「そうだ、花火を見よう」 vorbesc.夏イベ企画
第三夜「そうだ、花火を見よう」
vorbesc.進藤
『高校三年、夏。花火を見に行こう。珍しく小日向がそう言った。そして当日。瀬川に確信犯的に嵌められた私はあられもない姿に。殺す。そんな中、偶然にも私はあの男の子と出逢った。お願いだからそんな目で見ないで。玲衣君』
「花火だーっ!!」
「煩い」
はしゃぐ鎹にピシャリと私が言い放てば、 鎹はすぐに黙り込む。
「……なぁ進藤」
「何」
「何でそんな機嫌悪いんだ?」
「はっ!」
私は息を吐き捨てる。機嫌も悪くなるだろ。何せこんな格好を嫌がおうにもさせられているのだから。
私の今の姿。それは、夏にピッタリ花火にピッタリ女の子にピッタリな定番スタイル『浴衣』。白地に青紫色の朝顔が描かれた浴衣、さらにそれに合わせた朝顔の形の髪止めで髪を結い上げ、下は下駄に手には巾着。
夏だ。祭りだ。花火だ。夢だ。そんな夏に、この浴衣姿一式はもってこいの格好なのだろうが、本来私はコレを着る予定はなかった。
数時間前。
瀬川との待ち合わせ場所にて――。
「お待たせ瀬川さん」
「あ、進藤さん……きゃっ」
「っわ!」
「ごめーんっ!!跌いちゃって」
「あー、大丈夫だよ。着替えてくるし」
「え、でもそんな時間今からじゃないわよ。あ、そうだっ!私、いい所知ってるんだー。そこで服借りよ?」
「え?あ、うん」
―――回想終了。
あの時、もっと疑えば良かった。
瀬川は最初からそのつもりだったのだ。待ち合わせ場所からしていつもとは違う駅前でだなんて、おかしいとは思っていた。
そうして私は浴衣一式をレンタルし、この状態になったのだ。
私の手にする爪楊枝がバキッ!と折れる。鎹の顔がひきつる。
「あー……、似合うぞ?」
「そいつはどーも」
「髪型もいつもと違ってて可愛いし」
「はいはいはいはい」
取って付けたようなその鎹の誉め言葉を受け流しつつ、私は先程買ったたこ焼を頬張る。いろんな屋台がある中、やはり食べ物系の屋台が群を抜いてダントツトップなのは、それだけこの分野が売り上げに貢献してくれるからなのだろうか。
慣れない浴衣に慣れない髪型に慣れない下駄。そして瀬川。苛立つ私は食に走る。まさに屋台商戦に乗せられているという事だろう。だが、そんなに食べない少食の私もこの日ばかりは胃に物を詰めていく他ない。食べない事には苛立ちが治まらないからだ。
「ご馳走さまでした」
たこ焼を食べ終えゴミを捨てる。鎹が何か言いたげに私を見るが無視をした。
「で、瀬川さん達には繋がった?」
「いや。まだだ」
ついさっきまで一緒にいた瀬川と小日向の姿は今はない。どうやらはぐれてしまった様なのだが、果たして偶然か意図的か。
花火大会と言う多大な人込みが出来てしまう年行事では、得てしてはぐれてしまう者が多いのだが。
「……どうしよう鎹君」
「何がだ?」
「苛立ちが治まらない」
「…………」
偶然にしろ意図的にしろ、瀬川達がはぐれてしまった原因が何であれ、最早私にはそんなことどちらだって構わなかった。かつて私がこれほどまでに瀬川に殺意を抱いた事があっただろうか。いや無い。
鎹が繋がらない携帯をしまう。
「いいんじゃないか?進藤も言ってただろ。あいつらには早くくっついて欲しいって」
「…………」
それはそうだが、私を巻き込むなと言いたいのだ。この間の海にしろ今日の花火にしろ、あの二人が二人っきりになると必然的に私と鎹が残され嫌でも二人っきりな状態にさせられるのだから。だったらもう二人っきりで来いよと言ってやりたい。いや、言おう。見付けたらいの一番に言おう。
まぁ、瀬川の場合私と鎹を二人きりの状態にしようと企んで、という意味もあるのだろうが。
「鎹君」
「何だ?」
「別れて探そう。その方が早い」
なんかもうこの『カップルで花火を見に来ました』感が物凄く嫌で私は鎹にそう言った。鎹も私も私服姿だったのならまだしも、今、私に関しては浴衣姿。なにコレ。私めっちゃ気合い入れて来てる人みたいやん。ふざけんな。何故に私が。
「別れてって……。俺達まで別れたらさらに迷子が増えるんじゃないか?」
「花火が打ち上がるのは午後九時ジャスト。だから八時四十五分、今から約三十分後にここに集合ってことで」
「……おーい、進藤」
「見付けたら携帯で連絡して」
じゃ、と言い残し私はスタスタとその場を立ち去った。後には鎹だけが取り残されたが、しばらく私を見送った後諦めたかのように一人私とは違う方向に足を向けた。
今回「花火を見よう」と言い出したのは小日向だった。毎年ある地域の夏祭りでも花火は上がるのだが、今年は何度も言うが高校最後の夏。
最後ぐらいデカイ花火を見に行こう、となり某有名な花火大会に四人で来ていたのだ。
海の時とは違い、今回ははなから四人なのは知っていた事だが、私が浴衣を着るはめになること、及び瀬川と小日向が数分で姿を消すことなどは聞いてない。
「瀬川さん……滅」
意図的か偶然か分からないが、とりあえず姿を消した瀬川と小日向、主に瀬川の方を怨いながら一人歩いていると、フランクフルトの美味しそうな匂いが何処からかしてきた。少し進んだ先にあるらしいソレを買う事に決め、巾着から小銭を取り出した所で足指に痛みが走り顔をしかめる。
「……靴擦れぇ」
呪いの言葉を発っし、私は瀬川にさらに強い怨いをかけつつ屋台の前まで何とか痛みを耐えつつ歩きフランクフルトを買う事に成功した。靴擦れは痛いが屋台前でもさもさと食べるわけには往かず、私はフランクフルトを味わいながら歩き出す。ケチャップとマスタードがいい感じに付いていて美味しい。黙々とパクつきながら「喉が乾いたな」などと考えていたら足が足に引っかかり危うく転びそうになった。危ない。
「もうホント嫌だな、コレ」
カラカラとわざと音をたてつつ歩きながら足元を見つめる。いっそ脱いでしまって裸足で歩こうかなども考える。靴擦れ痛いし。歩きにくいし。靴擦れ痛いし。歩きにくいし、靴擦れ痛いし。靴擦れ痛いし。靴擦れ痛いし。靴擦れ痛いし。
ため息。
「はぁ……」
「あの、落としてますよ」
後ろから誰かに声をかけられ振り向く。何か落としたっけ、と思いながら振り向けばそこには見知った人物の姿。
「……玲衣君?」
同じ高校の後輩である佐倉玲衣が、私の携帯を手に持ちこちらに差し出しながらそこにいた。
玲衣は数秒私を目を丸くして見つめた後、「……進藤先輩?」と徐々に眉間に皺を寄せながら訝しげな顔になりつつそう言った。 私だと分からずに声をかけたらしい。
「何してるんですか進藤先輩」
「何って……。花火を見に来たんだよ」
「玲衣君もでしょ?」と問えば、「まぁそうですけど」と玲衣。じっ、と私を見たかと思うと、徐にきょろきょろと辺りを見回し始める。玲衣が私を見る。そしてまたきょろきょろと辺りを見回す。そんな玲衣の行動に、私はじとりと目を細める。
「……一人ですかって言いたいわけね」
「はい、まぁ……。一人ですか?」
その格好で?そんな格好して一人?まさかの一人?マジか?と玲衣のその私を見る目に言われている様な気がしてならないのは気のせいだろうか。気のせいじゃないと思うのは気のせいじゃないと思うのだが気のせいだろうか。
「進藤先輩?」
「…………」
後輩に喧嘩売られました。
その喧嘩、買った。
「悪かったね、こんな格好で」
「いきなり何ですか」
食べかけのフランクフルトを全て消化し、私は玲衣を睨み付ける。棒は近くにあったごみ箱へと放った。ナイスゴール。
「玲衣君だって一人じゃん」
「いや、俺はクラス連中と来てますけど」
玲衣があっちと指差す方を見れば、そこには数人の学生らしき若者の姿。何やらスーパーボール掬いに白熱している様子。
「…………」
「進藤先輩、本当に一人なんですか?」
奇妙な者でも見るような目で私を見る玲衣。そんな玲衣に視線を戻し、私は一人ふっ、と笑う。一人だなんてそんなわけないじゃない、と。何言っちゃってるのよ、と。
「残念ながら一人じゃないから。私だって友達と来てるから」
「はぁ」
一人ぼっちの可哀想な奴なんかじゃないから、と不敵に言ってはみたものの玲衣の反応はいまいちだった。なんか私だけ馬鹿みたいだ。
「……ねぇ、玲衣君。瀬川さん見なかった?」
バカな自分に呆れつつ実はそんなに探してもいなかった瀬川の事を玲衣に聞いてみる。が、そもそも玲衣は瀬川の顔を知らないらしい。
「え、そうだっけ?」
「はい。名前はよく聞いてましたけどね」
話ネタに名前は上がるが姿は知らない。
「瀬川先輩と来たんですか?」
「うん。あと小日向君と鎹君も一緒なんだけどね」
「……ああ」
玲衣の空気が変わった様な気がして私は玲衣を見上げる。そんな私を見下ろし「なるほど」と玲衣。私は首を傾げた。心なしか玲衣のその言葉に皮肉に似た何かを感じ取れたからだ。何がなるほどなのだろうか。さっきとは少し雰囲気が変わり、滲み出る『機嫌の悪さ』を感じる玲衣をじっと見る。なんか私、不味いこと言っただろうか。考えてみるが特に思い浮かばない。
「進藤先輩がそんな格好してるからおかしいと思えば……。ダブルデートですか」
「だぶ……、まぁ瀬川さんに関してはそのつもりなんだろうけどね」
今日しかり。
海しかり。
「気合い入れちゃってるわけですか」
玲衣のその嫌味たらしい言葉に「やっぱそう見えるよねっ!!!」と私は叫ぶ。ビクッと玲衣が驚きに身を奮わす。
やはりそうだ。そうなのだ。浴衣なんてものを着ていたらはしゃいじゃってる女にしか見えないのだ。うきうきな女にしか見えないのだ。屈辱過ぎる。
私、全然うきうきしてないのに。むしろ機嫌は悪い方向へと前進中なのに。靴擦れも痛いし歩きにくいしで、頭は重いし食に走ってお金は散財だしぐるぐる巻かれた帯とお腹に詰めたアレやソレやで若干苦しいし。
「あぁ……帰りたい」
「何なんですか、一体」
私のよく分からない態度に困惑する玲衣に、何故に私がこのような格好をしているのかを説明したら玲衣の表情が一瞬固まる。ああ、玲衣君が呆れている。
「玲衣君、分かって。私ね、好きでこんな格好でいるわけじゃないんだよ」
全部、瀬川さんの陰謀なんだ。瀬川さんのせいなんだ。全てあの女の企みなんだ。だから私をそんな目で見ないで下さい。
玲衣が口を開く。
「あー……の、進藤先輩?」
「……何?」
「似合ってますよ」
「今更っ?!」
私と玲衣が出会って数分は経っている今更になってそんな風に褒められた所で何も嬉しくない。 だが、とりあえずお礼は言っておいた。
「ありがとう玲衣君。嘘でも嬉しいよ」
何故だろう。鎹に言われた時は怒りすら感じたのに、玲衣に言われると何故だか「しょうがないよね」的な気持ちになるのは。ポテンシャルの差だろうか。だけど玲衣は「嘘じゃないですよ」と言う。
「本当に似合ってますよ。綺麗です」
「…………玲衣君」
私は青ざめる。よくそんなうすら寒い事真顔で言えるな。しかもこんな今更の状況で。私、ちょっと恥ずかしいよの意味で玲衣を見るが玲衣は意に介せず微笑んだ。
「ちょっと化粧もしてます?」
「あぁ……、なんかペタペタされたけど」
浴衣をレンタルした時にサービスだとか言って顔も弄られていたのだ。だけど、そんなに濃くはしてなかった様なのだが分かるものなのだろうか。
「進藤先輩、普段から化粧とかしないですから少しするだけで違うのが分かりますよ」
「そうなんだ」
にっこりと微笑し私を見る玲衣になんだか無性に恥ずかしくなって来た。顔が熱い。照れる。とりあえず玲衣君、微笑みながら私を見るのはやめてくれないですか。
私が恥ずかしさに耐えられず玲衣から目を逸らした先、スーパーボール掬いのそこには玲衣のクラス連中の人達がいなくなっていた。私は目を見張る。
「玲衣君、置いてかれてるよっ!?」
まさかのだった。
慌てて辺りを探すもいない模様。
まさか知り合いと話してるからって置いてくだなんてあまりにも酷くないだろうか。瀬川並に酷い友人たちだ。ありえない。
「大丈夫ですよ。携帯がありますから」
例え置いてかれたとしても携帯で連絡を取れる。そう玲衣は言うがそもそもそう言う問題でもないような。置いてかれてる事に少しぐらい傷付くとかないのだろうか。しれっとした態度の玲衣に一抹の不安を感じてしまった。
「玲衣君、ごめんね。早く友達に連絡取りなよ」
長々と喋ってるんじゃなかった。後悔して玲衣に言ったら玲衣はずっと手に持っていた私の携帯を差し出してくる。そう言えば拾ってくれたんだっけか。
「進藤先輩、ホントによく携帯落としますよね」
「いや、まぁ、今回はあれだよ。慣れない浴衣だったからだよ」
浴衣はポケットが無い。だから帯の所に挟んで置いたのだが、多分ポロっと落ちたのだろう。私が玲衣から携帯を受け取ろうとすると携帯が鳴る。
「……鎹先輩からですね」
「鎹君?」
ちらっと見えたらしい着信の文字に玲衣が言う。玲衣から携帯を受け取り電話に出る。瀬川達が見つかったのだろうか。
「もしもし」
『進藤?小日向達見つかったぞー』
見つけたらしい。
私はすぐ戻るとだけ言って電話を切った。
「見つかったんですか?」
「うん。そうみたい……、って何やってんの玲衣君」
何処から取り出したのか、玲衣は手に青いネックストラップを持っていた。そして何故かそれを私の携帯に装着し始める。もしや。
「……首から掛けろとそういう意味ですか」
じと目で見れば「また落とすといけませんから」と、装着し終えたらしいネックストラップを玲衣が私の首に引っ掛けた。そして私を何故かじっと見つめてくる。
「な、何?」
まさかまだ私に対して何か不満があるのか。これ以上私に何を首から下げろと。巾着はさすがに落とさないよ玲衣君、とそう思っていたら玲衣がおもむろに口を開く。
「口元、ケチャップついてますよ」
「え」
ケチャップ?
さっきのフランクフルトだろうか。私は手で口元を拭うが玲衣は「そっちじゃないですよ」と言う。
「こっちです」
そう言って玲衣の指が伸びて来て私の口元を拭ってくれる。玲衣の指が唇に触れてちょっと驚いた。
「あ、ありがとう」
玲衣はちょっと吃驚するぐらい自然にこう言う事やるよな、と思って見ていたら何故か玲衣から頭をズビシッ!とチョップされた。
「いたっ、何でっ!?」
意味が分からずチョップされた頭を手で庇いつつ玲衣に言えば、当の本人は苦虫を噛み潰したかのような顔で私を見るものだから、さらに意味が分からなかった。
「もういいです」
その言葉も行動も意味が分からないよ、玲衣君。
私が頭の中はてなマーク全開で訳が分からない中、今度は頭に手を伸ばして来る玲衣。
「えっ、何!今度は何っ!」
「髪留め、ずれてるんで直してるんですよ」
浴衣とお揃いの朝顔の髪留め。直してくれているらしい。もしやさっきのチョップでずれたのか。
ならと、大人しく待っていると髪留めを直し終えたらしい玲衣が私の頭から手を引っ込めてまた私をじっと見る。だけど、直りましたよとも終わりましたよとも何も言わずに、ただじっと私を見つめ続ける玲衣に私は眉根を寄せる。直ったのかどうか分からなかったがとりあえず「ありがとう」とお礼を言ったらまたもや玲衣が私をチョップした。
「だから何でっ!?」
二回目はさすがに私も怒るぞ、と私が言えば今度は玲衣は目を細め嫌な物でも見るよな見下したような目で私を見てきた。意味が分からん。玲衣がため息。
「もういいです」
「だから何なの」
その「もういいです」は。
なんだか物凄く何かを諦められているのは感じた。そして何かに呆れられているのだろう事も感じるのだが。
「進藤先輩。そのネックストラップ、ちゃんと返して下さいね」
そう言って訳が分からない男、玲衣は私に背を向け立ち去っていった。何なんだ一体、と思う気持ちとネックストラップ返さなきゃなんだと言う思いを交差させつつ私は鎹との待ち合わせ場所に行くため足を踏み出す。
「……って……!」
忘れていた靴ずれに痛みが走った。
忘れていただけに痛みがさっきより強く感じ、すぐに足を止め足元を見つめる。
「…………」
本気で裸足で歩いてやろうかな。
そう思って下駄を睨みつけていたらぐいっ、と後ろから腕を引っ張られた。反動でよろければまた靴ずれで赤くなっている個所に下駄がこすれて痛かった。顔をしかめつつ腕を引っ張った者を見ればそこには今日一訳が分からない男、玲衣君の眉間に皺を寄せた顔があった。
「れいく……、たっ!」
またチョップ。三度目にして一番きついチョップだった。
「だからっ、な」
「足っ!」
ぎょっとした。何故ならチョップだけじゃなくさらに何故か怒り心頭の玲衣に怒鳴られたからだ。
なんなのよ。足って何よ。
何か私、踏んづけてるの?
「な……、何」
「………っ……!」
私がもたもたしていると玲衣の怒りが許容量を超えたらしく、今までにないぐらいに玲衣にキツク睨まれた。ベシッ!と今度は手の平でおでこ辺りを殴られる。
今日の玲衣君は手癖が悪いらしく、凄くよく殴られます。
玲衣はしゃがみこみ私の下駄を取り払う。そして持っていた絆創膏を私の靴ずれの辺りに貼ってくれた。
ああ、なるほど。だから「足」か。
玲衣が立ちあがる。
「あ、ありが」
「進藤先輩」
私の言葉を遮り玲衣が冷ややかな目を私に向けてくる。こ、怖い。
「ネックストラップ、返して下さいよね」
二回目。
そんなに大事なものなのか。これ。
「れ、玲衣君……。そんなに大事なら今かえ」
「今度っ!」
叫ばれビクッ、と肩が上がる。
「今度返して下さい」
「…う…うん」
玲衣の気迫にビビる私に、また玲衣は踵を返して去って行った。
「…………」
なんで私が怒られるんでしょうか。理不尽だ。これ、物凄く理不尽ですよね。
足元を見る。靴ずれは絆創膏のおかげで歩いても痛くはなさそうだった。私は一歩、また一歩と歩き始める。痛くない。
「……ふぅ」
私は足を動かす。
鎹との待ち合わせ場所へと足を向けた私の胸元で、青いネックストラップに引っかけられた携帯が歩く振動に合わせて小さく左右に独りでに揺れた。
はい。
玲衣君が楽しすぎて本来出てくる予定だった奴等が一ミリも出ませんでした。
玲衣君可愛い。
玲衣君熱冷めやらぬままに、今玲衣君視点でのこの話を書いてます。
多分そのうちアップするかと。
玲衣君可愛い。
玲衣君もっと書きたい。




