が起きたのかと問えば、皆が必ず口を揃えて『第一次人神戦争』と答える。

皆がと言えば言いすぎかもしれないが、少なくとも大多数はそう答えるだろう。


人と神との戦争。そういう意味で付けられた名前である。


さて、時を2047年に遡ってみようじゃないか。


その年、奴らは突然現れた。

何が原因でどこから来たのか正体は何なのかすら全く分からない。本当に引き金も何もなく突然現れたのだ。

今この段階で奴らの正体ついて説明出来ることは何もない。

唯一分かることは人に対し明確な敵意があることだけである。


パニック映画でよくある話だが、現代の世界にファンタジー世界のドラゴンや怪物が現れ人類がそれらと戦っていく。

まさにそれと似たような状態だった。

特撮番組の怪獣やファンタジー世界の怪物のような生物がモスクワ、ニューヨーク、東京やシドニーなどの様々な主要都市に出現し、蹂躙していく。



『The enemy are unidentified. Be equipped with the latest weapons.(敵は正体不明。最新の武器を装備しろ)』


『All armys, let’s move out(全軍、進攻開始)』


『Empty eye,Hawk team listen up. Acquire the mastery of the air. Call for support to an albatross as needed.(エンプティアイからホーク隊よく聞け。制空権を取得せよ。必要に応じてアルバトロスに要請を行え)』


『Hawk team roger.』


奴らの出現から約1時間後、米軍が先陣を切ってニューヨークへと緊急出撃し、その出来事が、後に第一次人神戦争の開戦とされる。


無線が飛び交い、正に戦争を彷彿とさせるが、人々には余裕すら見えた。

発展した強力な科学力の前では、敵が正体不明とはいえ負けるとは誰が思おうか。

遠い安全な街へ疎開し、少し経てば自宅へと簡単に戻れると皆が思っていた。



それが命取りになったかもしれない。



緊急出撃からしばらくたった後、信じがたいある一報が彼らから余裕の表情を奪い去ることになる。




その一報には、ニューヨークへ出撃した米軍が壊滅、と。




壊滅した軍が米軍だからこそより一層人々は事実を受け入れることが出来なかったのだ。

当時、米軍は戦争の最先端を行き、敵なしと言われるほど強力な軍備を備えていた。

そんな軍が一部隊とはいえ抵抗すら出来ず、壊滅とあれば、信じられないのも無理はない。




・バイオハザード級の驚異的な【感染力】

・今までの科学を全否定する【魔法のような力】

・感染力から生まれる急激な増殖力



これは先陣を切った米陸軍、米空軍から入った情報であり、どれも対人、対科学として訓練されてきた軍にとっては対処不可能であった。



米軍壊滅という事実が各国の士気を低下させ、民間人も含め多くの死者を生み出した。

奴らの進攻は止まらず、多くの都市が破壊され、夢も希望も今まで築き上げたものまで奪われ人々は何にすがりつけばいいかわからない、何に助けを求めればいいかわからない。



生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい。



死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない。



まだやりたいことがたくさん残っている。


まだこんなに若いんだ。


金ならある。助けてくれ。


せめて子供だけは…


自暴自棄になるほどの恐怖、不安。そして諦め。


「……神。神だ。神が我らに罰を与えたのだ。強くなりすぎた我らを抑制するために。そう…奴らは神、神なんだッ。」

そうある人が叫んだ。

ラグナロクだと言う者まで出てくる。


平和な世の中であれば、何を根拠に…非科学的だと嘲笑されて終わるのだが、なんせ明日、いや今この瞬間自分は死ぬかもしれないという絶望の世の中である。

その極限な絶望的状況では、人は正常な判断力を失い、なんでも信じてしまうらしい。

それに加え、非科学的だと言われ続けてきた力まで使っているのだ。


これを神と言わずに何と言うのか。今までに無かったことが、否定され続けてきたことが突然起こり得ることによって判断力が鈍くなる。


その理論の通り神…神…と人々は鵜呑みにし、いつの日か奴らは恐怖の神になぞられ『フォボス』と呼ばれるようにもなった。


開戦から1年半。

人口は戦前の4分の1にまで衰退した。

人々は生きることを諦め、終末の時をただ待ち続けるだけとなった時、国際連合からの通達がくる。


──地下にシェルターあり。

そこで生活し、文明を作り、今の科学力を取り戻す、と。

地上は諦めろ、と。



普段なら敗北が嫌いでそんなこと認めてたまるかという血気盛んな輩もいるのだが、絶望を前にしては誰も敵わなかった。

逆に生存こそが勝利であると考える者も少なくない。


そして

誰も『国際連合の通達に対し疑問を持たずに』賛同をした。



こうして第一次人神戦争は、開戦から1年半で人類の地下への避難により終結を迎える。


これが絶望の年、2047年に起きた第一次人神戦争だ。


さて、時計の針を2057年へと戻すとしよう。

霧崎悠馬が17歳として生きる今へと。











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