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ばんぱいあヴァンパイア  作者: 葉月
番外編 Honesty and a liar
54/109

最初で最後の吸血鬼

番外編


『Honesty and a liar』



これは吸血鬼さんの気まぐれじゃない『気まぐれ』話。


全八話。

二話目からが『本編』的な感じになります。




『Povestea suplimentar』話が色々出てきてしまい収拾つかなくなってきましたので、一回目『瀬川空』はのちのち吸血鬼さん話の後ろに移動させようかと思います。


では、前書きを終わります。






『どうして私を吸血鬼にしたんですか』


雨の中、傘も差さずびしょ濡れになりながら少女は言う。俺が吸血鬼にした少女。最初で、そして最後だろう俺が牙を向いたただ一人の少女。


『気まぐれなんかで、私を吸血鬼にしたんですか』


気まぐれ。

俺は少女に、少女を吸血鬼にしたのは気まぐれだと言った。俺の気まぐれで少女を吸血鬼にしたのだと、そう伝えた。


そんな『嘘』を少女に伝えた。



だけど少女はやはり聞く。

どうして、と。

何故、と。

何で、と。


泣いているのかもしれない。

あの日から『泣かなくなった』少女の顔には水が流れる。

それが涙なのか雨なのか。

どちらかだと断言する権限など俺にはない。


人間だった少女を吸血鬼にしてしまった俺には、少女を語り少女を判断することは出来ない。


気まぐれ。

俺はその時初めて嘘をついた。今までずっと嘘などついたことなどなかった。嘘などつく必要もなかった。


だけど、最初で最後の、俺が吸血鬼にしてしまった初めての、たった一人のその少女に、俺は初めて嘘をついた。今まで長い間生きてきた中で一度もしてこなかった初めての『嘘』という行為を行った。


だから、なのだろうか。


「分かった」


嘘は嘘だとバレてしまう。

気まぐれが本来の理由ではないのだとバレてしまう。偽りが偽りなのだと少女には分かってしまう。


気まぐれ、という嘘を少女は許しはしない。




だから俺は少女に話す。


『嘘』ではなく『真実』をこの少女に伝える。




「俺がお前を吸血鬼にしたのは、俺がお前をリコの代わりとしたからだ」



今目の前にいるのはたった一人の少女。

俺が血を分けた、ただ一人の人間。



「気まぐれなんかじゃない」



気まぐれじゃなく『身代り』。



少女が吸血鬼になったのは。


俺がリコを好きになったから。

人間だったリコを愛したから。


リコが大切だったから。

リコが大事だったから。

リコだけが願うものだったから。

リコを欲したから。



嘘つきだったリコ。

リコのように、俺は上手に嘘をつくことは出来なかった。


そうしてそれが、今少女を傷つけている。



リコの身代り。


そんな真実も少女を傷つけるだろう。



嘘も真実も、

この少女を傷つける。



俺の嘘。

俺の真実。


『俺』という存在。




白木の杭。

吸血鬼の弱点。

殺せる道具。

少女でも扱える道具。


それを渡した少女は、少しの間の後ソレを俺に返した。


「無理、…ですよ」


そう言って。








戻れない。

戻らない。

そう口にした少女。


そんな少女に俺は手を貸してやる。

遠くからではなく今度は近くで。



俺は少女を見守ることになる。



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