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ばんぱいあヴァンパイア  作者: 葉月
番外編 Honesty and a liar
55/109

だから行こう。オルロック。



吸血鬼っていうのはさ、

元々は人間だったんだよ、って僕は思うんだ。


「人間?」


そう。人間。

あれだ。人間の突然変異ってやつ。


「突然変異…」


亜種、とも言うのかもね。

まっ、だから結局は吸血鬼ってのは人間の成れの果てなんだよ、って話なんだわ。


「…………」


最初にさ、吸血鬼になった奴っているだろ。

最初の一人。

最初の吸血鬼。


それが何処のどの人間だったのかなんて知らないけどさ。ソイツは一体どんな気持ちだったんだろうか、って思わないか?考えないか?感じないか?


「…どんな気持ち?」


だってそうだろ?

ソイツはさ、最初の初めてのただ一人の化物、だったんだから。人間から吸血鬼になった最初の一人。

一人だけ普通ではなくなった人間。

周りとは違う者。


強靭な肉体。

老いない身体。

誰をも凌駕する力。

抵抗も反抗も動くことさえ許さない瞳。

恐ろしく鋭い二本の牙。


目の前が突然赤く染まった世界。


それはさ、どんな気持ちなんだろうかって考えるんだ。たった一人、自分だけが皆とは違う、恐ろしくも強大な力を持った初めの吸血鬼は、その時に何を感じ考えたのか。


「…………」


周りからはどんな目で見られたと思う?

畏怖かな。恐怖かな。羨望かな。希望かな。


「…わからない」


それとも、排除されるべき異物かな。


「………」


吸血鬼が人間の血を吸うのはさ、こう考えるんだ。こう思うんだ。もしかしたら違うのかもしれないけど、多分こうなんじゃないかなって、感じるんだ。


「……何?」


吸血鬼がさ、人間の血を吸うのは




人に戻りたいから




なんだって。



「…人に」


人間から化物に。

化物から人に。

戻りたかったんじゃないかなってさ。思うんだよ。考えたんだよ。感じたんだよ。


「…戻りたい」


人間のさ、血を吸えば戻れるって、そう考えたんじゃないかな。

それが別に血じゃなくても良かったんだとは思う。人間の『何か』を自分が手にすることが出来れば、自分は化物ではなくなり人に戻れる。誰かになりたければ、その誰かが持つ同じものを手にすればいい。そうすれば、誰かと同じになれる。


そんな淡い期待に似た何かを持ってしまったんじゃないかなってさ。


「同じもの…」


それに先人も言ってただろ。

外側直さず内側治せ、ってさ。


臓器や臓物は殺してしまうから無理。手足、目、鼻、耳なんてもっての外。

でも血だったら?

多量でなければ死なないし、それに数日経てばその人の体が勝手に新しく血を形成してくれる。

だから血だったんだよ。

人に戻りたかった吸血鬼が求めた物はね。

血は生命の根源、とも言われているし。



『The origin of a life』だね。



だけどそれは叶わなかった。

化物の力が強すぎたのかな。逆に化物は人間を同じ化物にしていった。化物はけして人には戻れなかった。

化物だけが増えていく。

いつ気付いただろう。無理なんだって。

いつ考えを変えたんだろう。



人に戻れないのなら、

同じ化物を増やせばいいだけの話なんだって。


「………」


そうして化物は名前を吸血鬼と改め、人間の血を欲するまでに至った。血を吸う鬼。

どうして鬼にしたんだろう。鬼、とした方が分かりやすかったからかな。化物はあやふやな言い方だし鬼、の方が当時の人達には分かりやすかったのかもね。


「…鬼」


君はさ、人に戻りたい?


「人に?」


戻りたいんじゃない?

だってさ、君は吸血鬼じゃなければそんな目に合わなかったんだから。


「…だけど」


そう考えると吸血鬼はさ。

皆可哀想だよね。


「可哀想?」


元々は人だった。

人に戻りたくて人間の血を吸った。

その結果が今の吸血鬼達を作っている。


「…………」


ねぇ。

助けてあげようよ。


「助ける?」


そう。吸血鬼達を助けてあげる。

血を吸う鬼からの救出。化物からの脱出。

助けてあげないといつまでも苦しいままだよ。そんなの、酷いと思わない?そんなの、悲しいと思わない?


「……分からない」


君は優しいから。

そしてとても強いから。だから分からないんだね。だけど、君には吸血鬼達を助けてあげられるだけの力を持っているんだ。力があるから、君はとても優しい。


「…だけどこの力は」


貰い物、なんでしょう。

よく考えてみなよ。君にその力が託された意味を。その力は吸血鬼のための力だ。だから、吸血鬼を助けるために使えばいいんだよ。


「だけど」


ああ、そうだね。

僕は君に血を貰った。それは今の吸血鬼が、人間を吸血鬼にするやり方だね。だけど僕は吸血鬼じゃない。強靭な肉体も強大な力も持ってないからね。だから僕は吸血鬼ではない。だから君が気にやむ必要もないんだ。


「………」


大丈夫。

僕も君を手伝うよ。

一緒に吸血鬼達を救おうよ。


「…どうやって?」


簡単さ。

命を終わらせてあげるんだよ。


「……命を、終わらす?」


化物は化物にしかなりえない。

人に戻れないのなら、終わらせてあげるのが優しさなんだよ。


「…終わらせる」


大丈夫。

僕らならすぐに終わらせてあげられるよ。


だから行こう。

オルロック。


全てを終へと変えに。



僕が君を連れていってあげるよ。

皆が救われた優しい時間へと。




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