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ばんぱいあヴァンパイア  作者: 葉月
詰合編 Diverse Am încercat
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雪うさぎ作ろ


雪が降り積もりました。


「雪だるま作っろーっ、ふふんふふふふ-んっ」


ぺしぺしと丸い雪の塊を叩いて形を整えながら鼻歌を歌う凄くご機嫌な鎹を私は見る。楽しそうだ。物凄く。


「……ガキか」


隣でそう呟くのは名々賀。段差になっている所で腰を下ろして頬づえをついて呆れたようにそう言う名々賀の言葉には私も同意だったので、それには何も言わず子供のようにはしゃぐ鎹を見つめ続けた。どこまで大きな物を作る気なのだろうか。鎹が作る丸い塊は徐々にその姿を大きく大きく変えていく。


「ねぇ進藤ちゃん。あんなガキ臭い男の何処がいいわけ?」

「…………」


何処がいいわけと聞かれても。

私は寒さに身を振るわせる。寒い。私、もう戻りたい。店の方をチラと見る。あの中ではきっと瀬川と小日向が二人してぬくぬくと暖を取っているに違いない。恨めしい。


「というかあれだろ。アイツ、映画の影響受け過ぎだろ」


名々賀が言っているのは鎹が歌っている歌の事だ。鎹が上機嫌で今歌っているのは今や空前の大ブームとなっている映画の挿入歌なのだ。誰しもが知っていて誰しもが歌ったことのあるであろうその曲。その曲を、鎹は子供のようにご機嫌に歌う。


「この間、友達と見に行って来たって言ってましたよ」

「ミーハーだねぇ。まぁ、俺も見たけどさ。進藤ちゃんは?」

「私も見ましたよ」


まぁ騒がれるのも納得なものだった。とだけ言っておこうと思う。それにしても寒い。私は腕を擦る。


「進藤ちゃん、寒いんでしょ?中入ってれば?」


がたがたと震える私を見かねて名々賀がそう言ってくれるが、鎹を残して行くのもなと私は躊躇した。寒いし戻りたいのは山々なのだが、楽しそうな鎹に水を差したくは無い、という気持ちもあるのだ。

そんな私にため息一つ、名々賀は立ち上がり何処かへと歩いて行った。そして戻って来た名々賀の手には缶コーヒーが二つ。


「はい」

「……ありがとうございます」


差し出されたソレを受け取る。温かい。手からソレの温かさを十分摂取した後プルトップを開けようとしたのだが、なかなか力が入らなくて開けられなかった。それを横から伸びてきた名々賀の手が取り上げ、代わりと言う感じで名々賀が持っていた缶コーヒーは手渡される。すでにソレのプルトップは開けられていた。


「それにしても、ホントご機嫌だなアイツ」


カシュっと名々賀の手の中の缶コーヒーのプルトップが開く音。名々賀も寒いだろうに、店の中戻ろうとはしない。私や鎹に付き合ってくれているのだろう。


「前に雪でテンション上がった話は聞いたけど……、一番のご機嫌の理由は『進藤ちゃんからのプレゼント』なんだろーな」

「…………」


私は鎹の首に巻いてあるマフラーを見る。あれは私がクリスマスプレゼントとして鎹にあげたもの。悩みに悩んで、結局店員に聞いて選んだ物なのだが、あげたあの日から鎹は毎日首に巻き付けてくれている。そしてあげたあの日から毎日機嫌が良い。今も。


「……そんなに嬉しいものですかね」

「そりゃ嬉しいでしょ」


そんなものなのだろうか。

あそこまで喜ばれると何だか次からはプレゼントとか、容易にはしにくくなるんだけどなと私は缶コーヒーを一口飲んだ。微糖のソレの少しの甘みが口の中広がる。


「ねぇねぇ進藤ちゃん。俺には?」


言葉の意味が分からず私は名々賀を見る。名々賀はいつものように笑顔で私を見ながら手を差し出して「ちょーだい」をして来ていた。


「……何ですか?」

「俺には?プレゼント」


にっこりと笑う名々賀。私はため息。


「ありませんよ」

「えー」

「そもそも今年は私、貰ってないですし。お返しとか要求しても無駄ですからね」


そう言うが、名々賀の笑顔は崩れない。そして名々賀は手にしている缶コーヒーをふりふりと揺らしながらそれを私に見せて来る。


「…………?」


ふりふりと揺らしながら無言笑顔で名々賀が私を見つめる。何なんだ、一体。と思いはたと気付く。まさか。


「お返し、ちょーだい?」

「…………」


やられた、と思ったが後の祭り。


「私、名々賀さんの事は今後一切信用しませんから」

「別に騙した訳じゃないんだけどなー」

「善意だと思いきや……、こんな魂胆があったなんて」

「えー、最初はちゃんと善意だったよ?」


「進藤ちゃんが俺にはくれないって言うから仕方なく、だよ」と名々賀。が、それが本心なのかどうかは怪しい所だ。なにせ名々賀。最初っから仕組んでたことかもしれない。


「鎹がマフラーだからなぁ。じゃあ俺は……手袋?」

「珈琲一つで何言ってんですか」


私はまだ残っている缶コーヒーを地面に置いて降り積もっている雪に手を伸ばす。不思議そうな顔で見る名々賀を無視して私はせっせと手を動かしてソレを完成させた。


「雪うさぎ?」


小さな小さな雪のうさぎ。即興作品にしては良く出来た方だと思う。


「『お返し』です」


ふふん、と不敵に笑いそう言うと、名々賀は目を丸くしながらその雪うさぎを見つめた。


「…………名々賀さん?」


あまりにもずっと雪うさぎを凝視して動かない名々賀に不安になり私は声をかける。冗談のつもりだったのだがもしかしたら名々賀の何処かにあった怒りスイッチを押してしまったのだろうか。


「あ、あの……」


名々賀が怒った所は今まで一度だって見た事がない。まずい。まずいまずいまずい。焦った私は「冗談ですよー」と言おうとしたのだが、名々賀がぼそりと何か呟いた。その声は小さ過ぎて聞こえなかったが、名々賀の視線は雪うさぎから私に向く。その顔は笑顔じゃなくて。


「あ、あの……」

「進藤ちゃんさぁ……」


目を細める名々賀にビクリとする。こ、怖い。


「やっぱ俺にしない?」

「……は?」


怒られるのだろうと思っていた私は、名々賀のその言葉に変な声を出してしまった。


「鎹みたいなガキじゃなくてさぁ、俺にしときなよ」

「な、名々賀さん……?」


いつものおちゃらけた顔じゃなく、酷く真面目な顔でそんな事を言う名々賀に私は戸惑う。


「あ、あの、な……」

「好きだ」

「……っ!?」


「好きだよー」といういつもの名々賀からは想像も出来ないほど真剣そのものな名々賀のその態度。名々賀が私の腕を掴む。そして自分に引き寄せるようにして、ぐいっと引っ張った。


「……わっ!?」


私の体は名々賀の腕の中すっぽりと収まる。いつもならすぐに付き離せるのだが、名々賀の態度がいつもと違うので私は咄嗟には動けなかった。が、しばらくすると「……くくっ」と名々賀の笑い声が頭の上から降ってくる。


「進藤ちゃん、可愛いーーー」

「……っ、名々賀さんっ!!」


ぎゅー、と力を入れて私を抱きしめて来る名々賀。私は離そうとするのだが、全然離れない。


「んー、可愛い可愛いかわいいーーー」

「い、いい加減に、は」


可愛い可愛いを連呼して全く離す気配ない名々賀。それはもう、いつもの名々賀そのままで。


「あー、可愛くて死にそう」


やっと離してくれた名々賀の顔を見れば、それはいつもの余裕綽々な名々賀のにやりと笑うその笑顔だった。


「進藤ちゃんってば、俺が雪うさぎで満足するとでも思ったの?」

「…………っ」

「まぁ?今の進藤ちゃんの久々慌てふためく姿の可愛さと雪うさぎに免じて、『お返し』は完遂にしといてあげるけどー」


それだけ言って、名々賀は「かすがいーー」と楽しそうに鎹の名前を呼びながら走って行った。


やっぱり嫌いだな、この人。

私は改めてそう思った。



「寒さも吹っ飛んだ……」


私は脱力する。

そこは喜ぶべき所だろうか。




深夜テンションで書いたため、どっかで見た展開なのはご愛敬。

ということで一つよろしくお願いします。


やっぱり進藤ちゃんは名々賀君とくっつくのが一番良いと思うのだがいかがか。


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